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Guardian  作者: 天宮 碧
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7. 業務内容




 とうとうこの日がやってきてしまった。


 イリアスがこの宮でレオナルドと二人になる初日。


「イリアス」

「は、はい」

「君のしばらくの仕事はまず宮内の水の取り換え、庭の水遣り、それから書類整理とペンとインクの補充、宮内の掃除、洗濯、その他不足しているものがあれば申請すること、それから夕飯後に皿洗いと乾かした皿を本宮へ持っていってもらう。ああ、それと服を破いてしまったので繕うこと」


 朝の7時、正午、夜の6時までにそれぞれ食事を作ることと、水を持ってくるのは王宮の敷地内にある森の滝から取ってくることなどが付け加えられた。


「あ、掃除は俺とイリアスの部屋と、週1くらいでシオンとマリアの部屋、あとは廊下とか応接室とか、公共のスペースだけでいいから」


 フォローになってねえ。


「お食事のご用意は本宮のシェフがいるはずですが」


 苦し紛れにひとつでも仕事を減らそうとする。


「駄目だ。イリアスが作って」

「……ショウチシマシタア」


(我儘か!)


 どう考えても1人ではできそうにない量に内心頭を抱える。


「殿下は今日はどのようなご予定ですか?」

「俺は……」

「はい」

「えー、久々に街降りよっかな」

「働けよ」


 つい本音が漏れ出た。

 流石に怒るだろうと思ったが、怒るどころか笑みを深めている。


 ……契約する相手を間違えたかもしれない。

 仕事をする中で様々な人間と出会ったが変態は履修範囲外だ。


 最初にあった時よりだいぶ態度が軽薄になっているレオナルドに、密かにイリアスが慄いていると、彼は例の胡散臭い笑顔をより輝かせた。


「まあ?市場調査も国の仕事だし、これも仕事だって」


(どこに自ら実地調査(フィールドワーク)する王族がいるんだよ!)


「それとも……」


 そこでレオナルドはイリアスの耳元に口を近づけ、囁くように言った。


「俺がいないと仕事できないとか、ないよね?」

「出来ませんけど!?」


 何度も言うが、イリアスはあくまで用心棒として雇われたのであって、決して小間使いや彼らの言う側仕えとやらになるためにここにいる訳では無い。


 そう言うと、彼は子供のようにむう、と口を尖らせた。

 このくらいの冗談許してくれればいいのに、とか何とか言っている。


「ちゃんと終わらせるべき仕事を終わらせてから遊びましょう」


 既に色々言ってしまっているため、イリアスはこの馬鹿王子への遠慮を無くすことにした。初端から遠慮があったかどうかはともかく。


 ごく真っ当な()()をしたイリアスに、レオナルドは目を瞬かせた。


「遊ぶなとは言わないんだ?」

「仕事を終えればですよ。業務外のことでわざわざ苦労を増やす必要もありません」


 イリアスは仕事熱心という訳ではなく、あくまで仕事は生活手段としてみなしている。


「そっか」

「?」


 何やら嬉しそうだ。


「無理強いをしない人間は好きだよ」

「大体の人そうだと思いますよ」


 無理強いするほどあなたにこだわりはありません、と付け加える。


「こだわり」

「はい。恐らく、無理強いをする人間はあなたに何らかの理想を重ねているのでしょう。お……私はそこまで殿下に期待も執着もございませんので」

「薄情だなあ」

「ご不満ですか?」


 イリアスと彼はあくまで契約関係にある。


「いいや、それでいいよ」

「それは良かったです」


 レオナルドはふっと笑い、くるりと体の向きを変え執務室へ歩き出した。


「じゃあ、溜まりに溜まった業務を片付けますかあ」


(溜めるなよ)


 イリアスは思ったが、今度は口に出さずに済んだ。


 危なかったと自省するイリアスの数歩前を歩いていたレオナルドがふと振り返り、いたずらっ子のように皮肉げに笑った。


「この宮の中なら一人称『俺』でいいよ」


 流石にバレていた。




イリアス「っは!これからあの膨大な量をこなさなきゃいけないのか・・・・・・」

いい感じに会話が終わったので自分の仕事の多さを忘れていたようです。

ちなみにイリアスは現代社会なら定時に絶対帰るマン。



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