0. プロローグ
初連載です。
段々ギャグ要素も足していきます。
よろしくお願いします。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
自分たちの乗った荷車が襲われて一刻ほど経った。
足元には襲ってきたごろつき。
「はぁっ、はぁっ⋯⋯」
からんころんとかわいた音をたて、握り締めていた木片が手から滑り落ちた。
元は荷車の一部だったものだ。
積んでいた荷や資金は使い物にならないだろう。
「かぁ、さん、」
隣に居たはずの母を探し、残骸に紛れて見えた黒髪を見つけた瞬間、走り出した。
「母さんっ」
駆け寄ってみれば、母は足が潰れていた。
「⋯⋯ッ!!」
手は傷だらけで、木片の棘も刺さっていたが、それでも母の足を押し潰している荷車の柱を全力で持ち上げようとした。
「ぅ、やめ、なさい⋯⋯っ、かあさんの、ことは、いいからッ」
「ふ、ぅっ、」
「ッ、やめなさいッッ!!!」
呻き声の合間に逃げろと伝える母の言葉を無視して必死にどかし続け、何とか瓦礫から足を引っこ抜いた。
「もう⋯⋯、やめなさい⋯⋯母さんはもう、助からないから⋯⋯」
娘が諦めることは無いと分かったのか、声に力を失いながらも言い続ける母を背負う。
身長も力も足りず、半ば引き摺っていたものの、何とか歩き出した。
もう、10年も前のことになる。