表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/57

知識


 図書館にて、横に長い机を前にヒノとアイリスが座っていた。

 古びた木の机に積まれた本が、静かな空間に落ち着きを与えている。


 ヒノはアイリスが持ってきた本を隣から覗き込むように見ていた。

 その視線に、純粋な好奇心が滲んでいる。


「神獣って結構いるんだな」


「でも出会う機会はあんまりないかも」


「こいつとかめっちゃ強そうじゃん」


 ヒノが本に描かれた絵を指さした。

 その絵には、鱗に覆われた巨大な生物が威風堂々と描かれている。


「これは竜だね」


「竜? へぇー」


「生息地域によって氷を吐いたり火を吐いたり違うんだよ」


「へぇー、こいつ体長も凄いでかいんだろ?」


「うん、この図書館くらいの竜もいるらしいよ」


「おぉ、凄いな」


 ヒノの関心の高さに、アイリスが少し驚いた。

 その瞳に、彼のワクワクが映り込む。


「キョウヤはこういうのに会ってみたいの?」


「そりゃどんなのか見てみたいだろ」


「そうなんだ」


 ワクワクするヒノを見て、アイリスが面白がっていたが、目的から逸れていると思い直した。

 彼女が本をめくり、危険な生物を教え始めた。


「このウネウネした奴から出す糸は、空気に触れるとすぐに硬化するのか。体は細いし隠れられてたらめんどそうだなぁ」


「それに高熱に当たると毒素が発生するから。キョウヤは気をつけないとね」


「よく調べる奴がいるんだな」


「そういう人のおかげで後の人が楽に戦える。感謝しないと」


 一通り図鑑を読み終えると、アイリスが次の本を開いた。

 ページをめくる音が、静かな図書館に小さく響く。


「ん? これは人間だよな……いや獣?」


 ヒノの目に映る絵には、人間に獣の耳と尻尾がついた姿が描かれていた。

 その異形の姿に、彼が首をかしげる。


「これは獣人」


「獣人?」


「分かりやすく言うと、カロと人が混じった感じかな」


「混じったって、人間と獣が交尾でもしたのか?」


「こう……」


 ヒノの生々しい言い方に、アイリスが言葉に詰まった。

 その顔が、少し赤くなる。


「どこで生まれたか不明だよ」


「けど、このガーデンでまだ見たことないな」


「このガーデンにも少しはいるよ。でも彼らはガーデンをあまり好まないから」


「なんでだ?」


「獣人は差別されたり狙われることが多いの」


「狙われる?」


「獣人は数が少ないせいで、変質者に狙われるらしいよ」


「はぁ、そりゃ大変だな」


 時間が経つにつれ、本が徐々に机に積み上がっていった。

 気がつくと、窓から差し込む光が夕陽に変わり、部屋をオレンジ色に染めていた。


「今日はこれくらいでいいかな」


「ああ。サンキューな」


「……うん」


 様々な知識を蓄えたヒノ。二人が図書館を出た。

 外の空気が少し冷たく、夕風が穏やかに吹いている。


「そういえば、キョウヤは祝場に出るの?」


「なんだそれ?」


「……知らされてないんだ」


 ヒノは賞金首を討伐した祝いを明後日やることを知った。

 その事実に、彼が少し面食らう。


「別に面倒だから出なくてもいいか」


「……だめ」


「え?」


「ハンスを倒したのはキョウヤだから、出なきゃダメ」


「えぇ、まじか」


 ヒノがアイリスの表情を見ると、本気だと感じた。

 その真剣な瞳に、彼がたじろぐ。


「……」


「じゃあ出るか……」


 強引に迫るアイリスに気圧され、ヒノが祝場に出ることになった。

 その決定に、彼の肩が少し落ちる。


 その日はそのまま家に帰ることにしたヒノ。

 家に着くと、ウキウキした様子のシロガネがいた。


「ようー、おかえり! 明後日お祝いパーティがあるんだって聞いたか?」


「あぁ、聞いた(なんかテンション高いな、こいつ)」


 ヒノが料理を作るシロガネに返事を返し、心の中で呟いた。

 鍋から漂う香りが、部屋に温かさを添える。


「祝いか。相当嫌われてたんだな、ハンスって奴は」


「どんな奴か調べてみたけど、そこら中で殺しをやっては人と遺物を強奪してたらしい」


「よくそんなこと続けてたな、あいつ。怖くならないかね」


「俺達にはきっと理解できないさ」


 人を殺せば、その人と関わる人の恨みを買い、狙われる。

 ヒノがそれを「怖い」と表現すると、シロガネが小さく頷いた。


「ところで、お前なんかいいことあったのか?」


「なんで?」


「テンションが高い」


「そうか? まぁあったよ。いいこと」


「何だよ、気持ち悪い」


 シロガネから前の世界の毒素が抜けつつある気がした。

 その明るさに、ヒノが少し目を細める。


「そういえば、今回はおじさん帰ってくるの遅いな」


「遠出って言ってたし、遅くはなるんじゃない?」


「そうなのか、聞いてなかった」


「俺達が活躍したって聞いたら喜ぶかな」


「どうだろうな。でも殴られたくはない」


 二人がたわいない会話をしながら食事を摂り、その後眠りについた。

 窓の外で、夜の静けさがガーデンを包み込む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ