過剰な欲望
「で、アンナはいつシロガネのとこに行くの?」
「えっいやぁ……ははは」
アイリスの病室でリースはアンナの話題をだしはじめる。
「あれから顔を合わせずらいと言いますか……」
「別にアンナの問題じゃないから大丈夫だろ」
ヒノは持ってきた果実を食べながら言う。
「そうでしょうか?」
「おう」
「よくわかんないけど、そういうのは早めに解消するに限るわよ」
「そうですよね。行ってきます〜……」
ヒノとリースの言葉を受け取るとアンナは渋々部屋を出てシロガネの部屋へ向かった。
「それじゃ私も色々あるからじゃあね!」
続いてリースも部屋から出て行ってしまい。ヒノとアイリスが残った。
「そういえば、なんか欲しい物とかあるか?」
「え?」
「頑張ったんだし、何か褒美があって当然だろ。俺で出せるものなら何でも出すぞ」
「……なら」
アイリスのお願いでガーデンを見てまわりたいと言うことなので木車椅子にアイリスを乗せてガーデン周りを歩くことになったヒノ。
「(押しにくいなこの車椅子)」
元いた世界との技術力の差に嘆きながらもヒノは押して歩く。
道のでこぼこで簡単にグラグラと揺れる。
それでもアイリスは何故かご機嫌な様子だった。
「そういえば目的地とかどうするんだ?」
「考えてなかった」
「じゃあとりあえず景色がいい場所にいくか」
「うん」
……
「少し失礼な事聞いてもいい?」
「おう?」
「キョウヤは人を殺しても平気?」
「……平気な奴とそうでないやつはいる。今回のやつは殺しても特にって感じの奴だったな」
「そうなんだ……私もいつか誰かを殺すことになると思うから」
「……できるだけ避けた方がいいぞ。殺しなんてやらないのが一番いい。もしやる時に俺が側にいたらその時は俺に任せろ」
「えっでも」
「汚れてる奴に任せればいい」
「……」
アイリスのいい振りから察するにこの世界でも殺し合いは特段珍しいものではないとわかったヒノ。
「でもそうも言ってられないのはこの━━」
「キョウヤ?」
「いや何でもない」
前の世界と同じと言いかけたがヒノはすぐ口を閉じた。
そうしている間に作物を育ててる農業区に到着した。
ガーデンで見晴らしがいいのはここだとヒノは思っていた。
ヒノは木影に木車椅子を止める。
「あっルートとベーアだ」
「あいつらって農作業もしてるんだ」
「あの二人得意なんだよ」
「へぇ」
見ているとベーアが気づいたらしくブンブンと手を大きく振ってる。
「見て見てルート君! ローちゃんとヒノ君だよ!」
「ほんとだ」
緑の畑を遠くから眺めてるヒノは次に澄み切った青い空を見上げる。そしてふとつぶやく。
「なんでこれ以上を求めるんだろうな」
「え?」
「あのハンスって奴は、遺物……力を手に入れたくて皆殺しにしたって言ってた」
「そうなんだ」
「……」
「俺はそうまでして他より優位に立ちたとは思えないし、なんで人殺しまでして得たいのかもわからない」
「私も。キョウヤは欲しいものとかないの?」
「俺はこの空の下で美味しいもの食べれて、たまにお前くらいの奴と模擬戦できれば俺は満足かな」
「ふふっ」
「おかしかったか?」
ヒノの発言に笑うアイリスを見て彼はほんの少し不貞腐れる。
「ううん」
「そう言うアイリスはどうなんだ」
「私もキョウヤと似てるかな。皆んながいて、人と争わずにいきていければ。その為にもはやく稼がないといけない」
戦闘でもそうだが案外自分と気が合うと思ってたのは、こういうところがあったからかもとヒノは思った。
「皆んなにはキョウヤも含まれてるから。死なないで」
アイリスは少し笑みを浮かべてヒノにそう言うと彼の脳に痛みが走る。
「俺は異能からして死ぬ確率は低いと思うけどな(あー痛いもう慣れたけど) 」
「逃げやすいから?」
「ああ」
アイリスといる時に発症する謎の頭痛。理由がよくわからないが痛みは慣れてきたので問題はない。
「(それにしても)」
アイリスは前に比べて物腰が柔らかくなってきてると感じるヒノ。
本来の姿なのかもしれないが本来のアイリスを見たことがないから彼にはわからない。
「よし、じゃあ医療協会に帰るか」
「あっ言い忘れてたけど、今日で私は退院だから」
「は?」
「だから私の家までお願い」
「はぁ……了解」
そのままアイリスの家まで歩き到達すると。アイリスは木車椅子から立ち上がる。
「えっ大丈夫なのか」
「うん平気だよ。ありがとうキョウヤ。またね」
「おう、またな」
腰辺りで手を振り別れを告げるアイリス。
すっかり辺は夜の闇に染まっていた。そしてヒノは木車椅子を肩に担いで歩く。
「(これ、返してくるか)」




