表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/57

原典


 ヒノがルートと話していた同時刻、シロガネはガーデンにある図書館にやってきていた。

 古びた石造りの建物は静寂に包まれ、入口の扉が開くと、かすかな紙の匂いが漂ってきた。


「お〜、本がいっぱいだよ」


 初めて見る図書館に、シロガネが驚愕の声を上げた。

 天井まで届く高い棚にびっしりと本が収納され、人の手が届かない場所にまでぎっしりと詰まっている光景は、彼にとって初めてのものだった。


 しばらく本を立ち読みしながら移動していると、見覚えのある女性に出会った。

 彼女は窓際の席に座り、静かに本を読んでいる。


「シュム?」


「え? あっ!!」


 シロガネに見つかった途端、シュムは慌てて読んでいた本を両腕で隠すように押さえた。

 その動きに、彼女の頬がわずかに赤くなる。


「シュムはここによく来るのか?」


「え……えぇ、たまに」


「ふーん。今何読んでたの?」


「べ……別に、人様に紹介できるものじゃ」


「えっ……まさか如何わしい━━」


「違うよ! 私が読んでたのはこれ!」


 シロガネの勘違いに腹を立てたシュムが、勢いよく本を差し出してきた。

 その表紙には、少し色褪せた文字が刻まれている。


「虹の魔女?」


 本のタイトルを口に出すシロガネ。

 本を受け取ると、彼はスラスラとページをめくり始めた。


「(読むのすごい速い)」


 尋常じゃない速度でページをめくるシロガネを見て、シュムは本当に読んでいるのか怪しんだ。

 彼女の視線が、彼の手元にじっと注がれる。


 読みながら、シロガネは少し昔のことを思い出した。

 ミナセ・メイという少女が似たような話の漫画を読んでいたな、と。漫画と小説では印象が違うが、どこか懐かしさが胸に広がった。


「(あれ? これって)」


 読むにつれて、シロガネが気になった点があった。

 それはこの魔女が使う技名だ。どこか聞き覚えがある響きに、彼の目が細まる。


「シュムの異能ってもしかしてさ」


 全てを言うまでもなく、シュムは顔を赤くして恥ずかしそうに頷いた。

 彼女の耳までが紅潮し、小さくうつむく。


 シュムの技名とこの本に出てくる技名が同じなのだ。

 つまり、この本がシュムの異能の原典だった。


「バレたのはこれで二人目だよ」


「一人目は?」


「マーシャルくん。彼もよくここに来るから」


 シュムが少し照れながら答えると、二人の間で異能についての話が盛り上がり始めた。

 図書館の静けさの中で、二人の声が小さく響き合う。


「俺的に最強になるための一歩はこれだと思う!」


 シロガネが本の中の文を指差しながら言った。

 その文は「詠唱破棄」についてで、技名だけを叫び、圧倒的な速度で相手を翻弄するシーンが描かれている。


「一応できるにはできるけど、出力が極端に下がっちゃうの……」


「練習を続けてればきっとできるさ」


 技名だけならともかく、毎回詠唱を唱えて戦うのは無理だと判断したシロガネが強く推した。

 彼の声に、熱い確信が込もっている。


「……そうだよね。大仕事がくる前に何とかしてみる!」


「おっ、いいね! その意気だ」


 シュムが立ち上がり、決意を固めるように言い放った。

 シロガネは笑顔で応援し、その笑みに励ましが溢れている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ