仲良し
「遺物? これが?」
「見るのは始めて……?」
「そう……だな」
ロウはヒノの顔を見て話すが、ヒノの視線は遺物に釘付けになっている。
「(俺の知ってるのとは少し形状は違うが、こいつは通信機器っぽいよな)」
遺物と言われている物体は、ヒノの世界にあった通信機器と似ていた。
「どうしたの?」
ロウがヒノの異変に気づき心配する。
「いや、少し構っても良い?」
「え? うん、良いよ」
ヒノは遺物を構うことの許可をアルマにとると、遺物を構い始めた。
「構っても何も起きないよぉ? コレクションで集めてるだけだから」
「こんなの集めて楽しいの……?」
「うっ……いいじゃないかぁ日陰に住む私の趣味なの!」
「ごめん……」
「い、いや素直に謝られても困ると言うか(ほんとに昔のアイリスになってる)」
ロウとアルマが話してるとヒノは遺物を起動させた。
「動いたぞ」
「え」
「え」
アルマとロウはヒノの持っている遺物を見ると光のラインが点いている状態になっている。
「えぇ!? どやったの!?」
「うぉっ!?」
アルマが凄い勢いでヒノの持っている遺物を掴み思わず彼も驚く。
「私がいくら構っても何も起こらなかったのにぃ!!」
「……興奮しすぎ」
ヒノとアルマの距離が0になる前にロウは片手でアルマを引き戻す。
「あぅごめん」
「ヒノ、何をしたの?」
興奮しているアルマは放っておきながらロウはヒノに質問する。
「えっと思いっきり叩いたら動いたぞ(中身掃除したけど)」
「え? 叩いたの? 私の遺物を?」
叩いたと言う単語を聞いたアルマは豹変してヒノを問い詰める。
「……でも実際上手くいったわけだ━━」
「そんな事をしたら、ダメだよね……?」
「わ、悪い」
ヒノが全目的に悪いので反論出来ず謝った。
その時、ヒノが持ってる通信機器のスクリーンを誤ってタッチしてしまった。すると通信機器から音声が流れはじめる。
「チュートリアル実行コマンドを確認しました」
「? (なんか勝手に動き始めたけど、チュートリアルなら丁度いいか)」
「なんか喋り始めた!?」
「この機器の正式名称は『ホットライン』先ずはこの機器に嵌っている10個のイヤホンのどれかをお取りください。」
「ホットライン……? ガーデンと似てる名前」
「多分これかな?」
「それみたいだな」
機械音声の言う通りに3人は遺物についている無線型イヤホンを手に取る。
「ではそのイヤホンを耳に装着してください」
今度は丁寧にホログラムを映し出し装着の仕方を教えてくれるホットライン。
「あっ簡単にハマった」
「私もつけれた……」
「通信範囲は500m。子機を間に挟めばその分通信距離が伸びます」
「通信距離……?」
聞き慣れない言葉に困惑するロウ。
「では使用方法を解説します。通常の状態は音声の受信しかできません。イヤホンのサイドを触れることで音声発信することができます。また音声は全てのイヤホンに発信されますのでご注意ください。以上でチュートリアルを終了致します」
「……終わっちゃった」
アルマとロウは険しい顔をして固まる。
「こいつの外側を押さえると離れてるやつにも声を伝えれるってことだろ」
「じゃあ共鳴石と似たことができるってことかな?」
ヒノは遺物の仕様を伝えるとアルマから共鳴石という言葉が出てきた。ヒノは当然共鳴石のことを質問する。
「共鳴石??」
「共鳴石っていうのは共鳴石同士を共鳴させると、かなり離れていても声を伝えることができる石のこと」
「吸収石の違うバージョンか。(この世界はこの世界で変な石が多いな)」
「でもさっきの説明だと、離れた10人と話せるって事だよね」
ロウがホットラインの性能を再確認する。
兎にも角にも試してみようということになった。
3人は離れた部屋にそれぞれ入った。
「あー聞こえますか?」
「聞こえる」
「聞こえる」
声を発したアルマに残り2人が同時に返答する。
「わー凄い! 凄いよこの遺物!! あっごめん、うるさかった?」
「そうでもなかったよ」
ぴょんぴょん跳ねながら喜び大声を出したアルマだったが、ヒノ達には普通の音量で伝わっていた。
「(音量が自動調整されるのか? 中身も見たことないものがいっぱいついていたし、俺たちの世界のものではない? いや俺達よりも発達した技術ってことか? )」
アルマとロウが話してる間ヒノは遺物のことを考えていた。
「(深く考えるのはやめるか。めんどいし)」
この生活に馴染み始めたヒノは自分達のいた世界の事を考えるのはやめた。
他にあった遺物もヒノは見覚えのある奴があったがこれ以上簡単に使い方を見出すと怪しまれると思ったので分からないふりをして帰ろうとおもった。
だがその前にロウはアルマにボサボサの髪を直さないと、とか部屋が散らかってるなど指摘をし始めて、ヒノはそれを終わるまで眺めていた。
「身だしなみなんて気にしないよ」
「貴方も一応貴族なんだからしっかりしないとダメ」
「うぅ〜」
「(見てて飽きないな)」
ヒノはそんな平和的やりとりを見て笑う。最後の指導が終わった様で3人は家の外へと出た。
「ヒノも良かったらまた遺物構いに来てよ。動く奴まだあるかも」
「良いけど、過度に遺物には関わらない方がいいぞ」
「へ? なんで……?」
「何にしても便利な奴の陰には、それなりのリスクがあるかもしれないって話。このホットラインだって何かリスクがあるかも知れない」
「リスク……確かにそうかも、気をつけるよ」
ヒノはアルマに忠告すると一足先に帰っていく。
「アルマ。……ありがとう」
「え?」
ロウはそう言うとアルマの返事を待たずにヒノを追う様に駆け足でその場を離れて行った。
「(男の人が出来ると、あそこまで変わるのかなぁ? )」
ヒノを追うロウを見ながらふと思うアルマ。
アルマの家を後にしたヒノは考え事をしながら歩いてた。
「(遺物かー)」
ヒノ世界はこの世界よりは技術が進んでいた。
だが便利な道具を使う内に超えてはいけないラインを超えてしまっていた。使い方を誤らなければ人を豊かにするはずだった。
だが人間がそれを上手く使うことができずに終わった。
だからヒノは遺物のことはあまり好意には思えなかった。
だが先程のホットラインという遺物も見た限り太陽光発電の機能がついていた。
「(俺のいた世界より発達した技術だとしても、文字も読めるとなると)」
ずっと考え事をしてると後ろからロウの声がした。
「ヒノ!」
「どうした?」
「今日は付き合ってくれてありがとう」
ロウは少し明るい感じでヒノに礼を言う。そして2人は並んで歩き始める。
「こっちも面白い発見があったから礼はいいよ」
「アルマに会うのは……正直言うと怖かったから、すぐに帰れって言われると思ってた」
「(無理矢理だったような)気のいい奴が多くてよかったな」
「うん……そうえばなんだけど」
「ん?」
「これを言うのは失礼だとは思うんだけど」
「は?」
「ヒノと戦った時、何というか雰囲気が私と同じだった。でも普段ははどんな人にも基本的に友好的だから何と言うか」
「おかしいって?」
「……うん」
「実際、昔は普段もそんな感じだったけど」
「(昔……? )」
「個人がいくら強かろうと結局は仲間が多い奴が勝つんだって、この身を持って体感してから考え方が変わった」
「ヒノが負けたんだ?」
「それからかな、本当に強いってのは誰とでも仲良しになれる奴なんじゃねぇかなって」
「誰とでも仲良し」
「まぁそんな奴、絶対いないけどな。それでもなるべく敵対しないようにはしてるよ」
ヒノは笑いながら理想の存在を否定する。
「……私とヒノは仲良し?」
「どうだろうな、俺は別に嫌いじゃないけど」
「私も」
「じゃあ仲良しってことで良いんじゃね」
「……そっか」
キョウヤとアイリスはそのまま一緒の帰り道をゆっくり歩いて行った。
「そういえば……誰に負けたの?」
「……シロガネ・ヤマトって奴」
その後別れた後、ヒノは記憶をなくした設定を忘れていたことに気がついた。




