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お人好し


 クルチャガ達を倒し、親猫の神獣から見たことない果実を貰い、森から出たシロガネとアンナ。


 シロガネはアンナを馬車へ乗せてガーデンへと向かう。帰り道ならば馬車を操る必要はない。


「(考えが甘かったな。この世界はこの世界で危険なんだ)」


 アンナがこうなったのは不幸に不幸が重なった結果なのかも知れない。


 だがもしシロガネも油断して毒物を食べてしまっていたら確実に2人は終わっていた。


 シロガネはこの世界の認識を改める。


 しばらく馬車は進む。その間にクルチャガの仲間から襲われる可能性はあったが、今のところそれは無かった。


「(報復とかはないよな? )」


 シロガネはクルチャガの事を考える。人間同士で怖いのは仲間からの報復だ。


 あの場には3人しかいなかった。仮にまだ仲間がいたとしても戦闘中の間に駆けつけていた筈だ。


 報復される可能性は低い。


 更に馬車が進み、ガーデンは目視で確認できる距離になった。


「…………」


「シロガネ……」


 シロガネは神獣から貰った果実を手にとり自分で安全を確認しようと口へと運ぶ最中アンナの声がそれを止めた。


「アンナ? 体の調子はどうだ?」


「体は痺れてますが、もう話せるようにはなりました」


「(そもそもアンナを売り飛ばすつもりだったアイツらが致死性のあるものを食わせる可能性はない。報復もないなら急いで試す必要もないか)」


「もう直ぐガーデンに着くから安心してくれ」


「はい……」


「今日の事は悟られないようにしたほうがいいかな」


「……そうですね。そうして貰えると私も助かります……心配はかけたくないですから」


 神獣の幼体を返す為に、行ってはいけない森の奥まで行き神獣ハンターに殺されかけたなんてことがバレれば何を言われるかわからない。


「でも、どうやってやり過ごしましょう?」


「俺にいい考えがある」


 シロガネは人差し指を上へ立て、笑顔でそう言った。




 ホットガーデンの門まで馬車がたどり着くと門番の男が壁にある穴から顔を出す。


「よぉお帰り! あれ? アンナちゃんは?」


「疲れちゃってて後ろで寝ちゃってます!」


「そっか! 今開けるから待っててくれ〜」



 そんなこんなでガーデンの中へ入り馬車を小屋へ戻す。


「ありがとな。食べ物いっぱいおいとくから食っとけよ」


 シロガネは馬の近くに食べ物をたんまり置いてアンナの元へ行く。


「ありがとう……ございます。あとは自分で……! くっ!」


 馬車から力を振り絞るようにアンナは降りようとするが、上手く動けない体は馬車から転ぶように落ちる。それをシロガネは上手くフォローする。


「すみません……」


「こりゃ寝たふり作戦継続かな」


 とりあえずアンナはラルナーの家で介抱することにした。


 アイリスに見つかったら余計な心配をかけてしまうからである。


 帰り道、アンナは寝たふりをする。会う人に揶揄われることもあったがアンナが痺れてる事はバレない。


「あらお二人とも仲良しねぇ〜」


「はは、頑張りすぎて疲れちゃったみたいで」


「まぁそうなの〜」


「……」


「寝たふりがなかなか上手いな」


「……」


 シロガネは明るく言うがアンナは暗いままだった。そうしてるうちにシロガネ達はラルナーの家へたどり着いた。そして彼はアンナをシロガネのベットへ座らせる。


「ありがとうございます」


「どういたしまして。俺はちょっとこの果実を見て貰いに行くから━━」


「待ってください!」


「……どうした?」


 突然呼び止められた振り向くシロガネ。


「……シロガネ、今日の出来事。本当に申し訳ありませんでした……」


 シロガネは暗い雰囲気にならない様に振る舞うがアンナはそれを許さない。彼女をはどうしても自分が許せなかった。


「俺は気にしてないよ。今日のはアレだ。運が悪かった」


「違います! 運なんかじゃありません……! 全部私のせいじゃないですか……」


 アンナは声を荒げる。


「神獣の子供を見つけて勝手に保護して、シロガネを誘って、クルチャガを信用して罠にかかった」


「全部、私じゃないですか……ごめんなさい……」


 アンナは泣きながら自分を責め始めた。


「……」


 シロガネは何を言っていいか分からず黙る。


「私、顔を見れば嘘かどうか分かるなんて言ってましたよね……結局何もわかってなかった。笑えますよね。生き恥です」


「確かに俺が巻き込まれたのはアンナと出会ったからだけ」


「……」


 喋りながらシロガネはアンナの前まできて中腰になる。


「だけど付き合うと言い始めたのは俺だし、何が起きてもいい覚悟はしていた。だからアンナは気にする必要はない」


「ですが━━」


「それに嘘は見抜けてた」


 アンナの発言を止めるようにシロガネは人差し指を上へ指して言った。


「え……?」


「記憶がないってのは……嘘なんだ。本当は色々覚えてる」


「そう……なんですか」


「ははは、もうアンナに嘘はつけないな〜。この事は皆んなには内緒にしてくれよ?」


「え? はい……勿論です」


「じゃあ内緒にしてくれる代わりに、今回の事はチャラって事で」


 シロガネは常に笑顔でなんとかアンナを励まそうとする。アンナは暫く呆気に取られていたが。


「……ですが、おそらく記憶の事はみんな感づいてますよ」


「えっ!? そうなのか……?」


「……ふふっ。シロガネは本当にお人好しですね」


「はは……そうでもないさ」


 アンナは笑顔になるとシロガネは満足した様に立ち上がる。


「お人好しかぁ……」


 シロガネは小声で呟く。一瞬だった、その時シロガネの暗い顔がアンナには見えた。


「?」


 よく聞き取れなかったアンナだが聞き返そうとはしなかった。


「じゃあちょっとこの果実を鑑定してもらいに行くから待っててくれ!」


「あっはい! 待ってます!」



 シロガネは鑑定して貰う為に果実や薬草に詳しい店へと脚装甲を纏い急いで向かう。そして店へと着き、扉を開ける。


「あっ、いらっしゃいませ〜」


 そこにいたのはクロエである。シロガネとクロエは初対面である。


「この果実について調べてもらいたいんだけどいいかな?」


「ふむふむ……ここらでは見ない奴ですね。でも調べれば分かるとは思います。ちょっと待っててくださいね」


「そうか良かった」


 果実を持って資料がある部屋へと向かうクロエ。シロガネは店にあるものを見物し始める。



 一方その頃、ヒノとシロガネの部屋に取り残されたアンナ。


 暇だったので上手く動かないなりに頑張って掃除をしようとしていた。


「(ここがシロガネ達の部屋ですか……少しくらい恩返しを)」


 頑張って掃除をしていると放置されてる一着の寝着を見つける。おそらくシロガネのだ。


「(これはシロガネの? ………はっ!! 私は何をしようと)」


 シロガネの服に何かしようとしたアンナは自制し平静を取り戻すが思春期の欲は止まらなかった。


 一旦置いたシロガネの服をチラチラと見始めたそして。


「すこしくら━━」


 その瞬間階段を登る音が聞こえた。


「¥÷%°#¥×÷!!」


 心臓が飛び出しそうなくらい驚いたアンナは痺れをもろともしない勢いで寝着を綺麗に折り畳む。


「アンナ! 今すぐこいつを食べてくれ! ってなにかあった?」


 扉を勢いよく開けたシロガネはアンナに駆け寄る。


「いえ! 何もありませんよぉ? あっその果実が何かわかったんですね」


「そうそう。これを食べれば毒を中和してくれるみたいだ」


「半分無くなってますね?」


「あぁ珍しいらしいから種は渡してきた。これだけでも充分みたい」


 アンナが食べさせられた毒物はよく使われるもで入手も困難ではない。しかしその毒を治す果実は入手は困難ということだった。


「増やせればお金稼げるかもな。まぁそんなかとは置いといて食べてくれ」


 シロガネはアンナに渡そうとするが。


「あっそういえば、声は出せるけど噛む力はある?」


「たしかに……少し難しいかもしれません」


「そっか。すり潰したら効果が落ちるかもって言っていたしな。どうすっか」


「あっそうか」


 アンナは謎の期待を膨らませてると、シロガネは閃いたように台所へ行き果実を細く切り持ってくる。


「悪いけどアンナちょっとベッドに仰向けになってくれ」


「は、はいっ」


「じゃあ行くぞ、アンナ」


「はい……んむっ」


 シロガネは細切った果実を掴みアンナの口へと入れる。


「どう、飲み込めそうか?」


「ふぁい、出来ます」


 アンナは口の中に入った果実を胃袋へと流し込む。


「ゴホっ……」


「よし! じゃあ次いくぞ〜」


「はい……」


 全ての果実を流し込んだアンナは少し時間が経つと。


「あっ本当ですね。体が簡単に動く様になりました。それに感覚も。これ以上迷惑かけるのもあれなので、日が暮れる前に帰りますね……おっ」


「おぉ? まだちょっと危ないな」


 アンナは立ち上がるが少しふらふらしている為シロガネが肩をかす。そのまま下へと降りていく。


 そして居間へと続く扉を開けるとその先にはヒノとロウがいた。


 そして現在に戻る。


 ヒノとロウもシロガネとアンナに自分達にも起きた事を話した。


 その後はアイリスが遠慮するアンナを背負って帰ることになった。


 2人が帰った後シロガネはクルチャガの事を思いだし、脳裏に一言呟いく。


「(昔の俺だったら騙されてたな)」


 クルチャガはシロガネ達を神獣の元へ行かせるのを拒んでいた。その事が脳の奥に引っかかっていた。



 アンナを背負ったロウは夕暮れの道を進んでいる。


「私達2人共、大変なことになってたんだ」


「そう見たいですね……」


「アンナが無事で良かった」


「私もです」


 アイリスとアンナは互いの無事に笑う。


 そして2人は屋敷に到着、アンナは狸寝入りでメイドのサヤを誤魔化すことに成功した。


 そして2人は今日を終える準備が整った。しかしこんな出来事があった2人は寝つけなかった。

















 

 

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