信じるべきもの
倒れてるアンナを庇うようにシロガネはクルチャガの前へ立ちはだかる。
「何でアンナにこんなことをした?」
「そりゃ邪魔になったからだよ」
「この時を想定してわざわざアンナの信頼を稼いだのか?」
「まさか、最初はそんなつもりなかったさ。人に恨まれることはなるべくしたく無いしね。でもアンナくんがいけないんだよ? 神獣の幼体をつれてきて僕の邪魔になる存在になったんだから」
クルチャガはゆっくりと横へ歩きながら語った。
「そんなに金は大切か? 人の命や尊厳よりも」
「大切だねぇっ!」
クルチャガは言葉を終えたと同時に両手の人差し指に新たなチャクラムを生成しアンナに向けて投げつける。
「(浮遊する刃の輪っか。それが追加で2個、既にあるのも空中からくる)」
シロガネは冷静に判断し、チャクラム3つの内2つは浮遊盾で防ぎ残りの1つは脚装甲のついた足で蹴り飛ばす。
「へーその浮いてる盾、僕のと少し似てるね〜。でもアンナくんを庇いながらいつまで持つかなぁ?」
その後シロガネはアンナを狙うクルチャガの攻撃を全て防ぎ続ける。
だが少しずつシロガネの体はチャクラムによって傷ついていく。チャクラムで隙ができた時にクルチャガ自身も格闘で攻めてくる。
隙を見てクルチャガに盾を使った攻撃を仕掛けるがが余裕そうに回避されてしまう。
「無理無理。諦めてアンナ君をおいて逃げなよ?」
「だれがするか!」
シロガネの体には切り傷が増えていく。そんな姿にアンナは耐えれなくなっていた。
「シ……ロガ……ネ……私……放って……」
アンナは上手く喋れない状態でシロガネに逃げろと伝えようとする。
「大丈夫。俺が絶対守る」
シロガネは少し笑みを浮かべそう言う。
「強がっても死ぬ現実は変わらないよ〜? まずはアンナ君からかな〜? (そろそろ終わらせるか)」
クルチャガはシロガネにトドメを刺そうと、アンナを狙う追加された1つのチャクラムと同時にシロガネに向けて既にある3つを向かわせる。
「あ……(シロガネ……! )」
アンナは何かおかしいチャクラムの動きを伝えたいが声が出せない。チャクラムがアンナに当たると思った瞬間。
「はー?」
クルチャガが納得できないような声を出した。
チャクラム3つはシロガネのギリギリ手前で停止していたからだ。
そしてアンナに向かうチャクラムは素手で止められる。
シロガネの脚装甲で触れた装甲型には磁力のようなものを付与でき、付与した物体は盾に引き寄せる事ができる。
チャクラムの左右には浮遊盾が挟む位置どりをしている。
つまり盾と盾の間のチャクラムは左右から引っ張られ、その力によって停止した。
わざわざ盾を二つを使って停めたのはこれが一番確実だったから。
「(何で止まったー? )」
クルチャガが疑問に思っている少しの隙をシロガネは見逃さない。一気にクルチャガとの距離を詰める。
『迅雷・ファーストアクセル』
異能電気信号で迅速に予定通りの動きをさせる技。予め決めた動きなのでカウンターをされたらやばいという弱点があるが初見で対応できる速度ではない。
「は? (はやっ)」
「……」
シロガネは無言でクルチャガの顔を蹴り飛ばす。その後倒れたクルチャガの胸を右足で踏みつけ装甲の質量を変える。
「終わりだ……!」
「今更いうのもあれなんだけどさ、命だけは助けてもらえないかなぁ〜?」
「人を殺そうとしたくせにいまさら━━」
クルチャガの言葉に違和感を感じた瞬間背後に気配を感じた。
背後から迫ってくるのはチャクラム。クルチャガが使えるチャクラムは4つではなくつだった。
「君、やっぱり捨てきれてないね」
「(後ろかっ!! )」
『迅雷━━』
「っ!?」
既にチャクラムはシロガネの間近に来ていて迅雷を使おうとしたが慣れてない為激痛が走り使用できなかった。喰らう覚悟を決めた瞬間、チャクラムは突如水に包まれた。
「(速度が緩んだッ! )」
「は?」
チャクラムが水にぶつかったお陰でギリギリ躱すことに成功したシロガネ。
そして振り向いたシロガネの怒り顔を見てクルチャガ悟ったように呟いた。
「参ったね、どうも……」
シロガネは本気でクルチャの顔面を蹴り飛ばす。
意識を失いチャクラムは全て消失した。
「はぁ……はぁ……アンナ。助かった」
「あぁ……よか……た」
シロガネの言葉を聞きアンナは動けないが安心したように見えた。
「直ぐにガーデンに戻るからな。その前に」
シロガネは直ぐにアンナを背負う。そして森の奥を見て呼びかける。
「もう出てきていいよ」
「……気づいていらしたのですね」
「うなぁー!」
茂みから出てきたのは巨大な猫。見るからに子猫の親だ。子猫は嬉しそうに親猫ことへ行く。
「神獣って喋れるんもんなんだな……もう、離れないようにな」
「いえ、私達は珍しい部類です」
「……そうか」
シロガネは一言だけ告げて背を向ける。今はアンナのことが最優先で急いでいる。
「お待ちを。少しだけ話をしませんか?」
「悪いけど急いで━━」
親猫に呼び止められシロガネは振り向く。
「私達は人間に傷つけられました。でも助けてくれたのも人間の貴方達です。私にはどっちを信じればいいのかわからなくなってます」
「……俺のことは信じてくれてもいいよ」
「貴方を?」
「ああ」
「……もし急ぎの事態になったら、これをその子に食べさせてください。その毒を緩和できます」
親猫はそう言いながら果実を差し出してきた。
「私の夫もこの毒でやられました」
「……」
「私の事が信じれませんか?」
「そうだな……でもありがとう」
シロガネは悲しそうな顔をしながら果実を手に取りバックへとしまう。感では嘘ではないと思っていても実行に移すのは難しい。
「お礼を言うのはこちらです。それとこの襲ってきた者達ですが」
「俺はこれ以上こいつらには関わらない」
「……帰りにお気をつけて。そしてありがとうございました」
シロガネはアンナを背負い全速力でその場から離れていった。
「やはり人間というのは分かりにくい生き物ですね」
「うな〜?」
「本当に無事でよかった。少し離れてなさい」
「うなぁ……」
子猫は茂みに入っていくと、親猫は失神している3人の元へと歩み寄る。
「……家族の仇、他人の力を借りてとは情けないですね」




