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戦闘交流

7日目、掃除の相方はユウジだった。

教室の喧騒が遠くに響き、窓から差し込む光が床に淡い影を落としている。


「よう、今日は俺だ。よろしくな!」


ユウジは明るく声を張り上げ、にやりと笑みを浮かべた。


「おう、よろしくな。」


ヒノは軽く頷き、落ち着いた声で応じた。


挨拶を交わすと同時に、ユウジは気軽な仕草でヒノの肩に腕を回してきた。


その親しげな動作にヒノが一瞬だけ目を細めるも、ユウジは気にせず耳元で囁く。


「で、ちょっと悪いんだが。今から俺と戦ってくれないか?」


その声は真剣で、冗談ではないことがすぐに伝わってきた。


「いきなりだな……まぁいいけど(どんな異能か気になってたしな)」


ヒノは少し驚きつつも、内心でユウジの異能に対する好奇心が疼いていた。


真剣な声で戦いを申し込むユウジに対し、ヒノは気楽そうな口調で承諾した。


二人は掃除の手を止め、誰もいない訓練施設へと向かうことにした。


場所を変え、静寂に包まれた訓練施設に二人が到着した。


埃っぽい空気が漂い、遠くで風が木々を揺らす音がかすかに聞こえる。


戦いを始める前、ユウジが口を開いた。


「アイツを止めるのは俺だと思ってた。」


その言葉には、どこか悔しさが滲んでいるようだった。


「あいつ?」


ヒノは首をかしげて聞き返した。


「アイリスの事だよ。」


ユウジは簡潔に答えた。


「ああ。」


ヒノは短く相槌を打った。


「でも実際止めたのは突然現れたお前だった。」


ユウジの視線が鋭くヒノを捉える。


「そうだな。」


ヒノはあっさりと認め、肩を軽くすくめた。


真剣に語るユウジと、少し気の抜けたように答えるヒノ。


その対比が、二人の性格の違いを際立たせていた。


「だからさ、確かめたいわけよ。お前の力を、本気で。」


ユウジはそう言って、右拳をヒノの胸に軽く突き立てた。


その瞬間、ヒノの目つきが鋭さを帯び、本気モードへと切り替わった。


「じゃあ確かめさせてやるよ。」


ヒノの声は静かだが、内に秘めた闘志が滲み出ていた。


「いいねぇ。」


ユウジは笑みを深め、戦いの火蓋が切られた。


宣戦布告に少し笑顔を見せたヒノ。二人は互いに距離を取り、異能を発現させる。


ヒノの腕にはいつもの装甲が形成され、背中には二つのバーニアが現れた。


対してユウジは、全身を覆う重厚な鎧型の異能を纏った。


「(全身の鎧?)」


ヒノは初めて見る異能に内心驚きつつ、相手の出方を窺うことにした。


「来ないのか?ならこっちから行かせてもらおうかっ!」


ユウジは鎧の中で籠った声で叫び、地面を強く蹴った。


その一撃で地面が不自然に抉れ、土が勢いよく舞い上がる。


「(何だあの地面の抉れ方は?)」


ヒノは一瞬気にかけたが、ユウジが一気に距離を詰めてくる姿を見て思考を切り替えた。


重たそうな鎧とは裏腹に、その直進速度は驚くほど速かった。


「顔面いただき!!」


ユウジが右ストレートを繰り出す。


「なわけねぇだろ。」


ヒノはそれをギリギリで回避し、カウンターとして右拳をユウジの顔に叩きつけた。


その瞬間、ヒノの拳がユウジに届いた。


だが、次の刹那、ヒノの右腕の装甲が砕け散り、生身の腕にまで骨が軋むような衝撃が走った。


「っぅ!?」


ヒノは咄嗟に左腕から炎を噴射し、バックジャンプで距離を取った。


「ただの鎧じゃないってわけか…」


息を整えながら、ヒノは低く呟いた。


「その通り。お前の攻撃はきかねぇよ。」


ユウジの声には不敵な響きが混じっていた。


「これはちょっとヤバいか。」


ヒノは壊れた右腕の装甲を再生成するが、怪我の影響で腕が重く垂れ下がってしまう。


「初見殺しで悪いが容赦はしねぇ!」


ユウジは再び地面を蹴り、ヒノへと突進してきた。


「(あいつの装甲は衝撃を何かしら跳ね返すかなんかだろうな。だったら炎しかないな!)」


ヒノは左腕を前に突き出し、手の平から炎弾をユウジに向けて放った。


「効かないねぇ!」


だが、その炎弾は鎧に軽々と弾かれ、ユウジの勢いは止まらない。


再び二人は肉弾戦に突入した。


「(クッソ。こっちは強い炎は連射できないってのによ)」


ヒノは内心で苛立ちを募らせながらも、冷静に思考を巡らせる。


「(やっぱり跳躍の動きだけ速い。肉弾戦になると遅くて見切りやすいが)」


ヒノの超攻撃型の戦闘スタイルが、相手の隙を突く癖を呼び起こす。


「(やべっ、いつもの癖で!)」


「(こいつ馬鹿か!?)」


ヒノの左拳が隙だらけのユウジのボディを狙うが、理性が寸前でそれを止めた。


その瞬間、ヒノの拳が当たるはずだった場所の鎧が弾け飛んだ。


「クソっ!!」


ユウジは焦ったように後退する。


それを見たヒノは、つまらなそうな声で尋ねた。


「何だそれ、未完成か?」


「どうだろうな。これが完成なのかどうか、俺にもわかんねぇよ。」


ユウジは壊れた部分に手を当てながら、動揺せずに答えた。


彼の鎧は、相手の攻撃を完全に跳ね返す無敵の防御を誇っていた。


だが、攻撃を完璧に見切れなければ、その力は自らを破壊する諸刃の剣でもあった。


「分かったからにはその弱み、攻めさせてもらうぞ。」


ヒノは静かに宣言した。


「いいぜ来いよ。同情なんかいらねぇ。」


ユウジは挑発するように応じた。


鎧の能力を把握した瞬間、ヒノはバーニアをフル活用してユウジに接近し、フェイントを織り交ぜて攻め立てた。


「(クソッ!ズレたら自滅するのがわかった瞬間調子に乗りやがって!)」


ユウジは内心で焦りを募らせる。


「どうした?動きがぎごちないぞ。」


ヒノは煽りながら左手をユウジの壊れた鎧の隙間に突き立て、内部に炎を送り込んだ。


「っっ!!」


密閉された空間に炎が流れ込み、ユウジが一瞬怯む。


すぐさまヒノの手を払おうとするが、ヒノは触れられる前に手を引いた。


「次は打ちこむぞ?」


ヒノはフェイントに本命の打撃を混ぜ、ユウジを混乱させる戦法に出た。


「調子に乗んなよっ!?(この打撃は当たる!)」


ユウジが痺れを切らし、反射装甲を使った。


「ハズレ。」


だが、ヒノの脇腹を狙った打撃は寸前で止められ、反射装甲を使ったユウジの鎧が再び弾け飛んだ。


「ぐぅ…!!」


ヒノはすかさず壊れた部分に左手を伸ばし、さらに炎を流し込む。


「熱っ…!」


流し込まれた炎が鎧の隙間から溢れ出すほど充満した。


ユウジは右腕でヒノの手を払おうとするが、ヒノは右手から炎弾を発射し、触れずにユウジの右手を弾き飛ばした。


「(まだ使えるのかよ……!)」


ユウジが内心で驚愕する。


「(あれだけの休憩時間あればな!)」


ヒノは冷静にそう考えていた。


灼熱に耐えきれなくなったユウジは、胴体の鎧を勢いよく外した。


そのパーツが飛んでいき、ヒノに当たり、彼の体勢が一瞬崩れる。


その隙を見逃さず、ユウジが右ストレートを繰り出した。


ヒノは咄嗟に左腕でガードするが、ユウジの反射は自らの攻撃にも適用される。


左腕の装甲が砕け散り、生身の手から鮮血が滴り落ちた。


「ッゥ!」


痛みの声が漏れるが、ヒノは全く怯まなかった。


右手を握りしめ、肘の装甲と背中のバーニアから炎を噴射し、勢いよくユウジの腹に拳を打ち込んだ。


「かはっ!」


バーニアを点火したまま、ヒノはユウジの体ごと壁まで運び、叩きつけた。


「(ロウとの戦闘の後からか、昔の感覚が戻ってきたかな)」


ユウジを倒し、ヒノは平和ボケが解けてきたことを実感していた。


倒れたユウジを眺めながら、静かに思いに耽る。


「まだやるか?」


ヒノが静かに尋ねた。


「…実戦だったらもう死んでるな。」


ユウジは地面に倒れたまま、納得したように呟いた。


「…いやぁ流石につえぇな。あいつが負けたのも納得できる。」


ユウジは倒れたまま、ヒノを称賛するように言葉を続けた。


「次本気でやる時は完成させてからこいよ。」


ヒノはそう言ってユウジに手を差し伸べる。


「はは……いつ完成するか…分からないけどな。」


少し間を置いた後、ユウジはヒノの手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。


「悪かった。こんなことに付き合わせて。」


ユウジが申し訳なさそうに言う。


「いい運動になった。」


ヒノは平然と答えた。


「へっ、余裕そうに言いやがってよ…あっ、左手、大丈夫かそれ。」


ユウジがヒノの血まみれの左手を心配そうに見つめる。


「ああ、結構痺れたぞ。」


ヒノは傷ついた左手を軽く振って、大丈夫だとアピールした。


「一応見てもらったほうがいい。俺が腕のいい異能治癒の人紹介してやるよ。勿論金も俺負担でな。」


ユウジが提案する。


「そうか?じゃあ頼む。」


ヒノはあっさり了承した。


「じゃあ急いで呼んでくるから、ヒノは家に帰っていてくれ。俺が連れていく。」


ユウジは元気よくそう言うと、足早に家へと向かった。


「(家に来るのか……)」


ヒノはぼんやり呟きながら、自分も帰路についた。


ヒノが歩いていると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。


「ごめんなさい。でも…」


「大丈夫。私に任せて…」


「本当ですか?でも本当に危険だと思うので無理は……」


「うん、無理はしないつもり。」


女子生徒とロウ・アイリスが話しているのを、ヒノは物陰で聞いてしまった。


「(危険?)」


普通の会話ならスルーするところだが、「危険」という言葉がヒノの足を止めた。


その後、会話が終わり、ロウも女子生徒もその場を去った。


「(大丈夫だと思うけど、一応気に留めとくか)」


ヒノは何かが起きそうな予感を感じながらも、家へと帰った。


それからユウジが呼んできた凄腕の治癒師に左手を治療してもらい、いつも通りの日常を過ごした。


そしてそのまま、ヒノは静かに眠りについた。

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