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掃除交流


 学園に到着したヒノとロウは教室へ辿り着き、扉を開けて入室する。


「あっ! おっはよー!」


 入ると同時に目の前にいたベーア・クロイツが挨拶をしてきた。

 ベーアはいつも元気で天真爛漫な性格だ。

 彼女は挨拶を終えると、ロウに絡みはじめる。


「ローちゃんおはよー!」


「その呼び方はやめて……」


「えっ!? もう昔と同じ接し方で良いって」


「確かにそう言ったけど……」


「じゃあローちゃんね〜」


 ベーアは嬉しそうにそう言うと、ロウへ抱きついた。


「(暑い……)」


 ロウは内心そう思ったが、ベーアを突き放さなかった。

 昔の関係が戻ったことを感じ、彼女は静かに受け入れた。


 一方、ヒノはシロガネの席へ直行し、文句を言う。


「よくも逃げやがったな」


「俺は邪魔だと思ったから」


「別に黙って行くことないだろ」


「実はお前が驚く顔を陰から見て楽しんでた」


「殴っていいか?」


「ははは、だめ」


 シロガネの揶揄いを終え、一呼吸すると、ヒノは質問する。

 ベーアがロウを抱きしめる姿が目に入り、そのギャップに驚いていた。


「ベーアとあいつってあんなに仲良しだったのか」


「昔はこのクラスメイト達でずっと一緒に遊んでたらしいよ」


「そうなのか」


 そうしていると、ロウが皆に向かって言葉を発した。

 その声には、過去への悔悟と新たな決意が込められていた。


「みんな、今までごめん……」


 ロウのことを笑いながら許してる皆を、ヒノとシロガネは遠くから見ているだけで干渉しない。


 すると、ハインツが教室に入ってきた。


「おはようー。みんな席に座るんだ」


 全員が席に着くと、ハインツが話し始める。


「この間お前ら全員でガーデンの外に出て行ったというのは知っている。だがその後、異能を使った戦闘があったとの報告があった。単刀直入に聞く、誰だ?」


「すみません。俺がこの前の負けた腹いせにロウに喧嘩をふっかけました」


 ハインツが聞いた瞬間、ヒノが手を上げて名乗り出た。

 その速さにクラス全員が少し驚いたが、ヒノは淡々としていた。

 自分の行動が罰を受けることは予想していた。


「名乗りが早くて助かる。だがヒノは罰として8日間の学園での自由時間全て、学園の隅々を掃除してもらう! 以上!」


「分かりました(やっぱり依頼中にあんな事してたら罰されるか。けど掃除って軽いな)」


 ヒノは気にしてないが、ロウは少し申し訳なさそうに彼を見ていた。

 彼女の視線には、責任の一端を感じる気持ちがあった。


「よし、じゃあ授業始めるぞ〜」


 ハインツは笑顔で授業を始め、怒りは感じられなかった。

 ヒノは罰が来ることは分かっていたので、簡単に受け入れた。


 そこから8日間、ヒノは掃除、ロウは謝罪周りに励むことになった。


 1日目の掃除時間がやってきた。


「ったく誰だよこんなとこに捨てた奴」


 学園のグランドで、ヒノは愚痴を漏らしながらゴミ拾いに励む。


「自分のゴミは自分で捨てて欲しいよねー」


「何でライゼがいるんだ?」


 箒でゴミを集めるライゼが近くにいた。


「頑張ってくれた人が、1人で掃除させられてるのもなんだかなぁって」


「別に俺のやりたい事のついでだったから気にしなくていいんだけどな」


 やりたい事とはロウへのリベンジだ。

 ヒノはそれを達成した満足感を内心で感じていた。


「こっちも勝手にやりたいだけだから気にしなくていいよ」


「……まぁ早く終わるからいいか」


 ヒノは効率が上がるからと、ライゼの手伝いを気にしないことにした。


 掃除は早く終わり、二人は休憩する。


「そういえばライゼの異能ってどんなのなんだ? 装甲も使えるんだろ」


「えー? 見たいの?」


 ライゼはニヤニヤしながら勿体ぶる。


「そんなに勿体ぶることないだろ」


「はは、ごめんごめん。こんなのだよ」


 ライゼの右手には装甲が装着される。


「右手だけの装甲?」


「よ〜く見てみて」


「んー?」


 ヒノが確認すると、ライゼの指先から糸が漂っていた。

 右手の装甲と5本の指から操作できる糸、加えて治癒能力がライゼの異能だった。

 その独特さが、ヒノの興味を引いた。


「その糸。どれくらい操れるんだ?」


「んーこんな感じ」


 ライゼは糸を操り、伸ばしたり硬化して蜘蛛の巣のようになる様子を見せる。


「それに加えて、傷を癒すのもできるんだろ」


「うん、傷口が広がってたら糸で縫ってやると治しやすいんだよね」


「中々珍しい能力なんじゃないのか」


「うーん、同じ異能を持った人は確かにみたことないかな」


 ライゼは簡単そうに答えた。


「でも、多分ヒノには勝てないと思うな」


「そうか? やりようによっては勝てるかもしれないだろ」


「ははは、そうかな」


 たわいない会話をしつつ、二人は夕暮れまで休憩した。

 掃除が早く終わり、時間が過ぎるのも早いとヒノは感じた。


「よしっ! そろそろ帰ろっかな!」


「手伝いご苦労さん。なにか飲み物買ってくるわ。何が飲みたい?」


「えっやった! じゃあハチミツ水!」


「分かった。ちょっと待ってろ」


 ヒノはライゼに感謝と報酬を渡した。

 ライゼはハチミツ水を紙ストローで嬉しそうに飲み干す。


「やっぱりこれ最高だね!」


 こうしてライゼとの掃除1日目は終わった。


 2日目の掃除時間。


「よっし! バリバリ掃除するわよ!」


 ライゼの次はリースが手伝いに来た。


「もしかして他の奴もローテンションで手伝いに来るつもりか?」


「んー多分そうなるわね! ちょうどいいじゃない、みんなヒノのこと知りたいし」


 少し考えた後、リースは笑顔で答えた。


「まぁいいか」


 ヒノとリースは掃除を始めた。


 掃除中、リースは鼻歌を始める。


「♪〜」


「……歌が好きなのか?」


「え? なんで?」


「上手い鼻歌だったから」


 ヒノは感じたままを口にした。


「えへへー上手い〜? ……歌は大好き。よく街中で歌うからヒノも良かったら聞きにきてよ。人は多い方が嬉しいしね。ヒノは歌好き?」


「……どうだろうな、昔聞いたことあるかも」


 記憶喪失という設定ではぐらかすヒノ。

 と言っても過去の記憶も曖昧なままだった。


「もしかして私の歌で記憶もどっちゃうかも」


「なら今ここで歌ってくれよ」


「えっなんで!?」


「単純に聴きたくなったから」


「うーんそうかー。掃除中だからちょっとだけ!」


 ヒノが聞きたいと言うと、リースは少し照れて了承した。

 彼女の表情が柔らかくなり、歌への愛が感じられた。


 リースが深呼吸すると雰囲気が変わる。

 口を開き、綺麗な声で短い歌を創りはじめる。


「♪〜♪〜〜」


「どうだった……?」


「俺は良いと思ったけど」


 ヒノの素直な感想に、リースは笑顔で喜ぶ。


「やたー! ヒノとはセンスが合うのかもね」


「相当歌が好きなのか?」


「うん、昔からお母さんの歌聴いて育ったから」


 親の話が出た瞬間、ヒノは少し戸惑った。

 だが、後で知ることになるだろうと思い、質問する。


「リースの母親って」


「……もういないよ」


「そうか……悪いな」


「もう慣れたから平気平気。そういえばヒノは親のことも覚えてない?」


「俺の親は……どうだろうな」


「……そっか」


「こんな話やめて掃除に集中するか」


「そ、そうね。掃除しなきゃ」


 一瞬ヒノの変化に気づいたリースだが、その話題には触れなかった。


「よし」


「綺麗になったわね!」


「手伝ってもらった礼に何か奢るぞ」


「えー本当!? ……そうだ! 私の歌もっと聞いてよ」


「それじゃ俺が得するだけになるだろ」


 ヒノにとってリースの歌はご褒美扱いだった。

 それを知ったリースは少し顔を赤める。


「………私は私の歌を色んな人に聴いてほしいだけなの!」


「そうか。じゃあどうぞ」


 ヒノは納得し、近くの物に座って待機した。


「その前にっ!」


 リースは大剣を創り出す。

 色々な機能が付いていそうだった。


「(これがリースの装甲型)突然そんなの出してどうしたんだ?」


「私の『ハウリングソード』は歌う時に使えるのよね。今回使うのは音声増強。戦う時も色々できて凄いのよ」


「そんな音量あげなくても(つまりマイクか、いろんなことできんだなぁ)」


「さっきは少し元気がない曲だったからね!今度は元気が出る曲。早速一曲目聞いてよね!」


 ヒノは過去の音声拡張機器を思い出しつつ、壁にもたれてリースに促す。

 リースの歌を聴き、昔のことを少し思い出しながら楽しんだ。

 こうして掃除2日目が終わった。


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