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(7)召喚

 本当に可愛い子犬がいるよ!!


「うわぁ~、可愛い!!柴犬みたいだね!!ハハハ、よろしくね。僕は静流!ハハハ、可愛いなぁ~」


 何を隠そう、僕は犬派!


 無意識でトリシアさんから離れて目の前の犬に構い倒していたら、後ろからチクチクした気配を感じて犬も少々怯えてしまった。


 まさか初めての外敵か!と思って即座に振り向くと、そこには再び頬を限界まで膨らませている、明らかに機嫌悪いですよと言わんばかりのトリシアさん。


 でも可愛いから、怖くはないんだよね。


「静流様。確かにその魔獣が静流様の眷属ですが、私を放置したまま何もそこまでしなくとも……」


「うっ、ごめんなさい。その、トリシアさんを決して放っておいたわけでは無くですね、何と言いますか、僕は犬派でして、その感情が溢れたと言いますか」


 しどろもどろになってしまった僕を見て、優しい微笑みに変わったトリシアさん。


「フフフ。ごめんなさい、静流様。ちょっとやきもちを焼いてしまいました。次は私も同じ様に可愛がってくださいね」


「えっと……はい!!」


 どのように可愛がれば良いか分からずに言い淀んでいると、少し圧がかかったので思わず肯定してしまいました!


 だって、犬と同じ様に撫でまわすなんてできないよ!!


 僕の苦悩を知ってか知らずか、漸くトリシアさんの圧が無くなったと感じたワンちゃんは、僕の足元でお座りしたまま嬉しそうに短い尻尾をブンブン振ってくれている。


「静流様。こちらは静流様の世界の犬に見えますが、犬ではございません。れっきとした魔獣でして、既に静流様の眷属として召喚されております。種族は犬狼。一年経たずに成長し、その後も力は増え続けます」


 どう見ても柴犬に見えるけれどね。


 茶色の毛並みに少し短い丸まった尻尾。そして何よりも、愛らしい“つぶら”な黒い瞳。


 可愛すぎる!!っと、危ない。これ以上感情を表に出すと、トリシアさんが怒っちゃうかもしれないからね。


「ハハハ、本当に可愛いね。宜しくね、シバ!」


「シバ……ですか?」


 あれ?思わず名前を勝手に突けちゃったけど、ダメだったかな?


 トリシアさんもきょとんとしているし。


「あ、ごめんなさい。思わず日本の柴犬に似ていたから、シバって呼んじゃいました。ダメでしたか?」


「いいえ!素晴らしい名前ですね。良かったですね、シバ!これから静流様の為に、共に頑張りましょう!」


「ワンワン!」


 この鳴き声、やっぱり犬じゃないのかな?


 でも、名前も気に入ってくれたような気がするし、取り敢えずは問題ない……いや、問題は今日から宿泊する所……かな?


「少しだけ聞いても良いですか?」


「もちろんですよ、静流様!」


「ありがとうございます。その……僕達、今日の夜の食事や泊まる所、それにシバを一緒に連れて行っても良いのかとか、全部分からないので気になって」


「この世界では魔獣を使役するテイマーとして活動している冒険者が数多くおりますので、眷属であれば町や宿にも同行させる事は出来ます。大きさによっては部屋に入れませんが、シバならば問題ありません。そしてお食事と宿!抜かりはありませんよ。静流様の舌を満足させられるお料理は既にリサーチ済み。そして宿もお任せください。暫くは遊んでも大丈夫なほどのお金は持っておりますので」


 これが……ヒモになると言う事なのかな?


 女性に寄生して楽をする……ダメダメ。


 今は仕方がないけど、何れは僕がトリシアさんとシバを養う甲斐性を見せないと!


 そんな僕の葛藤をよそに、トリシアさんは早速とばかりに再び奥の腕に絡みついて町の方に向かったんだ。


 もちろん足元のシバはチョコチョコとついて来てくれるので、本当に可愛い。


 あの教室では決して感じる事の無かったフワフワした気持ちのまま、いつの間にか町に入っていた僕。


 おかげで、恐らく他の人々からの妬みの視線があったはずだけれど、それを感じる事は無かったのが救いかな。


「これが眷属の証です」


 いつの間にかシバの足には赤いリングがついていた。


「本当は冒険者ギルドで貰えるのですが、そこは神の特権で事前に準備させて頂いています!」


 そんな説明をしてくれつつ、食堂に案内してくれるトリシアさん。


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