(5)召喚
誤字報告、ありがとうございます
と言う事で、僕は女神様の熱い期待を受けて異世界に向かう事にしたのだけれど、予想外の事態が一つだけ……この女神様、僕について来てくれるんだって!!
うっほほ~いぃ。
これでボッチ卒業じゃない??
寧ろ他の人、冒険者だっけ?妬みの心配をした方が良いかな?
まさか思いがけずに一気に勝ち組になるとは思わなかったけど、これでやる気もマシマシ!!
女神様は天空を管理している神様らしくて、今いる天空以外の場所、これから行く世界では普通の魔法しか使えないみたいだけれど、流石は神様だけあって使える魔法は数知れず。
この場所も本当はもっと広く、更には地上の様な景色にもできるみたいなのに、こんな真っ白で何もない空間に閉じ込められて本当に気の毒だよね。
一応神と言う存在なので、人が鍛錬して得られるはずの技術、身体強化や剣術等々、全て極めているみたい。
で、魔神の直接攻撃では絶対に死なないけど、人族や魔獣の攻撃では致命傷を負う可能性もあるんだって。
そう言われれば魔神を僕が倒す予定だから、当然逆も有りえるよね?
浮かれていた僕はその話を聞いて、神様にここに残ってもらうように説得したのだけれど……
「もう何千年もこの場にいたのです。あの魔神を倒すための旅で死ぬのなら本望です。静流様!ダメと言ってもついて行きます!!」
意外と引かない女神様を説得する技術なんて有る訳もない僕は、あきらめてその申し出を受ける事にしたよ。
でも、本当の女神さまはとっても表情豊かな人なのだな……と思っていたのはここだけの話。
そう言えば召喚のタイミングが10年になっているのは、地上で悪さをしている魔神の糧となってしまった召喚者から得たエネルギーが無くなるタイミングみたい。
魔神も通常の状態であれば神のみに許されている神域魔法は使えないけど、このエネルギーを糧に神域魔法を行使して他の神々を騙し打ちの上で強制的に制約をかけているみたいだよ。
そのエネルギーを得るには、魔神が直接別格のエネルギーを持っている召喚者を始末する必要があるらしいから、今回の召喚者達が魔王討伐に向かわない限り、有りえない力の神域魔法は使えないんだって。
もちろん魔神が逆に襲い掛かってこなければ……だけれど。
あいつらの性格から、ある程度状況が把握出来たら自ら望んで死地に赴く事はしないだろうから、取り敢えずは安心かな?
寧ろ、僕が負ければ女神様の命は危険にさらされるよね?
露骨に魔神を始末しにかかっているから、女神様に改めて制約をかけて強制召喚をさせるにはリスクが伴うので、むしろ始末する方が良いと考えるだろうし。
前回の制約の時は不意打ちだったみたいだから魔神にはそれほど危険はなかっただろうし、強制召喚をさせる目的もあって、本当に女神様の命をとるつもりもなかったのだろうしね。
でも今後はそうはいかないはず。
殺られそうなら、殺る。
常に命の危険にさらされている状況になるのなら、そう思うのは不思議じゃないもんね。
そう考えると責任は重大だ!
無意識に乾いた喉を潤すために、ゴクリと唾を飲み干す僕。
「フフ、静流様。私がサポートしますし、眷属も既に地上に準備できております。私も数千年ぶりの地上です。どうせなら楽しみましょう!」
う……この本当の笑顔を見ると、やっぱり頷くしかないね。
そうだよ、こんな経験は普通じゃできないから、どうせだったら楽しまなくっちゃね!
「はい。えっと、頑張ります!女神様!!」
「静流様……私の神名はトリシアです。天空の神トリシア。ト・リ・シ・ア。はいっ!」
はいっ なんて可愛く言われても、僕には無理じゃないかな……
「むぅ~、むむむぅ~」
あからさまに可愛くホッペと膨らませている女神様。
僕だって勝ち組よろしく名前で呼ばせて頂きたいですよ!!
でも、15年培ったボッチ属性がそれを簡単には許してくれないんです!!
「静流様!!」
天空で冷や汗をかいたのは、きっと数千年の歴史の中でも僕一人じゃないだろうか。
もう否とは言わせない程の可愛らしい圧がかかる。
「わ、わかりました。トトト、トリシアさん」
「……フフフ、嬉しいです。“さん”は余計ですけれど、これ以上は静流様に負担がかかってしまいますものね?でも、何時でも良いのでお待ちしていますよ?」
何を待っているのかは良くわからないけど、取り敢えず目の前のハードルを越える事は出来たみたい。
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