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ベアトリス、尋問する

「ふむふむ、美味しい」


「あなた……なにをしてるの?」


「食事」


 地面に拘束してるのもなんかあれなので、転移によって実家(公爵家)の私の部屋に移したのだが、私が誰も家にいないことを確認してきた間に白装束は、なにやら食事を始めていた。


 意味わからないのだけど?


 私の魔法でさっきまで拘束されていたでしょ、あんた……。


 極め付けには、その拘束を外し、壁を背にしてあぐらかいてくつろいでる始末……。


「これも美味しい」


「いや、勝手に食べないでよ!」


「無理、私が取ってきた獲物」


 獲物て……。


「いつ、厨房にまで足を運んだのかは知らないけど、抜け出せたなら、なんで逃げ出さないのよ」


「だって、私は負けたから」


「それじゃわからないわよ」


「戦場で、敗北は死を表す。私は死んだも同然、帰るわけにはいかない」


「そういう信念を持ってるのはいいんだけど……」


「それに、お腹空いてたし……転移魔法使うときに気を緩めて拘束を弱めたベアトリスが悪い」


 こいつ………。


 まあいい。

 情報は手に入るのだから。


 今必要なのは、なぜ学院が襲われたのか、それでけである。

 そこに、食事の自由を制限する必要はない。


「このリンゴ、美味しいわ」


「それはいいんだけど、私の質問に答えてくれるということでいいの?」


「負けたから隷属は当たり前。もう一人の男の子、どこにいるの?」


「それは知らないわよ。気づいた時にはいなかったのだもの」


「それよりも私のお気に入り……あ、無事帰れてる……質問、答えてあげる」


 お気に入りという部分がすごい聞きたいが、その気持ちを抑える。


「で、なんで学院を襲ったわけ?」


「学院?そんなところがあるの?」


「え?」


「え?」


 なにを言っているのだ、こいつは?


「あなたが企てて、襲ったのよね?」


「知らない、私はとりあえず殴り込んだだけ」


「は?」


 この人は一体なにを言っているのだろうか?

 私には到底理解できない。


 今思うと、ちゃんと魔物の軍勢が統率を取れていたのは、白装束の部下……あの十二人の人たちのことがいたからこそなのだろう。


 だから、白装束がこの件に何にも、文字通りなにも関与していなかった可能性もなくはない。


 いや、ボスとして出向いてはいたみたいだけど……。


 ちなみに二人殺しちゃったので、今は十人である。

 悪いことをしたなとは思ってる。


 でも、いざとなったら白装束が蘇生するだろう。

 私以上の化け物のため、多分できる。


 魂の扱いには慣れているとか言ってたからね。


 って、今はそんなことどうでもいいんじゃい!


「なんで、分かってないのに突撃したんだよ!」


「なんでって……ある人物を探し出して捕まえろ、言われた」


「ある人物?」


 思いつくのは、生徒会メンバー。

 それと、レイやオリビアさんだろう。


 なんせ、あそこのメンバーは基本的に化け物揃いなのだ。


 レイに至っては、会ってなかった約二年で、急成長を遂げ、私に迫る勢いなのだ。


 私、三歳から修行してんだよ?

 半分の期間で、私に追いつくって、おかしいでしょ?


 不平等だ!


 本人曰く、まだまだらしい。

 温泉で私に愚痴ってたことからも、本気でそう思ってるのだろう。


 だが、私からしてみれば、普通に宮廷魔術師どもと比べても見劣りしない実力はあるんだよね。


 要するに、将来有望である。

 私はといえば、質素な生活が待っている……!


 お互い反対の道に進むことになるんだろうなぁ。


 オリビアさんに至っては、未知数である。


 デスドラゴン、大体五体を相手取って互角っておかしいでしょ。

 編入組トップは伊達じゃない。


 私よりも強いんじゃないか?

 と、思わせるほどだった。


 もう一度確認するけど、私って三歳から修行してんだよ?

 普通、一般家庭で三歳から修行をさせようとする毒親なんているわけない。


 というわけで、私よりも短い期間で成長したことになる。


 なんなの?


 才能なの?


 私がおかしいの?


 才能がなくて悪かったね!

 職業的に適正がないんだよ、こん畜生!


「誘拐するなら、オリビアさんが可能性高いよね」


 この白装束にとってそれが必要なのかはわからない。

 でも、聖女候補というのは世界に十何人しかおらず、候補というだけでも、教会においては相応の権力を保持している。


 教会と敵対しているならば、脅すには十分な素材となるだろう。

 白装束は教会所属だったっぽいし、なんらかの恨みがあってやめたとか?


「普通に違う」


「え……」


 思いっきり自信満々にいったのに、間違えた……。


「可愛い」


「う、うるせえ!」


「冗談、で、正解なんだけど……」


 ゴクリと喉を鳴らす。

 いったい誰を狙っていたのか……。


 すると、リンゴを持っていた手で、私の方を指差す。


「あなた」


「へ?」


「私が狙っていたのはあなた」


「はぁぁぁ!?」


 意味がわからないのだけど?


 は!((閃き


「私に嘘をついてたり……」


「しない」


 ですよねー。


「なんで私が狙われなきゃいけないの!」


「え?なんでわからないの?」


 いや、わかんねーから聞いてんでしょ!

 ひどいよ。


 私はこんなに非力で可愛げがある子供だというのに……。

 およおよと、泣いてる動作をしてみる。


「……………」


 やめて!


 私が悪かったから、そんなに冷めた目で見ないで!



「おっほん!で、なんで私が狙われなきゃいけないの?」


「あなた、気に入られたから」


「誰に?」


「………………」


 なんでそこで話が止まるんだよ。

 そう突っ込む前に、白装束の口が開く。


「名前、知らない」


「あんたねぇ……」


 こいつは果てし無く馬鹿なんだな……。

 それだけは理解できた。


「でも、ベアトリスぐらいの見た目してるやつに気に入られたの」


「同年代ってこと?」


「それはわからない」


 なんでわからないんだよ!


「茶色の髪色をしていて、ボサボサなの。いつも同じような服を着ていて、目が死んでるの」


「なによそれ……。そんな言い方をしちゃダメよ。可哀想でしょ」


「まるでベアトリスみたいな子」


「あなた、本気で死んでもらおうかしら?」


「遠慮しておく」


 私みたいだなんて失敬な。


(でも、そんな女の子どこかで会ったことがあるような気がするんだよねぇ)


 特徴に一致するような人物を見たことがある……。

 でもそれがどこでの出来事だったのか、全く思い出せない。


「まあいいわ。で、その子が私を気に入ったってどういうこと?」


「ベアトリス、強いから」


「え、あ、うん。ありがとう」


「だから」


「強いから気に入ったってこと?」


「うん。『私よりも強くなれるかもしれない子なんて久しぶり!』って言ってた」


 なれそうってことは……。


「私よりも強いの?」


「私たち二人がかりでもダメ」


「どんな化け物だよ!」


 正直にいえば、私たちも十分に化け物呼ばわりされるには十分なのだが、それを超えるだと?


「ちなみに、私は組織の幹部連中の中では最弱」


「は?」


「?」


「組織ってなに?」


「知らないの?」


 知るわけないでしょ!

 どうしてこの人、知ってる前提で話を進めてくるわけ!?


 私もそういうところがないとは言わないけど、いきなり話がぶっ飛びすぎでしょ!


「組織の名前は?」


「“黒薔薇“」


「なにそれ、ださ」


「私も思う」


 なんだよ、黒薔薇って……。

 ちょっと意味不明なんですけど。


 チーム名とかさ、何かの目標を名前にすることが多いのだよ。

 例えば、チーム全員で竜の討伐を達成したい人たちなら、ドラゴンスレイヤーズとか。


 それとおんなじ感じで、組織名も決めろよ!

 なんだよ、黒薔薇って!


「名前はいいとして、あなた、その組織の幹部だったの?」


「私は情報部門の幹部。あ、ちなみに、部門はたくさんあるわけじゃなくて、戦闘部門と情報部門の二つだけ」


「へー、じゃあ、幹部ももう一人だけってこと?」


「違う。幹部は全員で五人。それぞれが、なにかしらの“五感“に優れている。私は目」


 要約すると、黒薔薇という組織には部門が二つあり、だが、幹部は五人で五感のそれぞれが優れている人たちがいるってこと?


 いや、だったら部門五つにしろよ。


「それで?」


「私は、僧侶。狂った信仰心、“狂信嬢“と呼ばれてた」


「全員そんな二つ名を持ってるの?」


 狂った信仰心って……。

 この白装束、信仰心が強すぎて、追い出されたのか?


 信仰のためなら、誰がどうなろうと知ったこっちゃないってか?

 そんな気がしてきた。


「ある。私直属の部下。指揮官たちにまでだけど」


「あの十二人の人たち?あそこまで二つ名持ちか……」


 二つ名を持っている時点で、それは一種の英雄クラスといえる。

 尊敬されるべき対象……まあ、悪の組織っぽいし、そこらへんはされないんだろうけど。


「指揮官までがネームドなら、他の四人の幹部たちはどんな二つ名なの?」


「“傀儡“、“真獣“、“邪仙“、“色欲“」


 うわぁ……。

 なんか色々の意味でやばそうな奴らだなぁ〜。


「それで、その人たちは——」


 私が聞こうとしたその時、


「キュン!」


「あ、ユーリ!?」


「キュンキュン!」


 ユーリが突如として乱入してくる。


(そうだった!ユーリってば、外で遊んでたのね……)


 外まで人がいないか確認してなかった……。

 っていうか、そもそもペットが家から出ることなんてほぼないか……。


 盲点だった。


「ごめん!話は一旦中断で!」


「了解」


 一旦、白装束の尋問を終了する私だった。

(●´ω`●)


ほっこり……はしないか。


明日までに百話行きそうですね!

頑張ります!

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