戦いの後…
「あぁ、眠い」
「どうしてだい?あんなにベアトリスを眺めるんだって楽しみにしてたじゃないか」
俺は退屈そうにも、不機嫌そうにしている少女に尋ねる。
「いやぁ、予想外だったことがあったのよ」
「なにが予想外だったんだい?」
「私が思ってた以上に依代を操れなくてさぁ!戦っていた相手に手こずっちゃって……」
「それが?」
「そのせいで、ベアトリスの戦ってる姿が見えなかったのよ!ほんと最悪!」
おそらく、狂信嬢のやつとベアトリスが戦っていてのだろう。
この少女が興味を惹きそうなのがそいつらの戦いしか思いつかないしな……。
個人的にはどうでもいいことなのだが、一応同情しておいてやる。
「それは残念だったね」
「そうなのよ!おかげで勝負の行方がわからなかったのよ!」
「どっちが勝ったと思ってるんだい?」
「ベアトリス……と、言いたいところだけど、正直わからないのよね」
意外にも、ベアトリスが負ける可能性も否定しなかった。
「あんなに、ベアトリス大好きっ子だったのに、珍しいこと言うじゃないか」
「あ?別に好きじゃないわよ!私はただ、自分よりも強くなれそうなやつを観察するのが好きなのよ!」
「そう言うことにしておいてやるよ」
素直じゃないな〜。
相変わらず、目は死んでいる少女。
そこは相変わらずなので表情は読み取りにくいのだが、なんとなくそう感じる。
「それで、なんでそう思ったんだい?」
確かに、狂信嬢は強いので、そう思うのもわからなくはない。
「狂信嬢……ムカつくけど、人族の分類だと、最強なのよね」
「否定はしないかな。ま、俺のほうが強いけどね!」
「そう言うのいいから、とりあえず聞きなさい。ベアトリスって、至る所で魔法を使ってるのよね」
魔法の同時使用の負担は同時に使っている魔法の数だけ二乗分の負担がある。
二つだと四倍……三つだと九倍の負担がかかると言うわけだ。
ちなみに、ベアトリスは三つほど使っていると記憶している。
つまり、通常の肉体に常に魔法の使用、九倍の負担がかかり続ける。
魔法の規模によって、その負担の大きさが変わるのだが、ベアトリスは結界というバカでかい魔力を消費する魔法を使っているので、単純に九倍と言い切れない。
俺の予想では十二倍ほどはかかっていただろう。
しかも、なぜかベアトリスは魔力を放出しっぱなしという、魔法使いや魔術師としてはあり得ないことをしているので、もはや負担というレベルではなかったはずである。
「確かにあんな状態で戦えたもんじゃないよね。俺だったら逃げるわ」
「そうね、私だったら最初から全力で仕留めにかかるわ」
「本気出せば狂信のやつにも勝てるってか?マウントとるなよな……」
「それで、ベアトリスは、狂信嬢と同じくらいの強さなわけだけど……」
無視かよ……。
「あの子の能力が分かってない状態で、ベアトリスが勝てるかなぁ〜って」
「あいつ、目だけはいいからな」
ちなみに、幹部は五人いて、その中でも一番弱いのが狂信嬢である。
その代わり、探知能力は誰よりも長けているのだ。
数キロ先まで探知できるのではないだろうか?
俺には不可能な芸当である。
「それで、目を伏せた状態だと、ベアトリスでも勝てると思うんだよね。でも、目を開けちゃったら、どっちが勝つかなって」
「攻撃がほぼ当たらなくなるからな。その原理がわからなかったら、一生勝てないだろうね」
未来予知
彼女の目に映ったものは、その後数秒間の先が読まれてしまう。
俺も視界内だけで、戦えと言われたら勝てる気はしない。
未来予知はどういう原理で起こっているのか……。
スキル『光粒子化』というものがあり、それを使うと、粒子単位で動きが読み取れるのだ。
僧侶では獲得できないスキル。
その上位の職業で得られる。
いや、最上位の職業と言ったほうがいいだろう。
それはいいとして……。
そのスキルを使えば、未来予知とはいかないが、相手の動きを看破できる。
そこにさらなるスキルを加える。
『心眼』というスキル、これは気の流れや、魔力の流れを感知して一種の先読みが可能になる。
ただし、『こうなるかも……』という予測に過ぎないので、必ずしもそういう結果になるとは限らない。
そこに加わるのが、『光粒子化』である。
物体の動きを完璧に把握し、それを心眼で予想した結果と照らし合わせる。
するとあら不思議……
「未来が見えるってわけね」
「職業がそもそも違うから俺にはできないな」
「その未来予知をどうにかしないと勝てないってわけ。まあ、ベアトリスならそんなの余裕に決まってるのだよ!」
こいつベアトリスが、狂信嬢に殺されるということを一切考えてない。
どうしてそこまでベアトリスを信じられるのか不思議である。
「それで、依代は生きてるのかい?」
話が沼にハマりそうだったので話題を逸らす。
「ええ、二人の戦いに参加してないから、怪我もしてないわよ?………ちょっと、吹き飛ばされたけど……」
「おいおい……」
「っていうか、かなりの大戦力だったわねー。デスドラゴンがたくさんいたんだけど?」
Sランクの魔物一体で国が動かなければならない事態に陥る。
「なんで、そんな大戦力投入するかな〜。人選センスを疑うわね」
「人選といえば、狂信嬢が無理やり仲間に入れた、魔人の娘はどうしたんだい?」
「まだ帰ってきてないわね。でも、そのうち勝手に帰ってくると思うわ。逃げ帰るのが見えたし……」
敵前逃亡は死罪にあたるが、幹部の戦いに巻き込まれて死ぬくらいなら逃げ帰るほうがいいだろう。
だから帰ってきたとしても、殺すつもりはない。
そんなことを考えているうち、
ドタバタと音が立っているのに気づく。
そして、バタン!という音とともに、扉があいた。
「大変です!狂信嬢様が……殺されちゃいました!」
「「は?」」
俺らは、いきなり部屋に入ってきた魔人の娘の話を詳しく聞くのだった。
物語が進んでいく……。
後少しで百話……だと?




