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激戦

 あのー大変申し訳ないのですが……


(逃げていいですか?)


 やばいやばいやばい!


 思ってた以上に最悪な状況である。

 いやー、この白装束の女なんで目をつむっているのに、私の攻撃が当たらないの!?


 ただの物理攻撃(蹴り)を片手で止められるのはまだわかる。

 だって、私子供だもん。


 だけどさ、なんで、魔法も避けるわけ!?


 ライトアロー


 魔を滅する矢である。

 速度も素早く、避けるのは不可能……。


 そう思ってたんだが、なんというか……。


 普通に避けられた。


 てへ☆


 いや、すんません。

 マジでふざけてるんじゃなくて、当たらないんす。


 転移で背後をとって、背中に手を付け放ったんです。

 だけど避けられたんです。


 相手が悪いんです。

 私以上かもしれない、機動力を持っていて、その上に攻撃が当たらないなんて勝てるわけないじゃないですかぁ!


 私はいたって凡人な七歳児。


 こんなのいじめだよ!


 かっこつけて踏み込んでみたはいいものの、これは予想外だった。


 魔人の子は何とかなりそうなレベルだったんで、舐めてたわ……。


 それに私が放ったファイヤーボールを素手で受け止めたんだよ?

 意味わからないでしょ?


 熱くないの?

 ねえ、熱くないの?


 なんで肌が焼け落ちないんだよ!

 肌質から化け物ってこと?


 どんなスキンケアをしてるんだ……。


「う、早い」


「突っ立ってる人に言われたくないんだけど!」


 こいつめ……。

 でも、こいつを倒せば魔物たちの動きも終わる。


 私が、あの魔物たちを全滅させればよかったと思わなくもない。

 だが、そうすれば、私が学院を出てから何が起こるかわからないのだ。


 つまり、抵抗することすら許されずに、学院全体が淘汰されてしまうかもしれない。


 二回目のスタンピードが起こらないためにもここで仕留める必要があるのだ。


「消し飛べ!」


 私の少々ムカついてきたので、本気でやる。

 いや、さすがにファイヤーボールが全力とは言わないからね!?


 それが全力だったら半人前もいいところである。

 人生二回目の私、一人前でなければ逆におかしいよね。


「うらぁ!」


 魔力を手に集め頭の上に振り下ろす。


 簡単に言うと魔力撃である。


 集めるだけで何が変わるのかといえば、威力の差である。

 物理攻撃には人間としての限界がある。


 だが、魔力を込めればそれを超えられる。

 自然エネルギーに反した魔力は様々な現象を無視してダメージを与えられる。


 不可能を可能にする力、それが魔力である。


「!?」


「腕、しびれる」


 だが、悲しいかな。

 意味をなさなかった。


 左手でそれを受け止められた。

 ぶつかった反動で分散した魔力があたりに巻き散る。


 その余波で魔人っ子が吹き飛んでしまった。


(あ、なんかごめん)


 もちろん口には出さない。


「どうやってそんなに強くなった?」


「はぁ!?あんたのほうが強いんですが?」


 メッチャあおってくるじゃん。


「一歩も動いてないか」


「ん、動くのめんどい」


 まじでムカつくんだが?

 絶対ぶっ飛ばす。


「そろそろ本気でやってやるんだから!」


「もっと、強くなんの?」


「そう思うんだったらあなたも目を開けなさいよ」


「えぇー」


「もういいです!」


 私は転移する。

 さっき通り背後をとるのだが、


「前からも!?」


 魔人の子が叫ぶ。


 解説ありがとうございます。

 私が使ったのは分身である。


 ただし、それだけではない。


「両手で足りる」


 そう油断したのか、本物の私をはじき返し、分身の私も同じように殴りつける。


 だが、それは通じなかった。


 白装束の攻撃がすり抜け、逆に分身のが白装束の顔面を殴りつける。


「!?」


「よし!」


「何をした?」


 よれよれともといた位置からは動いたものの、依然と立っている。


「簡単。分身で殴っただけ」


「私の攻撃、すり抜けたけど?」


「そのうちわかるんじゃない?」


 さっきあおられた分だけあおり返してやる。


 絶対に教えてやんない!


 その方法でリンチにしてくれる!

 私は同じ方法で何度も殴りつける。


 私本体が近づくと、攻撃されて地味に痛いので、魔法で時々代用する。


 それが何度か続く。


 そして、


「わかった」


「……何が?」


「これ、霊体なの?」


「は?」


「図星」


 何でわかったんだよ!

 意味わかんねーし!


 私の手札はどんどんばれていくのに、私はいまだに三百六十度どこから攻撃しても防がれる理由がわからない。


 理不尽だ……。


「分身体に霊体を操らせてる。だから攻撃が通じない」


「へー。わかってんじゃん」


「魂の扱いにはたけてるから」


「聞いてないよ!」


 怖すぎだろ魂の扱いに慣れてるってさ!


「しょうがない……」


 もう少し手札をさらしてでもここで仕留める。


「じゃあ、ちょっと反則するわ」


「え、やめて?」


「この期に及んで何言ってんだよ……」


 だるそうにされるとこちらとしても反応に困る。

 敵と思われてないのだろう。


 私が弱いから……。

 敵として、情けない気分を感じながらも私は本当の意味での全力に切り替えるのだった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



 思っていた以上に強かった。

 感想はそれだけ。


 傀儡の言っていたことはあらかた正しかった。

 そして、協力者がこの者を気に入っている訳がなんとなくわかるような気がする。


(でも、私のお気に入りが死ななくてよかった……)


 横目で……いや、心眼で見てみれば、こちらを覗きながら何かに祈りを捧げるポーズをとっている。


(犬みたいで可愛い)


 相変わらず子犬みたいに見える。

 だからお気に入りなのだ。


 そして、そのお気に入りを生かしてこっちまで連れてきてくれたベアトリスという協力者のお気に入りも若干気に入ってきた私。


(こう見ると、この子も可愛く見えてくる)


 頑張って私に攻撃を当てようとしているところとか、健気で可愛く見えてきた。

 そんなとき、


「じゃあ、ちょっと反則するわ」


 その一言で期待値が上がる。

 正直に言えば、これ以上本気を出されれば、私の身が持たない。


 でも愛弟子を見るような目で見ている私としては、『やめて』と言いつつも、楽しみだという感情の方が強くなっている。


 私はどんなものが来るのかワクワクしながら、待つのだった。

あれ?

これって恋愛……((( 殴 )))

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― 新着の感想 ―
[一言] 敵に愛されてサイコパス百合百合キャラも面白いかも。 年末まで続いて欲しいですね。
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