狼煙
いつものことながら、誤字が多くてすみませんでしたー!
そして、修正するのが遅くなり、大変申し訳ないです!
静かなはずの夜のグラウンドに土埃が立つ。
「オリビアさん。数はわかる?」
「右翼側に五百、左翼側に五百。中央に十二人いらっしゃいますね」
たくさん魔物がいらっしゃるようで……。
「めんどくさいなぁ」
「ベアトリスさん一人よりかはマシでしょう?」
「まあ、そうなんだけどさ」
「私も頑張りますんで、全部倒しちゃいましょう!」
やる気満々だなぁ。
私はそういうの疲れるので、できれば勘弁してほしい。
「このまま、突撃しますか?」
「そんなの絶対ダメだよ!」
突撃するなんて死ぬに決まってるだろ!
「じゃあ、どうします?」
「そんなのもちろん……飛ぶに決まってるじゃん!」
地面を蹴って飛び上がり、魔法で飛翔する。
「ちょっとまってくださいよー!」
私の後に飛び上がってきたオリビアさん。
(さすが……やっぱり飛翔魔法は使えるんだー!)
って思った次の瞬間、
「何それ?」
「翼だよ!」
黒色をした翼。
蝙蝠のような、見た目をしている。
それはまるで、
「悪魔?」
「失礼な!立派な羽です!」
世間一般では悪魔っぽいイメージの翼だが、聖女が言うであれば、問題はないのだろう。
要は実用性があるかないかだ。
「ここなら、基本的にはバレないと思うよ」
「でも、霊体で飛んでいったレイナさんがやられていますから、警戒はしておいた方が良さそうですね」
私たちだって弱くはない。
だが、相手は戦うことを専門としたモンスターたちの大群である。
スタンピードというのは、魔物の種類なんて関係なく、ランダムなまとまりで襲いかかってくる現象のことを言う。
その中には強い奴もいれば、弱い奴もいる。
「デスドラゴン……」
「では、ベアトリスさん。あのデスドラゴンは私にやらせてください」
「え、でも……」
「私は聖女……“候補“ですよ?だから大丈夫です」
死せるドラゴンを滅するのはお茶のこさいさいってか?
(くそー!私だってやればできるんですよ?)
私だって肉体くらいなら滅ぼせる。
だが、魂を砕いて、再生を止める手段は持ち合わせていない。
魔力が尽きれば、負けは見える。
(ここは大人しく譲るとしましょうかね)
「わかったわ。じゃあ、私は——」
陣形の真ん中あたりを見下ろす。
「あの十二人をもらうわね」
「了解です」
そして飛翔を解除して、地面に向かって急降下する。
おそらくあれは、このスタンピードを率いる者たちだろう。
魔力が人一倍濃く、何しろこのスタンピードの中では少ない人間型。
知恵を持っていることは確定した。
あいつらを倒せば、この魔物統率も崩れて、勝利は近づく。
「おっ邪魔しまーす!」
誰にも聞こえない空中でそう叫び、私はカッコよく着地するのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
失敗した失敗した失敗した。
変な空中を飛ぶ女に見つかった。
この魔物の軍勢を率いる者として恥ずかしい。
それよりも、そのせいで作戦が失敗でもしたら、生きて帰ることができなくなる。
そう焦り、軍を早めに動かす。
グラウンドの入り口あたりまで、やってきたまでは良かった。
(よし、このまま総攻撃を仕掛ければ、数は一気に減る!)
魔人として、人間を憎いと感じる部分もあるが、情だってある。
できれば、苦しまずに、一瞬で殺してあげるのだ。
そう思っていた矢先のことだった。
「!?」
私の目の前を歩いていた十二人の指揮官のうちの一人が倒れる。
その人物がいたはずの場所には漆黒が特徴の一本の大剣が刺さっている。
「あれ?もう一人死んじゃった?」
その言葉は我々指揮官を一瞬に恐怖の底に叩き落とした。
ゆっくりと、その大剣に着地するドレスを纏った少女だった。
ただし、それは事前に聞かされた制服のようだったので、おそらくここの学生であることは理解できた。
「ねえ」
「ひっ!」
「聞きたいことがあるんだけどさ」
仲間の一人が悲鳴をあげ、それを答えとして受け取ったのか話を続ける。
「私の友達がねえ?怪我して帰ってきたんだよ」
「………………」
「どいつだよ」
その言葉だけでも理解できた。
「私が直々に殺してやるからよ。出てこいや!」
その声は魔力を帯びていた。
(これは……傀儡様の力?)
似たような経験はしたことがある。
出撃する時も、嫌がる魔物たちに一言、『従え』と発しただけで誰もが従順になったのを覚えている。
ただし、その能力の効果がわかっていたとしても、抗う術はなかった。
「お前か」
自分の体がいうことを聞かなくなった。
なぜか一歩前に進み出ていた。
死ぬとわかっているのに……。
「お前は一番最後に殺してやる。大人しく待っていろ」
命令口調の中には怒りがこもっていた。
自分に対する怒りがその一言でヒリヒリするほど伝わってくる。
「な、何をした!」
十二人のうちの……十一人のうちの一人が声をあげる。
それは若い声だった。
きっとこのメンバーの中で最年少の人物だ。
「あら?子供?」
「だめ、やめて……」
私は必死に口を動かす。
恐怖に打ち勝って話すことまではできるようになった。
「やめて、ですって……?」
言葉が一旦途切れ、指パッチンをする。
少女の背後から巨大な爆発が起きる。
そして、不意打ちを狙っていた一人が無様にも吹き飛ばされた。
「不意打ちしてくるような人たちが信用できるとでも?」
「お願い……みんなは見逃して……」
仲間が死ぬ姿は見たくなかった。
ここまで、長く生き残ってきて、飼われている死んでいく者たちのことも当然記憶に残っている。
魔人の寿命は約千年。
生き残り続ければ、何百回と仲間が死ぬ様子を眺めることになるだろう。
そして、すでに百回は……。
「わかった、殺さないであげる」
「!?」
その回答は予想外だったため、驚きに身が震えた。
「ただし!」
その言葉が聞こえたと思ったら、その場から姿を消し、
「本物の主人のところに案内しなさい」
背後から、耳元にかけて声が伝わってくる。
「がっ!?」
そして、私に何かが刺さった。
仲間の武器だった。
未だ生きている仲間の攻撃がすり抜け、自分に当たったのだ。
「神の顔も三度までよ。次は約束守らないから」
背中を押され突き飛ばされる。
そのまま地面に顔を打ちつけ、振り返った瞬間には、
「私は、魔物たちを排除すると致しますかね」
鋭かった瞳はいくらか丸くなり、
「オリビアー!そっちはどう?」
「デスドラゴンが多すぎですー!」
「あぁ〜。なんとか耐えといてー!それ以外は私の方でなんとかしてみるからー!」
「お早めにお願いしまーす!」
上空に浮かんでいる翼を生やした魔人のような女に話しかけ、余裕を見せる始末。
「で」
「……」
「私が、お前らの前にもう一度現れるとしよう。それまでに、答えを見つけておくんだな」
不気味に嗤い、一瞬にして姿を消した。
「あ、悪魔?いや、悪夢?」
「どっちでもいいさ、大丈夫か?」
気づけばアラクネが近くまでやってきていた。
手を取り、立ち上がる。
「どうする?」
「わからない。でも一つ言えるのは……」
心の中では誰もが思ってであろう言葉だった。
「あれが、本当の魔王だ……」
♦︎♢♦︎♢♦︎
「きゅん!」
くしゃみが出る。
こんなこといつぶりだろうか。
普段はくしゃみなど一切でない。
不思議なこともあるものだ。
(誰か噂でもしてるのかな?)
そんなことを考えながら、首輪の辺りを掻き毟るのだった。
集中できるときはとことん、書けるのに、気分が乗らないと時間がかかりますよね。
九十話がいつもよりちょっと遅い時間に投稿されたのはそういうことです。




