開戦?
暑くて溶けそう……。
熱中症にはお気をつけて。
「私のライフはもうゼロよ…」
「授業が終わっただけじゃん…」
「それでもつらいものはつらいのよ!」
べたッと机にへばりつく。
「もう、五歳くらいから授業受けてるでしょ……それでなれると思うんだけど?」
「え?」
「え?」
「私がそんなまじめなわけないじゃん?」
レイの顔が固まる。
「え、じゃあ何してたの?」
「遊んでた☆」
「なるほど理解したわ」
あきれたようにため息をつく。
「ちょ、ため息つかないでよ」
「もういいです!早く帰ってお風呂行きますよ!」
私の手を取り、強引にご帰宅させる。
「私、まじめに授業受けてたのに……」
そのつぶやきが私に聞こえることはなかった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「どうして、真面目に授業受けてないのにそんなに強いんですか!私は納得いきません!」
「いや、頑張って鍛えたから……」
「私も鍛えに鍛えまくっています!というか、霊体をずっと使ってるんでベアちゃんと同じくらい魔力を消費してるんです!」
「体も……」
「鍛えてます!」
「でも……」
「とにかく、私はなぜ勝てないんですか!?」
私に聞かないでくれ!
私は三歳から鍛えているからじゃね?としか言えない。
なんでか、鍛えても個人差が生まれるみたい。
結局世の中差があるのだ。
私よりも、効率がいい人もいれば、悪い人もいる。
レイは悪かっただけだろう。
「もうちょっと頑張ってみようよ」
「無理です!そうやって逃げないでください!」
「いや、ちょっと違う話しようよ」
「逃げるなー!」
話を逸らしたいのに、それを許してくれないレイ。
逸らしたいのにはちゃんと理由がある。
「声がでかいんだよー!」
今私たちがどこにいるかというと、お風呂である。
もちろん、同級生もいれば、下級生……上級生もいるのだ。
そんな中、白い布巻いて一方的に愚痴ってるのは、かなり目立つ。
「落ち着いてお風呂も入れない……」
「誰のせいだと思ってるんです?」
レイのせいだ!
と言えば、場が悪化しそうなので、私は黙って耐えるのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「地獄だった」
「私は清々しいですよ」
主に愚痴ってたからな!
レイはさぞ楽しかっただろうな!
「そろそろ帰ろうよ……」
「私もすっきりしたんでいいですよ」
私への愚痴披露大会は第二ラウンドまで続いた。
私が風呂場から逃げ、脱衣所で捕まりそこで二回目である。
それを耐えて、ついに廊下までやってくることが出来た。
「湯冷めしそう……」
「早く帰りましょ」
清々しいこの笑顔……めっちゃ殴りたい。
そう考えていた時、
「ん?」
「どうしたんですか?」
「今なんか揺れなかった?」
そういったとたん、再び地面が揺れる。
「やっぱり……」
「ちょっと、私見てきますね」
「できる?」
「霊体ですから」
じゃあ、行ってきまーす、と言って、飛び上がるレイ。
私はレイが確認に行っている間に、制服に着替えてくる。
少なくとも何がやってきたかはわかる。
「魔物の大群……スタンピードか」
でも、こんな学院を狙ってやってくるなんて。
普通ではありえないだろ。
ありえないことではないが、誰かの陰謀という可能性のほうが高い。
なぜなら、この世界の魔物は魔力が濃いところに引き付けられる。
だから、魔道具などが多く集まり、普段から魔力が多く使われている王都などの地域に集まるのだ。
こんな千人くらいしか人がいない学院に集まるわけがない。
なので、
「さっさと指導者ぶっ倒すか」
それで、魔物は統率力をなくし、空中分離する。
部屋の扉をバタンと開ける。
「どうしたの?」
「いいから。制服に着替えといて、ルーネ!」
「え、いいけど……」
服を手に取り、部屋を出ていく。
「こういう時の魔法だよね!」
アポート
物質転送の魔法。
これによって物と物の場所を入れ替えることが出来る。
そそくさと着替えて、寝間着は異納庫にしまう。
そしてすぐさま転移する。
「あ、なんかやばそうな奴がいたから、みんなに避難勧告出しといて。あとはよろしく、生徒会さん。っじゃ!」
そうして、速攻で再び転移する。
なんか知らない人がいたため、ついつい『生徒会さん』と言ってしまった……。
レイの兄貴よ……すまぬ。
そればっかりは急だったので許してくれ……。
そんなわけで、私はレイが確認しに飛び立った地点まで戻ってくる。
そこにはすでに、レイが戻ってきていた。
ただし、ぼろぼろの状態となって。
(霊体が怪我!?)
「大丈夫!?」
「うぐっ……!」
「『上級回復』」
腕から出血していた様子だったので、迷いなくハイヒールをかける。
腕の傷がどんどんなくなっていき、血の流れがとまる。
「ありがとう……ベアちゃん」
「そんなことよりなにがあったの!?」
「ちょっと、敵に見つかっちゃって……」
「わかった、レイは部屋で休んでてね」
「わた……私も戦えるよ……!」
無理をして立ち上がろうとするレイ。
もちろんのことながら、私はそれを止める。
「病人は大人しく休んでてね。大丈夫、私一人で何とかして見せるから」
そういった瞬間、
「私も行きます」
後ろから誰かの声がする。
ここ最近、注意して聞いていた声だった。
「オリビアさん?」
「やっぱりベアトリスさんは気づいたんですね」
「まあね」
「レイナさんは……負傷ですか」
心配そうに眉を顰めるオリビアさん。
「うぅ……面目ないです」
「大丈夫ですよ、私たちがいますから」
仮にも編入組成績トップ二名である。
それは、上級生を含めた順位である。
全員編入試験では同じ問題を解くのだ。
だから、一年生は問題の難易度がすさまじく高いと感じるだろう。
その中でのトップである。
「それで、オリビアさん。聖女候補だけど、戦えます?」
聖女というのは、戦闘向きの職業ではない。
回復に特化した職業であるため、戦場では戦いにおいて役に立つとは思えない。
「ご安心を……敵の倒し方はそれなりに。だからこその首席です」
ニコッと笑った笑顔に私も安堵する。
いじめられていたときのあの涙はもうなくなっているのに気づいて。
「じゃあ、行きますか!」
「お供します」
そうして、二人は夜闇に消えていくのだった。
早く投稿してしまいすみません……予約掲載を設定するのを忘れてしまいました……。




