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真か嘘

四月六日の0時に新しい作品を投稿します。是非是非、作者のページからとんで読んでいただければ幸いです。あわよくばブクマを……。

 一人じゃないというのは思いの外心強いものだというのは散々味わってきた。それが言葉も通じない異種族であってもだ。


 スライムという生き物はちょこちょこ跳ねながら私の後ろをついてきている。言葉は通じなくても心は通じてる的な?心の友的な?非常に心強いことこの上ない。


 一度も足を踏み入れたことのないような場所であれば尚更その存在は大きかった。


 空に浮いている大陸というのは浮いていることと、植物が大きいこと以外特に地上の大陸となんら変わりない。


 木々なんか百メートル近くある。精霊樹ではない、その雰囲気は感じない。だが、その代わりと言わんばかりの視線があたりからは感じられた。


「スライム君、私の近くで隠れていて」


「キュ」


 木々を介して誰かが見ている。全身の至る所までを満遍なく観察されている、人の気配はしないし、害する様子もない。だからと言って気にするなというのは不可能な話であった。


「そういえば、ご飯持ってきたんだった」


 海の上にいた間、一度も食事をとっていなかったことを思い出す。何日分にも及ぶ食料は一切といって手をつけられていなかった。食事を忘れていたことに気がつくと急激にお腹が空いてきた。


「戻って食べるのは……」


 戻る時間が勿体無い。なら、もういっそのことここで食べてしまおう。


「一旦休憩しよっか、スライム君」


「キュ!」


 何気にスライムは今まで一度も休まず動き続けてくれていた。そろそろ彼……彼女?わかんないけど、休息が必要だろう。私も。


 異納庫から取り出したのは、お城から掻っ攫ってきた……おほん、少しばかりいただいてきた加工食品である。加工食品は生よりも長持ちするため、城で蓄えられていたのだ。勝手に持ち出したのは悪いと思っているし、いきなり置き手紙だけでいなくなったのも悪いことをしたと反省しているけど、絶対に反対されるし、モタモタしている暇はなかったから許して欲しい。


「ベーコン、いる?」


「キュ!」


 ここにきて新発見、スライムはベーコンを食べることができる。


「スライムって食事がいるの?」


 そんなことを考えながら、私も加工食品に齧り付いている。


 その時、『視線』が消えた。


「?」


 あたりから感じられていた視線は消え、その代わりに今度は遠くの方から人の気配がしてきた。私がその方向を注視していると、そこから出てきたのは一人のドライアドであった。


「ドライアド?なんでこんなところに……」


「私たちのことを知っているんですね」


「あ、ええはい……」


 いきなり現れたそのドライアドは淡々とした口調で会話を続ける。


 特にこれといった特徴はない。ただ、強いていうなら、さっきまで木々を介して私たちを見ていたのはきっとこの人だろう。


 感じていた視線は数えきれないほどであったが、それは全て目の前のドライアドの視線だったのだ。そもそも、この人の宿木にはどこ?この近くであるはずはない。先ほどからずっと同じような視線を感じていたから。


 ってことは索敵範囲が広いのかな?


「私について詮索しているのね」


「あ、いえ……ごめんなさい。ほら、こんな浮いている大陸に人がいるとは思わなかったから警戒しちゃって……」


「大陸」


「え?」


「まだ大陸と呼ぶ人がいたのね」


「ここ、クラトン大陸ですよね?」


「それは昔の呼び名。この大陸が切り離されてしまう前の話よ」


「あ、あー……」


 ちょっとツムちゃん?聞いていた話と違うんだけど?ここって古代クラトン大陸っていうんだよね?


 《はい、『昔』はそう呼ばれてました。別に間違ったことは言ってません》


 ぐぬぬ……。


「今では浮遊島と呼んだ方がいいかしら。ここに人が来るなんて珍しいわね。ここ最近であなたが二人目よ」


「二人目……ってことは、もう一人きたんですよね?」


 それはきっと私の父様だ!


「ええ、きたわね」


「その人は!その人は今どこにいますか!」


 これでようやく会えると一安心した時だ。


「その人なら、もう亡くなったわ」


「……え?」


「知り合いだったのか知らないけど、残念だったわね。この大陸には荒くれ者が多いのよ」


「……あなたもですか?」


「私?そうかもしれないわね、だって私たちはこの大陸の長ですもの」


「長?」


 大陸の長だと?


 いや、そんなことはどうでもいい。


「父様が死んだ?」


「……身内だったのね、お気の毒に」


「……うそだ。父様がそう簡単に死ぬはずがない!」


「嘘だと思うのなら、死体を見せましょうか?」


 そこまで言い切られて、私は嘘だという自信がなくなってきた。


「……お願いします」


「ふむ……」


「何をしてるんですか?」


 ベアトリスを見る目が変わった気がした。それは気のせいではなかったようで……


「ごめんなさい、今までのは嘘よ」


「……は?」


 そこから沈黙が少しの間を支配した。

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