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スライムの救出

 どれだけ強い風があれば人の身体はここまで飛ばせるのだろう。ただ、具体的な数値が知りたいわけではない。スライムが空へと上げて落下していったとき、何もできずにずっと体が硬直していたことが悔しかったのだ。


「はあ……」


 ただ、幸いにしてスライムはまだ生きていた。私の探知魔法は自分の立っている位置から下まで判定があるから、わかるのだ。まだ、スライムらしき生体反応が海の中に残っている。まだあの嵐の中をさまよっているのだ。


 私はすでに地上についていた。ここはクラトン大陸で、父様がいるであろう目的地であった。私の中での最優先事項は父様を探して会うことである。だが、だからと言って助けてくれたスライムをそのまま見捨てておくほど薄情ではない。


 私の体のしびれが取れたのはクラトン大陸における陸地に叩きつけられた辺りであった。地面は普通の土の素材で、下を見ると、どこまでも続きそうな雲の層が見える。反対に陸地の奥を見れば数メートルも進めば木々が生い茂る原生林が待っていた。


 私は原生林に背を向ける。


「ようし……ちょっと怖いけど!」


 私は痺れの収まった体を軽く動かしてから空中を飛んだ。下から吹き付けるすさまじい風圧にまた上へと持ち上げられそうになるが、風が当たる体の面積を減らすことでどうにか下に向かって落ちていくことが出来た。


 ただ、いくら下から上へと吹く風が強いからと言って落下速度は尋常じゃない。


「きゃあああああああ!」


 多分、今私の顔面は大変悲惨なことになっているだろう。顔面崩壊……ここにレオ君たちがいなくて本当に良かった。


 そして再び雷が吹き荒れる雲のゾーンへと突入した。雷は何時でも私のことを狙ってくる。だが、先ほどみたいな不覚を取ることは絶対にしたくない。


 だから、私は結界を常時展開することにした。結界自体にそれほどの魔力は使わないように省エネを心掛けているが、やはりダメージを喰らうと、喰らった分の結界を修復するために魔力を使わなくてはいけなくなる。


 ここでかなりの魔力が持っていかれることだろう。なにせ、毎秒二発くらいの速度で普通の人なら即死級のどでかい雷が落ちてくるのだから。


 落下していきながら、雷を防ぎつつも探知魔法を作動させてスライムの位置を探る。探知魔法に映っている生命反応はスライムのもの一つだけだったのが、幸いだった。


 こんなところに魔物がいてたまるかってんだ。雷を纏ったウナギ系の魔物がいなくて本当に良かった。もしそうだったら、戻ってスライムを助け出す魔力が残っていたのかわからない。


 水龍を撃退し、シーサーペントを倒して……さらには雷による連撃を防ぐのを一日でやってのける魔力量は持っているかもしれないが、ここに加えてちょくちょくではあるが小さな魔物を撃退するのにも魔力を使っているし、常に魔物の気配を感じられるようにと探知魔法も作動させて、異納庫から物を出し入れしていると……ね。


 雲の中を勢いよく抜け出すと地面……海水が見えた。そこにプカプカと……荒波に飲まれながらも浮かんでいる船の形をしたスライムがいた。


「スライム君!」


「キュ!?」


 どうしてお前がそこにいる、とでも言いたげな顔……はないけど、言っているような気がした。私は飛行魔法の準備をする。


「今連れてくから!」


 海水面ギリギリまで落下は継続され、そしてそこから一気に重力に逆らいながら飛行魔法で態勢を立て直した。身体にとてつもない負荷がかかるのを感じながら、私はスライムの体の一部に手で触れた。


 そして、『転移』する。


 次の瞬間に視界に映ったのは先ほど見やった森だった。隣にはいまだ船の形をして状況が呑み込めていない様子のスライムがいる。


「私が置いていくわけないでしょう?」


 といっても、このスライムとの関わりというか接点なんてほとんどないようなものだけど。


「キュー!」


 通常のスライムの形に戻ったスライムが抱き着いてくる。


「ぐほっ!?顔はまずい!息でき……」


「キュ?」


 顔から降りたスライムはその場で飛び跳ねながら嬉しそうにしている。こう見てみると、スライムも案外かわいいなと思えてくる。なんだか、私の武器の素材にしているのが本当に申し訳なくなってくるのだけど……はぁ……。


 まあ、何はともあれようやくここまでこれたのだ。


「ようやくついた……!古代クラトン大陸!」

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