浮遊の大陸
風の勢いも強くなってきた。雷でスライム船の制御も効かなくなってきたようだ。この嵐を突破できる様子もなく、さすがにこのままではまずい。
「何か……なんかないの?」
これと言った手段が思い浮かばない。これまでの速度を維持するのも大変になってきた……。
「あっ!?」
「キュ!?」
風が下から吹き上げてきたことでスライムの軽い身体は簡単に浮き上がってしまう。浮き上がったスライム船の上に乗っていたベアトリスはバランスを崩しかける。一度浮いた身体は中々着水にまで至らない。
風の勢いは増していき、ついには空中へ投げ出された。
「うわあ!?」
スライム船の淵に捕まって飛ばされないようにする。凄まじい勢いで吹き飛ばされた船体はまだ何かの渦に吸い込まれていくかのようにあたりを回転しながら上へと上昇していく。
どんどんと上昇していくことで雷が直撃するまでの時間が短くなり、防御が難しくなる。雷を反射神経だけで、防ぐには一切の予兆が見られない。
魔法なら魔力の流れからわかることではあるが、音速以上の速度で向かってくる雷には魔力は流れていないため、どのタイミングで落ちてくるのかわからない。ベアトリスはこれを目で見てから防いでいた。
「でも、いっそこのまま雲をつっきて仕舞えば……」
雲を突き抜けてから風魔法でスライムごとベアトリスを運んでしまえば、一番楽だろう。風が吹き荒れる雲の下では制御が大変だ。
「もうどうにでもなれ!」
どんどんと雲に近づいていく。上昇気流に乗って上がっていくスライム。どんどん気圧が薄くなっていく感覚がする。
そして、ついに雲の中に突入する。突入した瞬間、ベアトリスは先ほどまでの発言を若干ながら後悔する羽目になった。
「っ!?」
雲の中はさらなる強風が吹き荒れていた。もはやかまいたちだ、スライムの体があまりの風圧で切り裂かれていく。
「キュウ!」
「大丈夫!?」
ちぎれたスライムの体の一部が風に乗ってどこかへと飛んでいってしまった。あまりにも強い風はもはやベアトリスも立っていられない、というよりも体を縮めておかなければ簡単に吹き飛ぶ。
「のわあ!?」
目も開けらないような状況で、一瞬だけ雲から出れた。
「あ……」
その時、目に見えたのは雲の上にある雲。その雲の上に乗っかっている、茶色の土。
「あれは……」
再び、風の渦の中へと引き戻される。
「だけど、見えた!」
あれが、クラトン大陸だ。
空中で浮いている大陸なんて……古代クラトン大陸よりも浮遊大陸ってそのままの名前にしておいた方がわかりやすいだろ。
でも、やるべきことは見えた。もうクラトン大陸は目前まで迫っていた。
「スライム君、上へ上がるよ!」
「キュ!」
上へと登ろうとしている私たちを雷が撃ち抜こうとする。
「くっ!」
結界の展開が遅れた。ベアトリスの身体に凄まじい電撃が流れる。
「や……ばっ」
体が痙攣で震える。しばらく治りそうにない。
スライムは心配そうにしな柄もベアトリスに言われた通りに上昇することを第一に目指してくれた。どうやってコントロールしているのかはわからないけど、早く脱出できればなんでもいい。
そして、雷で痺れているベアトリスに向かって二発目の雷が落ちてくる。
「っ!」
「キュ!」
その時、足をスライムの体の一部に掴まれる。
「キュウ……」
身体に直撃を食らったスライムは苦悶の声と思われるものをあげる。それでも、ベアトリスは離さずに、そのままベアトリスの身体を振りかぶった。
「え」
そして、そのまま上空へと向けて思いっきり投げ飛ばした。かなりの飛距離を飛ばされる。そのままスライムとベアトリスの距離はどんどん離れていく。
「スライム君!?」
「キュ」
ゆっくりと落ちていくスライム、痙攣が治りきらないベアトリスは勢いのまま上へ上へと登っていく。目の前には、クラトン大陸があった。スライムの姿はもう見えなくなり、ベアトリスは吹き飛ばされた勢いを殺すことができずにそのまままだまだ上へと登っていった。




