海龍
水龍の群れが勢いを落とさずに結界に激突する。
「ぐう!?」
展開した結界がその勢いに押し返される。そこまで素早い速度で突っ込んできたわけではない。いや、普通に考えたら押しつぶされるほどの速さではあるのだけれど……ただ単純に重かった。
一体何トンの重さがあるのか、結界にのしかかってきた重さは支えている手に伝わってくる。
「っらあ!」
結界を無理やり押し返すと、それにつられて水龍の動きが一瞬止まった。
「悪く思わないでね」
手には周囲の空気を燃やし尽くす圧倒的な火力の炎が出現し、水龍に向けて放つ。
「があああああああああ!」
水龍の叫び声は他の水龍に何やら指令を出すような類のものであったのか、他の水龍は一斉に口から水のブレスを放った。合体した水のブレスはとても強力な威力を発揮し、水は火に強いが、私の炎はそれ以上の火力であった。
水のブレスはおおよそ効果を示さず、次に咆哮が聞こえる前に一瞬にして水龍が水から出している身体の部分すべてを吹き飛ばされた。
「山すらも消し炭にする炎はちょっとやりすぎだったかしら……」
見るも無残な姿になった水龍たちは立った一撃で海の中へと沈んでいった。
「さて、先へ進も……」
索敵範囲に何かがまた引っかかった。先ほどよりもでかい。水龍たちの群れを合計した魔力よりも強い魔力が再びこちらへと近づいてきている。
「ちょっと……嘘、何この魔力」
感じられる魔力はベアトリスと大差ないほどのものであった。ベアトリスは決して魔力がそこまで多いわけではない。
魔法使いではないから当然のことなのではあるが、それでもステータス推定60万ほどのベアトリスは一般的に見れば膨大な量の魔力を持っていた。
それと同レベルということは、向かってくる魔物も同程度のステータスを持っているということになる。
「っ!嘘、ここまでの奴いたの!?」
魔物はそこまで危険じゃないと踏んでいたのだが、これは……少々時間がかかるかもしれない。
目の前に出現したのは、とてもでかい生物であった。細長い身体と尻尾……身体はまるで蛇のようになっており、顔は竜のようだ。
「これは……シーサーペント?」
どこかの文献で読んだことがある気がする。
《種族名シーサーペント。大昔に姿を消した幻の海龍です》
大昔に姿を消したって……今目の前にいるんですが?って、明らかにとてつもない力を放っているんですけど」
「グルオオオォォォ!」
海面を大きく揺らし津波が起きたかのように、海は荒れだした。
「キュウ!」
「落ちついて!大丈夫だから!」
スライムの体が揺れる揺れる。あまりにひどい揺れに馬車酔いの記憶が思い出されるが、頭を振ってそれを振り払いすぐさま結界を再構築する。
結界は津波を防ぎ、一部の海域のみで揺れを抑えることが出来た。落ち着きをより戻したスライムに身体を安定させるように言い聞かせ、シーサーペントを牽制する。
「さっきと同じ魔法だよ!」
凄まじい炎の波がシーサーペントを呑み込んだ。さっきの水龍たちであればこれで消し炭にすることが出来たのだが、どうやらシーサーペントは一筋縄ではいってくれないらしい。
まったく、一切傷が入らなかった。
「はは……こりゃあまずいや」
シーサーペントが頭を振りかぶり結界に頭突きをした。
「うお!?」
凄まじい衝撃が手に入り、ビリビリと手に衝撃が伝わる。手から身体に振動が伝わる。爆発的なエネルギーが頭突きで生み出されていたのか、結界はその立った一撃で破壊されてしまった。
「ぐっ!」
そのままこちらへと突っ込んでくるシーサーペントを風の魔法を使ってギリギリのところで逸らす。
「はあ!」
そのまま上から風を叩きつけ、海面の下に沈めようとするが、威力が足りずシーサーペントは健在であった。
「これは……時間かかるな」




