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ベアトリス、泊まる

一昨日って実は三千回も見られていたんですね。

ありがとうございます。

 はい、というわけで!

 クラウルさんに捕まってしまったわけですが、一体なにをさせられるというのか!?


「で、私に何をさせようとしているのですか?」


「はい、特にないです」


「はい?」


 こいつは一体何を言っているんだ。


(はぁ!?まさかこのこと確認するためだけに私を呼び出したのかこいつ!?)


「特に予定もなかったんで呼んでみたのですよ」


「な!?」


 まじ、本気でこの男殺したくなっちゃった。

 でも、そんなことしたら、私が捕まってしまうのでそんなことはしないけどね。


「というわけで帰っていいですよ」


 そんなわけで、私は追い出された。


(え?マジでこれだけ?)


 なんだったんだ?

 そんなことを思いながら、私は謁見の間の前まで戻っていくのだった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



 ベアトリスという少女が帰っていった後、私は一人ため息をつく。


 今日は帰ってもらった。


 それが正しいだろう。


「やっぱり彼女だったのですね」


 宮廷魔術師の勘は間違っていなかったようだ。


「面白いじゃないか」


 こんな逸材がまだこの世界にいたなんて。


「これなら、なんとかなりますかね」


 是非とも、学院に入学してもらいたい!


 それは、近衛隊メンバーも思っているだろうとクラウルは考える。


 そして、小さく笑みを漏らした。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「お泊まり、ですか?」


「ああ。是非うちに泊まっていって欲しい」


 謁見の間の前まで戻った私。

 そしたら、ちょうど仕事が終わった国王がいて、入室を許可された。


 そこで告げられたのは、お泊まり会実施のお知らせ。


(どういうこと?)


 どうしてこうなるんだろう。

 私は運があるのかないのかよくわからない。


 前世であれば泣いて喜んだと思うが………うん。

 今世はいろいろ心境が複雑なのでね………うん。


「わかりました、でも服とか、何も用意ができておりませんので次回に持ち込ーー」


「大丈夫だ、しっかりと用意してあるぞ」


 まあ、無理なわけですね。

 そんなわけでお泊まり会決定いたしました。


 ——そして


「えっと、お久しぶりです」


「あ、はい」


 現在、殿下のおうちというか自室に招かれているという状況です。


(いや、どんな状況!?)


 そんなツッコミはできるわけもなく、現在お互いが黙っているという不思議な状態が続いております。


 何を話せばいいのだろうか?


(うぅ、これは心にくるんだけど)


 気まずい沈黙ほど嫌いなものはないんだが?


 というわけで、こういうときは——


「殿下」


「はい?」


「恋話しましょ」


「はい!?」


 これしかすることがないのだよ!


「ダメ、ですか?」


「うぐっ、まあ……いいが」


「ふふふ、口調が固いですよ。もっと柔らかくしてください」


「え?う、うん。分かった」


 そうじゃないと話しづらいし、どうにか話を続けることができた。

 前世の殿下(成人済み)のときは“僕“とか使ってたのに、今は俺なんだな。


 そんなことを考えながら、どうにか話を続ける。


「で、どうでしょう?」


「な、何がだ!?」


「いやぁ好きな人ですよぉ!」


 ヴェールさんたちの時もこのはなしで場を繋いでいたのだ。

 つまり、恋話は場を話を続けさせる効果があるのです!


 うんうん、ちょい恥ずかしいかもしんないけど、頑張ってくれ殿下!

 というか、私も結構気になったてたんだよね。


 殿下ってば私のこと好きじゃなかったらしいし、誰が好きだったのかとかめっちゃ気になる!


 私?


 今はいないです………。


 強いていうなら今の殿下。


 “今“!


 ここ重要だよ!


 純粋ならまだ可愛いんだよねぇ。


 それに今も——


「いや、でもそれはもっと仲良くなってしたほうがいいというかなんというか、いましたら、あの、そのぉ〜」


 という風に焦りまくってる姿、永遠に見てられる!

 まあ、前世の件もあるし、大人に近づけば近づくほど多分私の苦手意識は増していくだろうからね。


 今のうちに愛でなければ!


 ——そこで


「お風呂の用意ができました!いつでも入れますよ〜!」


 外からメイドか誰かの声が聞こえる。

 殿下が救われたと言わんばかりの表情で分かったと返事をしている。


 ちぇ、つまんないの。


「じゃあ、殿下。寝るときにでもしましょうか?」


「げっ!」


 げってひどい。

 まあ、いいけど。


 あれ?

 私ってば案外殿下と二人きりでも平気?



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「どうぞ!お入りください!」


 やけに気合の入った声で、メイドさんたちがドアを開ける。

 専属メイドって名誉なことだから気合も入るのかな?


 なんか、感じる視線が多いような気もするが気のせいだろう。


 それはそうとして——


「な!?ベアトリス嬢もか!?」


「何を当たり前のことを言っているんですか?」


 ここってただのお風呂ですよ?

 ただのお風呂に男湯も女湯もないんですよ。


「大丈夫です!私は気にしませんので!」


「そういう問題じゃ——」


「じゃ、早く入りましょ!」


 どうせ、私の体なんて見ても得しないんで。

 逆に気分を害すかもである。


 特別な特徴があるわけでもないし、目つき悪いし。

 合計すると、私はマイナスの部類になる。


 つまり、価値なんてものはない!


「ほら、殿下も早く脱いでください」


「いや、そういうわけには……」


「大丈夫ですよ、殿下の体とか見ないように気を付けますから」


 まあ、もう一回見てしまったんですけどね!?


「分かったよ……」


「私は先に入りますね」


 早く、王宮の風呂を堪能しなくては!

 中に入ってみれば、もうそこは豪邸だった。


 下手な民家よりも広いし、基本的に白で誇張されていて、統一感がある。

 センスがあるのかはよくわからないが、とにかく綺麗だ。


「まずは体を洗わないとね!」


 私は体を拭いてから、お湯をかける。

 そして、ようやく湯船に浸かる。


「あぁ、幸せやぁ」


 身体中に染み渡る。

 これが、文化の力なり!


 癒されるわ。

 でも、確か東方には蒸した部屋があるらしい。


 そこに入ると汗をたくさん流せると聞いたことがある。

 是非とも入って見たいな。


 名前は確かサウ——


「失礼します……」


「あ、どうぞ〜」


 別に挨拶しなくてもいいのに。

 そもそも、私の方が地位的に下なんよ。


 んで、殿下も体を拭いてお風呂に入る。


 あ、もちろんタオルは巻いてるよ?


 私も。

 一応巻いとかないと、セクハラで訴えられそうなんでね。


 ——でもさぁ?


 流石にこの広いお風呂の中で反対側まで行くか、普通?


 広いお風呂の中でさぁ?

 私と正反対まで行くの?


 そこまで私って嫌われてたの?

 つまりそういうことなの?


 さらに感じた視線を辿れば、何故かメイド達が残念そうに殿下を見ているではありませんか。


 いや、何をしているのだ、あのメイドたちは。


 でもこのままじゃあかんなぁ。

 せっかく“友達“という立場になったというのに、なんの絡みもなしで私が家出するってのは、ちょっと悲しい。


 なので——!


「なんで端っこにいくんですか、殿下?」


 故に私から接近する。

 嫌われているのは知っているけど、元好きな人としてではなく、友達として仲良くなりたいのだ!


「わぁ!?こっちくん………こないで欲しいです」


「殿下、そんなに私のこと嫌いなんですか?」


「ふぇ?いや、そうとは言ってないじゃないか!」


「じゃあ、もうちょっと近づきましょうよ!」


 泳いで殿下に接近し、手をつかんで逃げられないようにする。


『きゃー!』という黄色い声援が聞こえた気がするが、絶対に気のせいだろう。


「あぅ………やっぱ無理ぃぃぃ!」


「あ!」


 お風呂ということもあって、水でスルッと私の拘束は解かれてしまった。


「あ!ちょっと待ってくださいよ殿下!」


「無理ですぅぅぅ!」


 ああ、どんだけ私は嫌われているんだろう。


 ガチ凹みしたのはいうまでもない。

これは、恋愛………と呼ぶのか?


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