スキル製作
レイ視点です
ベアトリスが行ってしまってからどれくらい経ったかはよくわからない。なぜなら、ずっと研究室にこもっていたからだ。
ベアトリスが再びいなくなってしまったのは悲しいが、その身を案じることはない。案じたところで、何も変わらないし、ベアトリスが負けてるところがあまり浮かばないからだ。
「ベアよりも強く……他人の心配ができるくらいにならなくちゃ」
私の目標はもちろんベアトリスを超えること。
そして、私は学院の特待生であり、授業は免除されている。これにより、普段は錬金術と研究に明け暮れているわけだ。
私には『解析鑑定』のスキルがないからわからないが、おそらく自分には『錬金術』のスキルがある。ここに入ってからというもの、錬金術に関してつまづくということがないからだ。
その才能を生かして私は一つのことを考えていた。
それは、錬金術で新たなスキルを生み出すこと。オリジナル魔法を生み出すだけならば、錬金術を使わなくても可能であるが、スキルに関しては話がべつだ。
どうやるつもりなのかって?
まずは材料となる、スキルの素となるものを抽出するところから始まる。スキルというのは魂に引っ付いている汚れのようなもので、要するに、魂からスキルを漂白する魔法を使って頑固汚れを落としてあげればいい。
ちなみにこれもオリジナル魔法である。まあ、スキルは簡単には取れないので、結果的にスキルの残滓のようなものが抽出でき、これを素として使用するのだ。
それが済んだら錬金台の中にスキルの素を入れ、変質させたい内容を思い浮かべ、その他の材料を入れる。今回作るのは植物系統のスキルだ。
植物系統とは言っても、どういうものができるかはわからない。植物を判別スキルができるのか、植物を操れるスキルが手に入るのか……失敗するかもしれない。
植物の種やら、草やら花を中に入れそれらをかき混ぜていく。錬金液と呼ばれる錬金台の中に入っている液体が後は勝手に仕事をしてくれる。
普通ならここでかき混ぜる速度や時間を間違えて失敗する人が多発するはずが、私は一度たりとも失敗したことはない。感覚でこのくらいだとわかるのだ。
錬金術は成功したかどうかははっきりとわからない。中身を取り出すまで。
なんとなく「できたかな?」と思ったら頃合いに取り出してみる。そして、中から取り出したものは何やら緑色のオーブ状の物体。
「できた!」
このオーブはスキルが内包されているアイテムだ。液体がスキルを包み込む役割を担ってオーブを形成してくれ、その中の緑に光る明かりがスキルの本体となる。
あとはこれを体の中に取り込むだけ。魔力を流し、スキルを覆い包んでから体の中に戻す。
すると、なんとも言えない感覚に襲われる。全能感とは少し違うが、スキルの使い方や能力の知識が頭の中に流れ込んできて、はっきりと強くなったと実感できる。
「さて、君はどんなスキルかな?」
窓を開けて、外に向かって手を伸ばす。
「『植物創造』」
瞬間地面から無数のツルが伸び始めた。その速度は尋常ではなく、通常の速度度外視で、一気に数十メートル先まで伸びていった。
そして、ツルは長くなりすぎて重さに耐えきれずに学院の方に倒れてくる。
「あ、ちょっ!」
ドゴォンとすごい音を立てて学院の屋根が破壊された音が響く。
「あ……これ、後で怒られるやつだ……」
私はせっせと証拠隠滅に勤しむのだった。