次の旅へ
なんか色々あったものの、最後にはまとまった。色々とやらかしていた大臣は行方不明扱いで、今度は別のまっとうな青年が大臣の役職に当てられた。
そして、将軍はよく城外に顔を出すようになったらしい。なんか……となりに蘭丸さんを連れて。
「マジで両想い?えぇ……こんなことある?」
都の街の人混みに紛れながら将軍たちを見ると、堂々としている将軍に対し、目がくるくると回っていそうな蘭丸さんの姿があった。
《顔も知らない人に好意を寄せている人と、ひとめぼれの天使が両思いだという確率は極めて低いです》
そりゃそうだよね、っていうか片方が天使な時点でかなりのハードルだと思うけど。
そして、将軍がよく表に顔を出すようになったと同時に、反乱軍は姿を消した。名義上は革命軍が大臣を討ったということになっている。
ちなみに反乱軍と革命軍が戦っているというシーンは、将軍が得意だという幻覚魔法でどうにかしてもらった。
革命軍の皆さんはお兄様の説得もあって、少しは気持ちを切り替えられたようだ。私は私で、色々あった。
《武器が破損しました、ですが、元々壊れかけだったのでしょうがないですね》
どうやら私の強くなった力のせいで、もうすでに壊れる限界だったらしい。新しい武器を探しに行くのもいいけど、私は結構あの大剣を気に入っているからな……。
「また、ドワーフのところに行ってみるか」
そんなことを考えていると、蘭丸さんがこちらに気づいて駆け寄ってくる。
「元気そうですね、蘭丸さん」
「はいでござる……もう何が何だかよくわからないでござるよ」
「でも、なんだか幸せそうですね」
困惑しながらも自然と笑みがこぼれている。
「えへへ、拙者は結婚なんかできないと思っていたので、とてもうれしいでござる」
「これでお兄様に結婚しろって言われなくて済みますね」
「そうでござるね、いつもいつもうるさかったでござるから!」
「お兄様の護衛はもう辞めちゃうんですか?」
「まだやめる気はないでござる。拙者は当主に尽くすと決めているので!」
話していると将軍もこちらにやってきた。
「お久しぶりです、わが友」
「……あんたいつから友達になったっけ?」
「ひどい、悲しいです。蘭丸さん、慰めてください」
「え、えぇ?」
何時も真顔だったのがどこへやら、嘘泣きがとても上手になっている。
「もう……まあいいけど。蘭丸さんを泣かせちゃダメだからね?」
「泣かせません……ベッドはきしきし悲鳴を上げるかもですが」
「ちょっと!」
蘭丸さんのほうに視線をやると、頭の上にはてなマークを浮かべていた。どうやら、意味はよく分からなかったようだ。
「二人ともお幸せにね」
「そういうあなたは、二人も恋人を連れてまたどこかへ行くのですか?」
その言葉に反応したのか、街の住民のおもちゃにされていた二人が風を切るような速度でこちらへ戻ってきた。やはり、この街でも獣人というのは珍しいものなのだそうで、みんなにモフモフされていたのだが……。
「恋人じゃないんだけどね、友達だよ」
「……あなたって罪な人間ですね。そんなセリフでいったい何人を地獄に落としてきたのですか?」
「え?私なにかおかしなこと言った?」
後ろの方で、わなわなと震える二人が見えた気がするが気のせいだろう。すぐに街の人に引っ張られてまたもふられてた。
「私にはまだまだ行かなきゃいけない場所がたくさんあるからね。あ、あと王国との貿易よろしく」
「分かっています。友の頼みともなれば私も全力で援助しましょう」
「いつも通りでいいんだけどね」
まずは、一度王国に帰って報告。もし、関係がうまくいけば同盟を結べるかもしれない……っていうか、今の将軍は何を言っても言うことを聞いてくれそうだ。
いったいどういう心境の変化があったらそうなるんだ?
《元々がこれだったのではないでしょうか?》
ん?それはどういうこと?
《あの無表情で人形のような将軍は、あくまで女神が望んだ完璧な天使の像だったのではないでしょうか?そして、こちらの感情豊かな彼女こそが本人の素なのでしょう》
なるほどね。
「王国へ帰ったら、もうこっちに来ないでござるか?」
「いいや、そんなことはないよ。でも……かなり先になるのは間違いないけど」
王国で国王に報告へ行った後、武器を直してもらい……そのあとに、別大陸へ行く必要がある。
そこに父様がいる。もうこれ以上私の身内を死なせるわけにはいかない。
父様は頭もいいし、仮にも公爵家の当主。それ相応の実力は持っている。
簡単に死ぬような人じゃあない。安心はできないけど、二年も生き延びた父様ならあと数か月くらい余裕なはずだ。
やることはまだまだたくさんあるな……いずれ全部を終えたら自由に旅がしたい。あの悪魔の少女の件も、この世界を支配する女神の件も……そして、私の耳に語り掛けてくる謎の声の正体も。
「ユーリ!レオ君!そろそろ戻ってきて!」
「「はーい!」」
元気な声で二人がひょっこりと顔を出す。いつ見ても二人は可愛い。
なんだろう、仕草の一つ一つから可愛さがにじみ出ている……気品があるとかではないけど、純粋に心惹かれる可愛さだ。
「そろそろ急がないと船が出航しちゃうよ!」
「ベアトリス、また会おう」
「ええ、将軍。蘭丸さんもバイバイ」
「はいでござるよ!」
そうして、私はユーリとレオ君を連れて日ノ本を後にするのだった。
日ノ本編ラストです!次回からは次の章に入ります。その前に閑話をはさみたいと思います!
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