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都は危険

 丸投げ作戦大成功!


 いや、作戦ではないんだけど……。


 適当に優しく大剣を振るっていただけで勝手に使い方を覚えてくれた。平助くんは応用の天才だったようだ。


 なんだか弟が出来たように感じて私は幸せな気分で平助くんを眺めていた。


 《……………変な気は起こさないでくださいね》


 ツムちゃん?私がそんなことする人に見えるとでも?


 《見えます》


 なんでぇ!?


 全く、私が平助くんをナデナデしてるからって変なことを言わないでほしいものだ。


 《その行動は誘っているのではないのですか?》


 え?誘うって何を?


 《なんでもございません》


 なんだかよくわからないけど、とりあえず裁縫スキルがすごかったということだけは本当だ。いやぁ、糸を使って防御したりとかそういうのを想像していたけど、まさか武器を取られるとは思ってもみなかった。


 力を抜きすぎていたのかあっさりと取られてしまったが悪い気分ではない。


「だったら、技名とかも考えたいね」


「技名?」


「だってそうでしょ?これはスキルの力じゃなくて、スキルを使って平助くんがやった『技』だもの」


「そ、そっか!」


 目を輝かせる平助くん。やはり、男の子ってやつだね。


 男の子はなぜ技名をつけたがるのかは永遠に分からないが、こんだけ喜んでいるのだからオッケーです。


「だったら、ベアトリスが名前を付けてよ!」


「え、私?」


「だって、僕の力を引き出してくれたのはベアトリスだから……お願い!」


 うぐっ、上目遣いに私は弱いんだ!そんなつぶらな瞳はやめてくれ!


「いいよ」


「やったー!」


 負けました。


 名前……名前を決めるときはいつも誰かに丸投げしてたから自分で考えるなんてしたことないよ!


 ユーリの名前もアレンが決めたわけだし……って、二人はそれを知ってるのか?ユーリはともかくアレンは覚えてないだろうなぁ……。


 レオ君もおそらくレイが名前を付けていた。


 そんなことはどうでもよく、技名をつけようと提案しておきながら、変な名前を出すわけにはいかない。


 よって、ツムちゃん。助けて!


 《でしたら、裁縫の技術の名前をそのまま技名に応用しては同でしょうか?》


 あ、確かに!


「今の技は『玉結び』とかかな」


「玉結び……」


「だ、ダメかな!?ダメだったら別にいいんだけど?」


「いえ、とっても気に入りました!」


 そう言って笑ってくれた。


「じゃ、じゃあ技が増えたらまた名前を付けようよ。それに裁縫の技術の技を使おう」


 玉止め・波縫い・ぐし縫い・返し縫い・たてまつり・端まつりなどなど……。


 思いつく辺りはこのくらいだけど、いかにも技名という感じがする。


「玉止めは相手を拘束する技とかどう?」


「いいですね!忍っぽいし!」


「返し縫いは背後からの攻撃とか!」


「かっこいい!」


「じゃあじゃあ、波縫いは――」


 そう話していると時間はすぐに過ぎていった。



 ♦



「今日はありがとうね、ベアトリスさん」


「いえいえ、とても楽しかったです」


 気づいたら夜になってしまったが、やる気に燃え切っているようで庭の方で自主練をしているようだ。


「なんだかすごいことをしてたみたいだけど……あんなに楽しそうなのは久しぶりよ」


「そうですか」


「ほんとありがとうね。あの子、自分が凡庸だったことがコンプレックスだったのよ」


 凡庸?


「私から言わせれば全然凡庸なんかじゃないんだけどねぇ……」


「同感です。きっといい忍になるはずですよ」


 服部長老の孫だけあって、才能はかなりあった気がする。まあ、私はなんにもしてないんですけどね!


「今日は泊っていくのかしら?」


「今日は……」


 今日は泊って行こうか……と思っていたけど。


 探知のスキルを起動する。


 忍の里の近く、そこで野営の準備をしているお兄様たちを感知した。あの様子だと明日出発の予定なんだろうなぁ。


「泊っていってもいいですか?」


「もちろんよ!子供たちも喜ぶだろうしね。平助は特にね♡」


「あんまりからかうと怒られちゃいますよ?」


「んもう、そんなこと言わないで?ベアトリスさんが久しぶりに顔を出したと思ったら化粧していてあまりにも可愛かったんでしょうね」


「あ……」


 そういえばバリバリ化粧していたんだった!だから、たまに挙動不審だったの?


「うふふ、とっても可愛いわ」


「そ、そうですか?」


「ええとても。しかも、化粧崩れが一切していないところを見るに……相当な腕なのか、そういう効能があるパウダーを使っているのか」


 おそらくどちらもだと思います。ライ様のお化粧道具を借りたから、たぶんそういう効能がある高級な化粧だったのだろう。ミサリーも腕いいし。


「どこか行く予定なのかしら?」


「はい、ちょうど都に行く予定があるんです」


「都ねぇ」


 突如表情が暗くなる。


「どうしたんですか?」


「いえねぇ……私たち忍は都に近づけないのよ」


「近づけない?」


「私たち忍が将軍様の住まう城と別邸に侵入しようとしても必ずバレてしまうの。だから、忍は誰も近づきたくない場所なのよ?」


「へぇ……」


「ベアトリスさんも忍なんだから任務なんだろうけど、気を付けてね?最悪殺されるわよ?」


「へ!?」


 そうだった!私、忍って設定だった!


「あ、はい、気を付けます!」


「また元気で遊びに来てね。今日はもう遅いわ、お布団用意してくるわね」

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