心配性
「そうすれば万事解決です!」
「万事ではないだろ!?お前はいろいろと強引だな……」
「なにも聞こえませーん。細かいところは自分で何とかしてくださーい」
私よりも頭いいんだからそれぐらいいでしょ。
「それより、蘭丸さんは大丈夫なんですか?」
何よりも一番大事なのは蘭丸さんの状態。思い悩みすぎて病んでしまっていたらどうしようとか思う。
「今はそっとしておけ、そのうち落ち着くはずだ」
「それほんとですか?」
「ほんとだ、だからほっておけ」
「うーん……」
「なんだ?」
じっと顔を見つめる。何も考えてなさそうなぼんやりとした顔をしているのに、この頭の中に領主できる頭脳が入っている……
「信じられないなぁ」
「信じてもらわなくてもいい、結果が出ればいいだけだ」
「わかりました、それとお兄様もお体がよろしくなかったらすぐに休んでくださいね、今日みたいに」
「居眠りをしたのは何年ぶりか……」
ホントに寝てください!頼むからしばらくの間は予定をあけておいてくれ
……。
「お兄様は今後の予定はありますか?」
「今後?そういえば、今さっき予定が入ったところだ」
「え?」
「私が起きて、お前が寝ていた間に伝書鳩が飛んできた」
なんとも古風な方法だな。
「それでなんと?」
「領主全員に召集がかかった。よって、数日後にはここをたつ」
「はい?」
「珍しいこともあったものだな」
そんな淡白な反応でいいのか?というより、なんともタイムリーに伝書鳩で招集されたものだな……もしかしてこれ私のせい?
《可能性はありますね》
やっぱりダミー書類を全部丸ごとかっさらってしまったのがよくなかった……だから将軍は各地の領主を集めることにしたのだろう。
私のせいではあるのは確かだ。
《肯定します》
しないで?少しは主をフォローしよう?
「はぁ……またお金がかかるのか」
「やはり兵士を引き連れていかなければいけないんですか?」
「ああ、これでも一応領主だからな。舐められるわけにはいかないし、仕方ない出費ではあるのだが」
「そうですか……数日後なら私も何か準備した方がいいですかね?」
「え?」
「え?」
何かおかしいこと言った?
「来るつもりなのか?」
「え?言ってもいいでしょ」
「ダメだろうそれは」
「無理にでもついていきます」
「どうやってついてくるつもりなんだ!」
「兵士に化けます」
足は気合で治す。
《数日後までに回復したいのならば魔力の使用はできるだけ控えておくべきです》
そうはいっても、まだ行きたいところもあるからな。それは今日中に回ることにしよう。
「もう私は止めないぞ……これは私の管轄ではないからな」
「はい!勝手に参加するのでお気になさらず!」
――一通り話したいことも話した私は、その場を後にするのだった。
♦
「さて、次はどこに行こうかな?」
霊峰に行こうかな。
「そういえば、八光の仙人と八呪の仙人はあの後どうなったの?」
結局なんだかはぐらかされたような感じで終わっていた気がする。
《八光の仙人は現在昏倒状態にあり、八呪の仙人に関しては気配が希薄ではっきりとは把握できませんでした》
ツムちゃんでも把握できないってやっぱ何かあったでしょ……っていうか、昏倒状態なんだ。
死んでしまったのかと思ったけど、どうにか一命はとりとめたのか、よかった……。
「でも、顔も出さないでいったい何があったの?」
《データに残っている情報を再度繰り返して読み上げます》
データ?もしかして私が死んで間に何かメッセージが流れてたのかな?
《スキル『世界の言葉』が八呪の仙人へと譲渡されました。これにより、ステータスの大幅な上昇と、スキルの強化が見込まれます。なお、譲渡した場合、権限レベルは1からのスタートとなります》
「え?」
《もう一度読み上げますか?》
「いや、それはいい」
スキルの譲渡?しかも、『世界の言葉』が八呪の仙人に渡ったと?
「それはつまり、八呪の仙人も『選抜者』になったと?」
《肯定します》
「それは……喜ばしいこと、なのかな?」
選抜者が少ないことでマレスティーナは悩んでいたらしいから、喜ぶべきことなのだろう。なんなら、あのくそ女神に対抗する戦力が増えたと考えるだけプラスか。
あんな強引な女神に喧嘩売ったのは後悔していない。あんなムカつく喋り方されたら誰だった反撃したくなるでしょう?
《肯定します。私も、殴りたくなる衝動を抑えるのが精いっぱいで口を開くことが出来ませんでした》
「あ、だから無言だったの?」
天国までついてくるツムちゃん、口はないけれどよく耐えたもんだ。
「八呪の仙人は落ち込んでるのかな。お友達が昏睡しちゃってるらしいし」
やっぱり会いに行くべきだ。
「よし、早速向かおう。私は心配性なもんでね!」
《否定します》
そうして、私は霊峰の頂上へ向けて転移する。