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幻花

本日二本目です

 屋敷には昨日と違い、ちゃんと警備の人がいた。その理由は警備にあたっている武士たちに話しかけている青年……というよりも少年のお陰であろう。


「蘭丸さん!」


「ベアトリス殿?どうしたでござるか?」


 武士の中で一際小さい体つきなので後ろからでもすぐにわかる。そういえばこの人武士団のトップなんだった。


「ちょっとコウメイ様に用事があって……今屋敷にいる?」


「今は屋敷にはいないでござるよ」


「あれ?そうなのかぁ……」


「何かあったんでござるか?」


 雑学的な知識を多く持っていそうというイメージがあるのは、ミハエルとお兄様だ。少なくとも私の中では。だが、ミハエルはあくまでも服屋だからな……記憶を消す『何か』の知識はないだろう。


 ということで、お兄様の元まできたわけだが、


「たいした用事ではないけど……コウメイ様は今どこに?」


「警備の報告だと街入り口付近に行っているらしいでござる」


「そう、ありがとう!」


 そう言って歩き出そうとした時、不意に呼び止められた。


「ベアトリス殿」


「ん?はい、なんですか?」


「あの化け物はなんでござるか?」


 いきなりそんなことを言われてなんのことだと頭の上に疑問符を浮かべていると、


「レオ殿たちのことでござるよ!」


「レオ君たち?が、どうして化け物なの?」


「あの人たち強すぎるでしょう!?何があったらあんな腕力と剣術が身につくでござるか!」


 腕力ユーリと剣術(レオ君)の身につけ方なんてむしろ私が聞きたいよ。


「それに、昨日知ったでござるが、ベアトリス殿がSランク冒険者というのは本当でござるか?」


「そうだけど?」


「なんでそんなに当たり前みたいな顔ができるんでござるか?世界で10人もいないんでござるよ?もっと自慢するなりなんなりあるでござろう!?」


「そう言われましてもぉー」


 別に今となっては肩書きなんてどうでもいいからね……。


「まあまあいいじゃないですか!Sランク冒険者だろうとなかろうと私はベアトリスなので」


「それはそうでござるが……」


「あっちなみにミサリーもSランク冒険者よ?」


「は?」


 私は一つ爆弾発言を残して、さっさと逃げ去るのだった。



 ♦️



 街中はそこそこに綺麗になったおり、ガタガタだった地面もそれなりには元通りになりつつあった。そして、街の出入り口まで着いたところで黒髪長髪の男の人がいた。


 髪を染めたお兄様だ。


「コウメイ様」


 名前を呼ぶと、くるっと後ろを向くお兄様。


「ここで何をしていたんですか?」


「……別に、何も」


「それならよかった!実はコウメイ様にやってほしいことがあるんです!」


「なんだ?」


「記憶を消すアイテムについて何かご存知ないですか?」


 記憶を消すアイテムと聞いて少し考え込む様子を見せた後、顔を上げたお兄様はおもむろに答えた。


「ある」


「どういうのですか?」


「仙草という草が何百年かに一度花を咲かせるそうだ。その花を幻花と呼び、それには望んだことが一度だけ叶うと言われている」


 え、何その運ゲー?


「えっと、他にまともなものは……」


「知らん」


 終わった……。


「そういえば、周期的にだけいえば幻花が咲くのはそろそろだな」


「それ本当ですか!?」


「ああ」


「ちなみに何処で咲くとか知ってたりは……」


「知らん」


 あっはい。


 まあいい、ひとまず幻花が見つかればもしかしたら……仙草ということは仙人である八呪の仙人も知っているはずだ。場所くらいは知っているかもしれない。


「それじゃお気をつけて。失礼します!」


 私は忙しなくその場を後にした。



 ♦️



 妹のいきなりの突撃はかなり驚いた。唐突のなさはまるで母親そっくりである。


「記憶の改変には驚いたがな」


 そして、バカさ加減も母親にそっくりな妹。わざわざ街の入り口まで何かをする用事もなく向かうと本気で思っていたのだろうか?


 予定ならちゃんとある。


 路地に入り込み、指定された場所まで向かった。


「面白い話を聞けたね」


 そこには見慣れた男がいた。


「記憶を消す花なんて探して、一体どうする気だろうねぇ?現実逃避のためかな?」


 と言って爆笑している男を見る。歪んだ笑顔は、まるで人間のものではない。


「まあいいさ、あの二人の……八呪の仙人の弱みは既に把握した。あとは計画を進めるだけだよ」


「反乱軍を入れるのか?」


「大乱戦になった方が、死人がたくさん出るだろう?」


「ふん」


「君を洗脳できたのは運がよかった。身体能力も頭脳も人間にしては申し分ない。使い道が多いのはちゃんと大事にしないとね」


 そう言って、頭に手をかざしてきた。そして、何かが流れ込んでくる感覚が脳を駆け巡る。


「洗脳は欠かさずに♪」


「……………」


「よし、これで完璧だね。私の友人がこれを見ていたら一体どうしてるんだろうねぇ?ま、もうすぐ私の手で殺すから関係ないんだけどね」


 そう言って、男は消え去った。


「ああ……」


 何してたんだっけ?


「まあいいか」


 今日はまだまだ仕事がたくさんある。警備面の見直しや街の復興も残っている。


「早く帰らなければ」


 そうして路地裏から出るのだった。

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