依頼完了
私は操られているらしい。
「どういうこと?」
《正確には操られていた、です》
操られていた?じゃあ、今は操られていないってことね。
「ひとまずは安心だけど……誰に操られていたの?」
《それは、私にはわかりません》
「ええ……?」
《私はあくまで言葉を用いて、スキル保持者を補助するのが役割です。なので、スキル保持者の状態を報告はできます。そして誰に操られているかなどの間接的なものの把握もできますが、権限レベル1ではそれを伝えることはできません》
「嘘でしょ?」
私が操られているという情報だけ伝えられても恐怖しか伝わってこないよ?せめて誰に操られているかがわからないと、不安で不安で仕方ないんだけど?
《大丈夫です、個体名ベアトリスは鈍感であるため、気がつきません》
「うっさいわ!」
何で私はスキルに馬鹿にされなくちゃいけないの?
「あーもう何だか馬鹿馬鹿しくなってきた」
ひとまず街に戻ろう。スキルの確認も終わったことだしね。
♦️
「ただいまー……ってどうしたの?」
冒険者組合に足を運んでみると、そこにはきれいに修復されている冒険者組合があった。
「あ、ベアトリス!こっち来て!」
「何があったのレオ君?」
「冒険者組合をみんなで建て直してみたんだ」
「なぜ!?」
私がいなかった短時間でなんて大作業をしているんだ……まあ建て直したと言っても、新品同然というわけではなく、しっかりと使い古された感は残っている。何なら木材が燃えた後なんかは消えていないから、少し汚れて見えるが。
「冒険者組合の人はいないんでしょ?建て直しても意味ないんじゃ……」
「それが、いたんだよね」
「え、いたの?」
入口の方で話していたからまだ奥を見れていなかったが、カウンターの方に目をやれば、冒険者組合の受付さんと同じ格好をした女性が立っている。
「逃げ遅れた人が、冒険者組合の残骸に下敷きになっていたから、ついでに建て直したんだ」
「そういうことね」
受付の人に声をかけると、とても感謝したように何度もありがとうと言っていた。別に私は助けてないのだけど……。
そして、ミハエルとの護衛の任務ここで終わりを迎える。
「護衛、ここまででいいの?」
「大丈夫、こっからは一人でどうにかする」
「各地で戦が起きてるけど、大丈夫そ?」
「……」
ダメなんかい。
「護衛の依頼はここで終わりだけど、いつでも頼っていいから」
「ありがとう。ひとまずはこの街に留まるつもりだから」
ということで、護衛依頼はここにて終了。今は、渡せる報酬がないらしく、報酬は少し待つことになった。
そりゃあそうだ。こんなに街中ボロボロなのに、お金類が無事であるはずないよね。
幸いにも住民の一部は怪我もなく無事でいるため、街の復興は問題ないとのこと。そして、受付がこんなことをいった。
「どなたか、手の空いている冒険者の知り合いはいませんか?」
「ごめんなさい、最近冒険者になったばかりなの」
そういうと、少し残念そうな顔をしていた。
「冒険者方にこの街を守っていただきたいなと思って……」
「私たちだけじゃ不安かしら?」
「そうじゃないです!ですが、聞いた話によると、あなたたちはこの街には留まらないんですよね?」
「まあ、そうなるね」
この街の防衛戦力はないに等しい。冒険者を呼んでここを守って貰うのが確かに一番確実かもしれない。
「でも、しばらくは反乱軍はこの街にはこないと思うよ?」
「そうなんですか?」
今まで快進撃を繰り返していた反乱軍だったが、今回の戦いに限って言えば、大敗北を喫した。さらに言えば、ほとんどが全滅という今までの快進撃が嘘のような負け方をしたのだ。
あちらも出方を考えてくるだろう。そうだよね?
《肯定します。反乱軍の戦力は既に、今までの進撃で疲弊しています。士気は低下しており、再び軍を送り出すのは愚策です》
こういう時に使うのが正解なのか、このスキルは。
「反乱軍がしばらく動かないのであれば、私たちもこの街に留まることにはなると思うよ」
「それは本当ですか!?」
「え?ああ、うん」
面白いほどにびっくりしている受付。
「というわけで、もう少し一緒にいようかミハエルさん」
「わかりました」
後でこの街には結界を張っておこう。マレスティーナのような攻撃無効系の結界は張れないが、それでもないよりはマシだろう。
「よし、とりあえずやることは決まったかな?」
反乱軍の動きは止まるだろうから、その間にどうにかこうにか戦争を止める方法を模索しなくちゃ。
「ベアトリス様、お客さんがお見えです」
いきなり受付の声が聞こえて、振り向いてみるとそこには先ほども見たライ様も蘭丸さんの姿があった。
「義妹殿、今お時間よろしくて?」
「どうしたんですか?」
ライ様と蘭丸さんの姿はあるが、お兄様の姿は見えない。まだ、用事中かな?まあ、会っても気まずくなりそうだし、今は会わなくてもいいかな……。
「少しお願いしたいことがあるのですが……」
「お願いですか?私にできることなら何でもいいですよ!」
私の返事に少し安心した顔をして、ライ様は言った。
「旦那様と仲良くなってほしいのです!」