知名度
本日二本目です。
その後、ユーリや私も気に入る装備を選ぶと、普段着と装備を購入する。
「合計金額金貨10枚になります」
金額的には決して安くないのは分かっている。だが、補助魔法込みでこの値段となると話が別だ。
私の金銭感覚がおかしいという線も捨てきれないが、とにかく手持ちの金額以内に抑えられてよかった。
「着たまま帰られますか?」
「はい、じゃあお願いします」
装備と着ていた服はバックのようなものに入れてもらい、お金を渡す。
「ありがとうございました」
店を出ると、再び狭い路地に戻ってきた。本当にどうしてこんなところに店を開いたのか……。
だが、気にしてもしょうがないし買い物もできたからいっか!
「二人も冒険者登録するんだよね?」
「うん、僕らも飛び級とかできないかな?」
私がAランク冒険者に飛び級したことを知っている二人。私は、Sランク冒険者に推薦してもらえているからあれだが、二人はどうだろうか?
「Sランクと言えば、ミサリーさんはどこ行ったの?」
「ミサリー?」
ああ、確かに別行動してたな。
「ミサリーはちょっと引き継ぎ作業でまだこっちに来てないわよ?」
「ああ、だから最初からいなかったの?」
ミサリーは一応公爵領にいた最後の人間だったので、ミサリーがそこを離れてしまうと公爵領を領地として成り立たせてくれる人がいなくなってしまう。
つまるところ領主的な役割を担ってくれる人がいなくなってしまうのだ。そんな中抜擢されたのが、ターニャが従えている鬼人の皆さん。その中から代表を引き抜いて、領主代わりになってもらおうという魂胆である。
まあ、そのせいで、ミサリーは引き継ぎに追われてまだこっちまで来ていないようだが……。
そして、今気づいたがミサリーが私の指名依頼の数を確認するために「隣街で走ってみてきました!」と言っていたのはこの街のことだろうか?
確かに冒険者が多かったから、ありえる。しかも、ここ以外にまともな隣街と呼べるものはない。
うん、ってことはすれ違う心配もなさそうだ。
「というわけで、私たちは冒険者登録に行きますか!」
♦
冒険者登録をするために、街の中心部まで戻ってきた。店があった場所はどうやら街の端のほうだったようで、少し距離があった。
「冒険者登録に来ました」
組合の中に入りそう宣言すると、明らかに異質なものを見るかのごとき目がこちらを向いていた。
「あの……冒険者登録は遊びではございません。依頼でしたら承ります」
分かっていたことではあるが、やはり私たちの背は低いようである。二年間の成長ストップはかなりの痛手だった……前世は身長高かったのに……。
「それは分かっていますけど、お願いします!」
困り果ててしまった受付。だが、ここまではよくあるパターンの回答だったからか、困りながらも「上の人間を呼んできます」と奥に入っていった。
「この方たちです」
そう受付が案内してきたのは、若い誠実そうな男だった。
「初めまして、この組合のサブギルドマスターをしているライヘルです」
そこまでの自己紹介はよかったのだが、その優男……もといライヘルがかがんで話してきたのはどうにも引っかかった。
「えっと、親御さんはいるかな?親御さんにも許可はとったかな?ちょっと、一緒に確認しようか?」
明らかに子ども扱いじゃないか!まあ、子供だけど……でも登録できないと困るんですよね。
ユーリとレオ君。この二人は魔族の国にも獣人の国にも戸籍がないのである。なぜなら、レオ君は山で育てられ、ユーリはおそらく死んだものとして魔族の国ではされていると思われるからである。
だから、なるはやで戸籍替わりになるものが欲しいのだ。
「じゃあ、これでどうですか?」
そういって、私が取り出したのは『Aランク冒険者』と刻み込まれている一枚のカード。そのカードを受け取ったライヘルの表情は一気に驚いたものへと変わった。
「Aランク冒険者?そしてこの名前……あの噂は本当だったのか……」
「どういうことですかサブマス?」
「二つ名持ちの英雄が冒険者になったという噂だ」
「それとこの子たちにどんな関係が?」
「この子がその二つ名持ちだよ」
そう言われて受付は声も出ない程に驚愕していた。
「ってことは、あの『塵殺』?」
「すみません、せめて『神童』のほうにしてくれませんか?」
人聞きが悪いことこの上ない……。
「そうだったんですね、失礼いたしました。こちらの者たちとはどういったご関係で?」
後ろにいる二人に視線を向けるライヘル。
「うーん、仲間ですかね」
「それはいつからの……」
「もう何年も前からです!」
「おお!ということは二年前に共に戦われていた獣人というのがこの方たちなんですね!」
それは一体どこ情報なのだろう?
そして、後ろからはなんだかため息が聞こえてくる。なに?何かおかしいことを言っただろうか?
「わかりました。Aランク冒険者様、そして二つ名持ちの方の推薦とあらば、特別待遇も許されましょう」
そう言ってすっと立ち上がると、
「そうですね……ベアトリス様がAランクなので、Bランクからでどうでしょうか?」
「Aランクじゃダメなの?」
「流石に、それは難しいですね」
なら仕方がないだろう。二人のほうを見ると、二人とも頷いていたので私はそれでいいと返答する。
「かしこまりました、手続きがございますのでこちらにお越しください」
「わかりました――」
そのすぐ後、その場にいた全員が驚愕するような事態が発生するとは、まだだれも思っていなかった。
夏休み毎日投稿計画ということで、もうすぐ夏休みシーズン!
毎日投稿絶対!できれば二、三本は出したいですね。
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