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ベアトリス、譲渡される

教師編終了

「お嬢様、どうやらお嬢様に指名依頼がたくさん届いているそうですよ?」


「え、なんでわかるの?」


「隣街で走ってみてきました!」


 やばい、うちのメイドは絶対にバカだ……。


「私と転移すればよかったのに」


「あ」


 どうやら冒険者組合の方で、私を指名する依頼が多くあるらしい。高ランクの冒険者がもらえるという指名依頼だが、Aランクも高ランクに入るのか。


 受けたいのは山々だし、お金も欲しいのだが、今は受けるつもりはない。私はただ、冒険者という肩書きが欲しかっただけなのでね!


 まあ、東の島国に向かう途中でできるやつは全部やろうかな……どうせそんなにないだろうし。


「ちなみに、100件以上来ているそうです」


「は?」


 一桁だと思っていたんだけど?


「お嬢様、東の島国まで、私もお供してよろしいですか?」


 一応緊急指令的な任務なわけだけど、ミサリーを連れてっても危険はないだろうか?「近い将来、君の仲間、もしくは君自身が死ぬこととなる」と言われてしまったので、不安で仕方ない。


 だけど、逆に考えればそっちの方が安全か?申し訳ないが、ミサリーは私やユーリ、レオ君も含んだ中で一番弱いだろう。


 だから、私たち全員が集まっていた方がミサリーを守ることができるのでは?別にあの魔術師の女性も選択を間違えなければ大丈夫って言っていたし。


「いいよ、ついてきても」


「あ、ありがとうございます!」


 パッと表情が明るくなり、分かりやすいくらい喜んでいるのがわかる。


「お嬢様、今日出発するのですか?」


 大剣の改良依頼をしてから次の日になり、今日は月曜。出発は後一時間後くらいだろうか?


「最後になる授業なのに、生徒の相手全然してないなー」


「いいじゃないですか、別にこれから会えなくなるわけじゃないんですから。それに……プレゼントも用意してあるらしいですからね」


 昨日ポロッとナナが口を滑らせていた。プレゼントか、一体何をくれるのだろう?


 何か、記念になるものを渡してくれる?それとも花束?


「楽しみだね」


 そう思いながら、私はベッドから起き上がった。扉を開ければ、ボロボロになって解放感が増した廊下が広がっていた。


 階段を伝って降りていけば、血痕が残っている地帯までやってきた。少し、いやかなり吐き気がしてきたが、なんとか乗り切った。


 その奥に、ユーリとレオ君が待っていてくれたからだ。二年前ここで戦った時は、全員死にかけていた。特にユーリは私が魔力を注ぎ込まなかったらそのまま死んでいたのではと思う程だった。


 それがこうして立っている。


「ご主人様!みんな外で待ってるよ!」


「すぐそこで?」


「うん!]


 階段を降りきり、血痕にはもう目もくれず扉へ小走り。扉を押してひらけば外には二十人ばかりの生徒と、数名の鬼人の代表の皆さん。


 殿下……ラウルの顔やアネット、レイ、アレン、シルなど違うクラスの生徒も来ている。


「先生、今日行かれるんですか?」


「うん、今日行くよ」


 昨日と同じように、代表としてナナが話しかけてくる。


「先生にいろいろ教わって、私たちに足りないものがたくさんあるって気づきました。もう教師としては会えないかもしれないけど、また今度遊びに来てください」


「もちろんだよ!」


 すると、横からヤンキーが顔を出し、


「へっ次からは呼び捨てで呼んでもいいんだな!」


「もともとあんたは呼び捨てにしてたじゃん!」


 とナナからゲンコツを食らっている。少し場の空気が和らいだのを感じた。あれ、もしかしてヤンキーって空気も読める?


 ……いや、たまたまか。


「それで、先生……私たちは素材とかあげられるものはありません。理事長がもうすごいたくさんあげてたし」


「うん」


「かといって、お花をあげるわけでもないです」


「ん?」


 お花ちゃうんか?


「先生が一番喜びそうなものは何かなって考えた時に、みんな満場一致で『力』だという結論になりました」


「どういうこと!?」


 何?私ってもしかしてバーサーカーに見えてる?力が欲しいってまあ欲しいけど、そこまで貪欲じゃないし、それに力はあげられるものじゃないでしょうが!


「それで、私たちで考えてベアトリス先生により強くなっていただく方法を思いついたんです!」


「マジで!?」


「クラさんのスキルを使って、私たちのスキルを渡します」


「ヒェええ!?」


 クラさんいいの!?っていうか、みんな躊躇なさ過ぎでしょ!?


「スキルはコピーアンドペーストで渡せるので、私たちのスキルがなくなることはありません。それに、渡すのは先生と訓練したおかげで手に入れたスキルだけですよ」


「いや、それでも大盤振る舞いがすごいんですけど……」


「リョウヘイ君は解析鑑定ができるんですが、ついこの間スキルレベルが上がりまして……先生のスキル欄だけは鑑定できるようになったそうです」


 え、まじで?


「それで、スキルをみてもらったところ、なんとゼロだったではありませんか!」


 え、まじで?(二回目)


 そんなはずはないと思うんだけどな……。


「先生に鍛えていただいたおかげで手に入れたスキルを先生が持っていないなんておかしい!っていうことで、みんなで先生にスキルをプレゼントすることにしました」


「お、おう……」


 スキルをプレゼントされたことなんてないから、どう返答すればいいのだろうか?


「受け取ってくれますか?」


「も、もちろん受け取る。ありがとう、みんな。クラさんもお願いしていいかな?」


「は、はい」


 事前にクラさんの元には生徒全員のスキルのコピーが出来上がっているのか、それはすぐに終わった。


「『完全譲渡』」


 ん?完全?


 私の体の中に光る粒子の粉のようなものが纏わり付き、それらが体の中に吸収されていく。


 何が起こったかといえば、今の粒子がきっとスキルなのだろう。


 実体化したスキルは粒子の粉なのか……初耳である。


「完全譲渡、しました」


「譲渡とは何が違うの?」


「完全譲渡は、私が譲渡したことを取り消しできません。それと、私が死んだとしても渡されたスキルは消えないです」


「ええええ!?」


 本当にもらっていいのか不思議に思ってしまうくらい不思議なんだが?


「「「先生、今までありがとうございました!」」」


 ……スキルのことは後にしよう。今はこっちが優先だね。


「最後にみんなで記念撮影しよう」


「いいじゃん、やろう!」


 いい生徒に恵まれた教師人生だったな。

次回から新たな章に入ります!


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