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ベアトリス、一家団欒する

サブタイトルは団欒だんらんと読みます。

間違っていたら、すみません……。


加筆修正しました。

「お嬢様ー!お待ちくださーい!」


「や〜だ〜!」


 私は廊下を全力で走っていた。

 初めて図書室に入って約数週間。


 私の魔法の技術がかなり進歩した。

 特に得意な魔法があるというわけではないが、一定の水準での使用が可能となったのだ。


 それもこれも、毎日のトレーニングのおかげである。

 どんなトレーニングをしたかと言えばーー


「お嬢様!魔力を放出し続けるのはお止めください!」


「や〜だ〜!」


 魔法をずっと辺りに放出し続けるというものだった。

 これをすることによって、魔力容量や、循環速度がだいぶ向上するのだ!


 故に私は魔法が使えるようになったのだ!

 だからこんなこともーー


「ひょい!」


「えあ?魔法でございますか!?」


 私は魔法を使って、思いっきり飛び上がる。

 そして、メイドさんから逃れる。


 いや〜魔法っていいもんですな〜。

 実際に魔法が使えるようになったら、めっちゃ楽しい!


 あの時から練習してよかったわ〜!


 ただし、相当な負荷が私の体にかかる。

 正直に言えば、何度も何度も体調を崩した。


 もう、私死んでしまうのではっていうくらいに……。

 あ、ちなみに腕の骨も折れかけたことあるのよ?


 魔力だしっぱで筋トレをしようとしたんだけど、思った以上に体に負担がかかっていたらしく、ぽっきりとね。


 それからというもの、メイドさんも私の魔法の使用に対してかなり敏感になってしまった。


 だからこうして今も、


「お嬢様!もう逃げられませんよ!」


「え?」


 周囲にはかべ。

 目の前に佇むのはメイドさん。


「さあ、こんな狭い場所では魔法なんて使えませんよね!観念してください!」


 メイドさんはそう言い放ち、私をつかもうとしてくる。

 だが、甘い!


 私は、上に飛び跳ねてそれを避ける。


「あれ?」


「あっはは!よゆうだよ!」


 私が魔法の修行をしただけと思ってたのか?

 いや、私はしっかりと体も鍛えていたのだよ!


 ちゃんと筋トレをしていたのだ!

 前世で知った、騎士の訓練内容を実践していたのだ。


 もちろん外遊びの時間と、寝る前とか誰もいない、またはしていても怒られないような時間帯でやっていたもんだから、そこまでは鍛えられてはいない。


 せいぜい、自分の身長以上に飛び上がれたりする程度だ。

 だけど、それでも前世の私よりも運動神経は高いだろう。


(飛び跳ねたことすらほとんどなかったからな〜)


 唯一飛び跳ねたのは殿下との婚約が決まった時くらいだろう。

 まあ、最後の最後に振られたんだけどね!


 大丈夫。

 私はまだ泣かないぞ!


「お、お嬢様ぁ〜」


 急に後ろを振り返ったからか、メイドさんがこけていた。

 流石に心配になり、私は駆け寄っていく。


「だいじょぶ?」


「ハァ〜い………それはそうとして」


 私の横腹が掴まれる。


「捕まえました!」


「っは!?」


 罠だった!?


 そのまま、私を抱えたままメイドさんが立ち上がる。


「いいですか?いくら、魔法が得意だからって、魔力を出しっぱなしにしたり、魔法をむやみに使っちゃダメなんですよ?危ないですからね」


「はぁ〜い」


「わかればいいんです!」


 しょんぼりとしていることを見越したのか、メイドさんが話題を変える。


「そういえば、先ほど旦那様がお帰りになられたそうですが〜」


「!?」


「行きますか?」


「いく!」


「了解です!」


 私はお父様の元へ抱きかかえられたまんま向かうのだった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



 公爵家、私の家に久しく帰ってきた。

 私を出迎えてくれたのは三人だった。


「おかえり、あなた」


「ああ、ただいま」


 思わず、言葉を返す。


「おかえり」と言葉を放った人物は、私の愛する妻だった。

 名前を()()()という。


 どうだ?

 可愛い名前だろう?


「おかえりなさいませ、旦那様!」


「あぁ」


 やけに元気な彼女。

 メイドのミサリーだったかな?


 彼女は、古くから………まあ、祖父母の代から我が公爵家に仕えてきてくれたメイドの一人である。


 当たり前だが、彼女も我が家の一員だ。

 いつも支えてくれている使用人もまた家族ということだ。


 そして、もう一人の可愛らしい声がする。


「おかえり!とうちゃ……さま!」


 笑顔で私を出迎えてくれたのは最愛の娘だった。


(やはりベアトリスは今日も可愛いな〜)


 何気に親バカだとは自分では思うが、うちの子まじ天使!

 いや、ほんとに!


「ちゃま」と噛んだ後に「さま」と言い直すところとか本当に愛らしい。

 でもそれを言葉に出すわけにはいかない。


 私は一家の主人。

 そんな甘々なところを見せるわけにはいかなかった。


 いつまでも、威厳たっぷりで息子たちも尊敬されるような父であるためだ。


「うむ。今日はなにをしたんだ、ベア?」


 ベアという愛称は彼女にとっての二番目の兄によってつけられた愛称である。

 我が息子もなかなかセンスがあるな!


「えっとね!きょうはおにごっこちた!」


「そうかそうか、楽しかったかね?」


「うん!」


 純粋な笑顔を向けられ少し安心する。

 どんなに疲れる仕事の後でも癒してくれるベアの笑顔にはいつも助けられている。


「今日の夜ご飯はなんだね?」


「今日は、ベアが好きなシチューよ」


「それは………よかったな、ベア!」


「うん、よかった!」


 その笑顔にその場にいた三人が微笑ましくその様子を眺めていた。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



(はぁ〜!緊張した〜!)


 父様との挨拶を終えた私は自分の部屋に戻ってきていた。


(父様、昔とだいぶ変わってたな〜)


 昔というのはもちろん前世のことである。


(なんかこう、甘くなった?)


 昔は気性が荒れていて、よく物に当たるような人だった。

 とは言っても、私に対してだけはデレデレだったけどね!


 私が我儘言うせいで、使用人たちに冷たく当たられてたのかな。

 

 はっ!(閃き)

 

 だから私は使用人たちに高確率で無視されてたのか!

 

 おそらく、私は過ごしてきた三年間で、何か、前世とは違ったことをしてきたことが原因だと思われる。


(結果オーライだから、いいんだけど……)


 これは、未来を私が変えることができるということを指している。

 つまりは、良い方向にも悪い方向にも進んでいく可能性がある……。


(いや、今のまんまの性格でいられれば、きっといい方向に進むとは思うけどな〜)


 やはり怖いのだ。

 死ぬことよりも裏切られることの方が、友達ができないことが怖すぎる!


 だからこそ、今のうちから家族とは仲良くしおこうというわけだ。

 もちろん本心も仲良くしたいとは思っているのだが、まだ、あまり関われていない兄様たちがいるのだ。


 ゆくゆくはその兄様たちとも関わっていけたらなって思っているところだ。


「失礼します」


 メイドさんの声が廊下からする。

 ノックされたのちに、部屋に入ってくる。


「もうすぐ、お食事のお時間です」


「わかった!」


 私は布団から降りて、お腹が鳴っていることに気づく。


(よ〜し!ご飯だ〜!)


 今日のメニューを知っているため、楽しみにしながら向かうのだった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「今日のシチューは一段と美味しいな!」


「あら〜嬉しいわ。まあ、ほとんど料理人さんたちがやってくれたんですけどね……」


 と、母様が微笑を浮かばせる。


「ふふふ。そんなことないさ。君だって手伝ってたんだろ?」


「そう言っていただけたら嬉しいわ。ベアはどう?美味しい?」


「うん!おいしいよ!」


 私の好きなシチュー!

 私は前世から母様が作るシチューが好きだったのだ。


「そう、よかったわ」


「あ、そうだ。ヘレナ。うちで働いているメイドたち従者たちはもう食事は済ませてあるのか?」


「いいえ、まだよ?なぜかいつも遠慮して先に食べようとしないのよ」


 それが普通なんだよな〜。

 この二人は見ての通りものすごく優しい。


 従者が先に食べるなんて聞いたことない。

 強いていうなら、毒味のためぐらいだろう。


「だったら、わたしがりょうりもってく!」


「え?ベアが?」


 子供がしたら、危ないとか言われそうだけど、この二人はーー


「いいぞ?ただし、気をつけて運ぶんだぞ?」


「うん!」


 優しすぎるが故に断れない性格をしているのだ。

 だから、前世の時はかなり荒れていたのだろう。


「ごちそうさま!じゃあ、もってくね!」


 私はシチューを食べ終えた後、食堂に向かっていく。

 そこで料理人さんから、一人分ずつ、料理を受け取ると、従者さんたちがいる部屋の前までやってきて、渡していく。


「え?いいのですか?」


「お嬢様!?危ないです!」


「お、お嬢様?あ、ありがとうございます?」


「僕……私にもくれるんですか?ありがとうございます!」


「うん。よくかんでね!」


 反応は人それぞれだったが喜んでくれたようで何よりだ。

メアリ&ヘレナ


茶色の髪、茶色の目、二人とも同じくらいの身長


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