住人は見た
投稿遅れました〜。
メンテナンスが五時までなの忘れてたんです、すみません……。
ひとまず、街を探した。
この廃れた大地……魔族領に、街があるのかどうかは分からないが、そこで人混みに紛れるのが最もいいと判断した。
私は、気づいたら牢獄に転移していたわけだが……それでも、脱獄犯ということになっているのは変わらない。
つまり、きっと追われることにはなるだろう。
それに、情報収集も必要になってくるので、情報が集まる街行くのは必要事項なのだ。
平野を歩き回る。
その間、馬車を引いている魔族が数名いたが、もちろん無視した。
が、その行先はちゃんと覚えた。
進む方向を確認した上で、その方向に『視線』を向ける。
私の極限まで高めた視力によれば、この先に街があるようだ。
そうして、その方向まで転移する。
視界に映る場所の、座標を何となくで把握することで、行ったこともない場所でも瞬時に移動することができる。
これに関しては、ベアトリスもできないだろう。
密かに自慢に思っている。
転移した先には、もちろん街が広がっていた。
それもかなり広大だ。
敵の攻めに対しての守りを果たす壁……なんてものはなく、剥き出しに街が見えた。
街は王国の街と何ら変わらない。
強いていうなら大きさだった。
公爵領の街、王都などよりも圧倒的にでかいように見えた。
奥が見えない……それほどまでにでかい街だった。
魔族領を除いて、全国を回ったことがある私だから言える。
フードをかぶる。
そして、中に入ることを決めた。
転移で簡単に入ることができた。
そもそも、警備兵の巡回などもなく、転移する必要すらなかったように感じたが……。
警備しない……それほどまでに防衛力に自信があるのか、魔族特有の強さ故の傲慢なのか。
そこそこ鍛えた私にとっては後者を希望する。
牢獄を守っていた、達人おじさん(あだ名)は強かった。
怪我している私では勝つのに時間がかかると思うくらいは。
なので、そんなのがゴロゴロいたら面倒なのだ。
光魔法、転移の連発により、私の魔力もそろそろ限界を迎えてきていた。
適当に街の中に入る。
当たり前に、裏通りを選んだ。
人混みが多いところは避けて通り、人通りが少ないところを進む。
どこに向かえばいいのか、わからないので、とりあえず奥に入ろう。
宿に入るわけにもいかないので、どこか体を休めることができそうな場所を探さなければいけない。
なので、壁を使って高速で移動した。
わざわざ屋根を飛び回れば目立つので、これが一番目立たないと思った。
進んでいく最中に並ぶ家々は一軒一軒がかなり豪華で、魔族の生活はかなり裕福そうにも思えた。
そして、家をまた一つ飛び越えようとした時、魔族と目があった。
あんまり魔族の姿が見えない通りだったので、少し警戒を緩めていたせいだろう。
武装している魔族に見つかってしまった。
叫ばれる前に、すぐに黙らせる。
壁を蹴って高速で接近、武器を取らせる前に、首を捻った後、近くの路地裏に投げ飛ばした。
そして、また壁を走り出す。
早く、安全な場所を見つけなければ……。
♦︎♢♦︎♢♦︎
魔族領は依然として平和だった。
別に敵の襲撃があるわけでもないし、魔物が徒党を組んで攻めてくるようなこともない。
だから、俺のような警備兵は金だけもらって、働いていない奴が多い。
ぶっちゃけ俺もそうだった。
だから一人、路地裏で寂しく酒を飲んでいた。
「ああ〜なんかおもしれーやつでもいねーかな〜」
暇だ。
そんなことを考えながら、また次の一杯を飲もうとしていた時だった。
何故か風圧を感じた。
「何だ?」
そう思い、酒瓶から顔を上げてみれば、
「うわ!?」
同族である魔族が飛んできた。
そいつは俺にぶつかってきて、俺は飛んできた方を思わず見た。
すると、
「あ、おい!」
何かが一瞬見え、すぐに消えた。
白かった……それしか見えなかった。
「……おい、大丈夫か?」
服装は同じ警備兵のものだった。
意味もない紋章が肩に描かれ、胸当てだけがついた軽装備だ。
だが、そいつはいくら揺らしても起きなかった。
何故なら、
「死んでる?」
首が曲がり、神経が切れていた。
それが復元することはもちろんなく、そいつはすでに息をしていなかった。
「何だったんだ?」
おそらく、白いやつがやったんだろうな。
正直、この警備兵の死なんてどうでもいい。
知り合いじゃないからな。
知り合いだったら、少しは悲しんでやるところだが……。
俺は髪の毛をかきあげながら、そいつに酒を垂らした。
俺なりの埋葬だ。
「面白いことになってきたじゃんか」
最近暇していた俺にとっては最高の暇つぶしだ。
さっきの白いやつを探してみようか。
どうせ、警備兵の仕事は巡回と警備だけなんだし、白いやつを俺が探していても何の不思議もない。
怪しいやつがいたから、といえばいくらでも言い訳できるからな。
俺は路地裏を出た。
「確か……あっちに行ったか?」
どこへ消えたのかはわからなかったが、フードが向いていた方向的に、街の中心部だろう。
そこを目指して何の意味があるのかはわからないが。
「いっちょ、仕事の時間と行きますか」
酒は、死んだやつの傍に置いて、俺は久しぶりの仕事へと繰り出すのだった。