真摯な願い
今日は休日!
なのにもかかわらずなぜ朝に投稿しなかったかと言えば、書いていた約3000文字分のデータが吹っ飛んだんですよね……。
それで萎えてしまいまして……。
すみませんでした!
昨日の飲み会……結局私はお酒を飲みませんでした!
いや、本当は飲もうかなと思ったんだけど、流石に子供の体だからいくらエルフの法律でOKだったとしてもダメだよねって思ったのである。
まあユーリはガッツリ飲んでいたけどね。
ユーリはビールが大好きなようで、そればっかり飲んでいた。
ユーリは別に問題ない、法律的にも。
ユーリは何百年と生きているからお酒を飲んだって全然平気なのだ。
ただ、レオ君はかなり辛そうだった。
うん……まあご愁傷様としか言えないよね。
そして、もう一つ……。
ユーリにはお酒を飲ませてはいけないと言うことを学んだ。
ユーリはお酒飲んだらダル絡みしてくるようなタイプの人間だったのだ。
時々いるでしょ?そう言う人。
私はユーリをセーブさせるので精一杯で、お酒なんて嗜む暇なかったと言うのが本音だけど……。
それが功を奏し、今日この朝に、昨日のことで罪悪感に悩む必要がなくなったのだった。
レオ君の介抱とトレイルの話し相手をして、ユーリの歯止め役として活躍した私はもうヘトヘトですぐに寝てしまった。
食卓で寝てしまったが、その間に何があったのかは知らない。
だけど、
「ほんとぐっすりよね……憎たらしいったらありゃしない」
私が食卓テーブルに頭を乗せて寝ていたのに対し、その横のかなり大きめの椅子でレオ君とユーリが二人並んで寝ていた。
昨日のお酒が抜けていないのか、二人とも顔が赤い。
同じ毛布を使っているため、仲のいい兄弟にしか見えないのは私だけだろうか?
ユーリってば、見た目はほとんど女の子なんだよね。
声も子どもらしい高い声で、性別を教えてもらうまで、女の子だと思ってた。
だから中のいい兄弟だね、この二人は。
血は繋がっていないけど、私にとっては可愛い弟たちみたいな?
「そう思うと可愛く見えてくるわね……」
私は食卓から抜け出し、部屋の外に出る。
すでにトレイルはこの家から出ているらしく、姿が見えなかった。
いたのは抱き合って寝ている二人の姿だけで、昨日の夜に帰ったのだろう。
扉を開ければ、入ってくる風。
この家はかなり高度の高い場所にあり、地上にエルフたちが住んでいるのがよく見える。
そして、さらに高いいちにハイエルフが暮らす家々がある。
私は風を浴びながら伸びをする。
気持ちいい風に当たりながらの朝は最高なのだが、なぜか疲れが溜まっている。
そんな時だった。
「ん?」
太陽の直射日光が遮られ、私の周りの地面が陰った。
ふと上を見上げてみれば、そこには昨日見た顔があった。
「国王陛下?」
「ああ其方はベアトリス嬢か」
風魔法で楽々と、空中浮遊しているあたり、さすがハイエルフ。
歳を取っても、遅れは取らないんですね、わかります。
実際の国王の年齢は私も知らないのでなんとも言えないが。
ユーリが七百歳とか言ってたけど、それも信用できない。
第二次聖戦って何年前だったろうか?
覚えてないが、七百年以上前だったような……。
いや、ごめん。
ほんとに覚えてないや。
けど、ユーリと過去に友人となったと言うことだけは事実なのだ。
それで十分。
ユーリは嘘が下手なところもあるし、ね。
「ここに、其方の仲間のキツネはいるかな?」
「ユーリのことですか?ユーリなら……酔い潰れてます」
呆れるだろうなぁ。
ユーリには申し訳ないが、これも自業自得!
と思って、国王の反応を待ってみれば、
「ははは!昔から変わっていないようだな!」
「?」
予想とは反対に大笑い。
「彼はビールが好きだったなあ。よく飲みに誘われたからよく知っておる」
「何年前の話ですか?」
「もう覚えていないな。何百年と時間が経てば、何があったかすら覚えていない。彼も私の年齢なんて覚えていないだろう。それは儂も同じことだがな」
嬉しそうにそう返す国王。
そっか、昔のことすぎてお互い年齢なんて覚えていないのか。
「ユーリとはどう言う関係だったんですか?」
「儂か。言うなれば、ライバルであり、最高の友人じゃな」
「ライバル?」
「好敵手というのか?お互い、敵陣側の人物だったからな、聖戦時に拳を交わしたことだってあったさ」
「聖戦……」
「だがな、あいつは不思議なやつだったのう」
昔を思い出す国王。
空を見上げて、思い出に浸っている。
「種族の壁を超え、儂のことを『友人』と言ったんだ。儂は感激したわい。それと同時に儂に言った。『この戦争を終わらせよう』とな」
「それで、二人はどうしたんですか?」
「詳しくはもう覚えていない。が、儂らが行動を起こし、戦争を止めたのは事実である」
拳に力が入るのを私は見逃さなかった。
だが、その理由はあえて聞かないでおく。
「なんで聖戦は起きたんですか?」
「それを聞くか?」
「ええ、だって聖戦がなかったらユーリは国王と出会わなかったわけだし、もしかしたら私とも出会わなかったかも」
「それはあり得るな。ただ——」
口籠もる。
そして、その思い口は開かれ、
「儂から言えることはない」
「でも、聖戦時には——」
「一つ言えるのは……全ては彼の人柄にある」
「人柄?」
「彼は優しい。お節介で心配性で、馬鹿で天然で……」
馬鹿にしてるのかと思えるその内容に苦笑いをする。
「それが原因だったんだ」
「……辛いのであれば聞きませんよ?」
「そうしてくれると助かる」
「それと……この家にきた目的を教えてくれませんか?ただ旧友と話をしたかっただけなら朝から来る必要なんてありませんし、私たちを呼び出せばいいだけですしね」
国王自らここまで出向いてきた。
しかも護衛も何もつけないで……。
一国の主としてはあり得ない行動だ。
「流石だな。もちろんそれだけが目的じゃあない。儂はお願いをしにきたのだ」
「お願いですか」
「そうだ、其方も知っておるだろう。この森の危機について……トレイル、我が娘が有益な情報をもたらした。それは其方らの力添えあってのことだろう?」
「なんでそこまで信用してるんですか?私が、私がもし人の皮を被った悪魔だったらどうしてるんです?」
過去にあった事件でエルフは人間を嫌いになった。
つまり、国王だって人間が嫌いでもおかしくはない。
「精霊は自然を愛する」
「え?」
「それを守ろうとする者には加護を与えるのだ。儂のように……」
そう言って、国王は右手を出す。
その右手は一見何も変わらない、普通の手だったが、やがて発光しだす。
精霊に加護をもらった……あの時の私のように。
「其方も持っているだろう、加護を」
「なんでわかるんですか?」
「『精霊視』……と言ってもわからないか、まあ直に使えるようになるだろう。精霊は其方を信じてその加護をもたらした」
国王は手を引っ込めて、一歩後ろに下がる。
「エルフたちの態度で気に食わないこともあるだろう。それを承知でお願いしたい」
「……………」
「どうか、エルフを……この森を守ってはくれないか?」
その姿は精霊と一緒だった。
加護をくれたあの精霊も私に頭を下げてきた。
(この人も同じなんだ……)
森を守りたいという思いで、この人はここまで一人できたんだ。
かなり高齢で、体を動かすのも容易じゃないだろうに……。
だが、その思いの強さはよくわかった。
私の時は手遅れだった。
今世で始めた仲良くなった街の人たちを守れなかった。
私は、愚図だ。
(そんな私でも、今度は……)
私の返す返事はもう決まっていた。
「もちろんです」
お酒、我慢できて偉い!
真面目に未成年さんはお酒飲んじゃダメですからね?
ベアトリスを見習ってください!