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森の民

閑話に続き、投稿順序を間違えてしまいました…。

割り込み投稿失礼しました。

 力無きものは淘汰される。

 エルフの森でもそれは普通だった。


 強大な魔物。

 そして原始的な生活。


 エルフは魔物を狩り、動物を狩って食事にありつく。

 だが、死んでしまっては意味がない。


 実力がいる。

 ただ、それは一部のエルフが持つものとなっていた。


 市民たちの生活は安定している、が、一方で王族内部は荒れていた。

 国王の寿命、魔物の活性化、それにより不信感と死者が増える一方だ。


 それを止めるべくに動いている王族の一人であるのが、この私だ。


 トレイル・エル・ハイアン


 私は王位継承権第十二位だ。

 だから、王、もしくは女王の座になんて興味がなかった。


 兄様、姉様に可愛がられる一方で、無能扱いもされる。

 末っ子の私は弱かった。


 実力主義のこの世界で弱者として生まれた。

 エルフ……その上位に立つ、ハイエルフである私は魔法が使えなかった。


 風魔法で跳躍することも、水魔法で森に恵みを与えることも、土魔法で土地を豊かにすることもできない。


 それが私。


 そんな私だけど、一つだけ夢があった。

 上の兄妹たちに認められたい。


 それが目標だった。

 いつもいつも足を引っ張ってばかりで、国のために行動している兄妹たちが私の憧れだった。


 だから、私は力を求める。

 今回の魔物の増加の原因を探すために力が必要だった。


「トレイル様!」


「何ようですか?」


 ドアがノックもなしに開かれる。

 私がいるのは、巨大な樹に建てつけられた立派な家の一部屋だ。


 静かで、外の景色を一望できるいい場所だった。

 だが、今日はなぜか慌ただしい衛兵の様子に、私も手にする本をしまった。


「我らがエルフの森に、人族が!」


「なに?」


 人族というのは、エルフの敵。

 過去、人族は聖戦というものを魔族との間でしていた。


 その際、エルフにも被害が出てしまった。

 何かの作戦のためか、火を森につけたのだ。


 エルフの森は激しく燃えた。

 当時、幾つもの部族に別れていたハイエルフたちが、その消火にあたった。


 その結果、森は半分が燃え尽き、ハイエルフが数名死亡した。

 それによって、危機感を覚えたエルフたちは一つの国を作り上げた。


 それがこの国だ。

 過去数千年の歴史を持つ、我がハイアン国……通称エルフの森に人族がやってきたのはそれ以来のことだった。


「私を連れて行きなさい」


「ですが、ハイエルフ様のお手を煩わせるわけには……」


「いいから早くするのです!」


「はっ!」


 私は、この金髪の髪をなびかせ、扇子を広げる。

 侵入者相手に、威厳を見せつけに行く……というのもおかしな話だが、これが上の兄妹たちを喜ばせることにつながるのだとしたら、百点満点の行動だ。


 そして、私は国の入り口まで向かう。

 国といっても、小さな森。


 すぐにその場所には到達した。


 土が踏みつけられる音、それはいつもより騒がしい。

 そして、


「何をしているのです!」


 私が検問所の手前で、声を立てる。

 そこに集まってる十名ほどにもなる兵士たちは私の方を振り向くと片膝をつきその場に跪く。


「この者どもです!」


 私を案内した、兵士が指を差す。

 そして、私は驚愕した。


「嘘……『忌子』?」


 黒髪黒目、かつて森を燃やした人族と全く同じ……それは、ハイエルフの中では忌子と呼ばれ、蔑まれている。


「失礼、そこの人種族。そして、その……獣人たちよ」


 よく透き通る声だけが私の自慢だった。

 そして、この透き通る声ではっきりと告げる。


「人種族の者よ、早々に立ち去るがいい!ここは我らが聖地!我らが故郷!何人たりとも踏みにじられることを許容しない!」


 私の……自分で言うのも恥ずかしいが……凛々しい姿に、周りのエルフたちは感激の声を漏らす。


 魔法が使えない私だが、ハイエルフの一員として、周りからは尊敬されている。


 それはとても嬉しいことだった。


「あなた誰?」


「!」


 その黒髪の少女……私と同じ年齢くらいに見える……は、私の態度に臆することなく、近づいてくる。


「な!この人種族が!」


 衛兵の一人が立ち上がって、持っていた槍をその少女に突き出す。

 流石に子供相手にはやりすぎな気がしたが、人種族に対してだったら、当然の行動だろうと私もその先を見守る。


 しかし、それは予想外だった。


「乱暴ね。こちとら病み上がりだから勘弁して欲しいわ」


「は?」


 槍の突きの一撃……頭を狙ったその攻撃は最もたやすく避けられた。

 首を数センチ曲げただけだ。


「舐めるなよ!」


 その衛兵と入れ替わりに別の兵士が今度は横なぎに振るった。

 狙うのはやはり、一撃で死ぬ頭。


「だから、乱暴は止めてちょうだい」


「な!?」


 横なぎのその攻撃は確かに当たった。

 しかしそれは、少女の一本の細い指によって遮られてしまった。


 その指からは出血をすることもなく、悠然と少女はその場に立っている。


(おかしい!風魔法を使った一撃がなんでこうもたやすく……!)


 常人なら、見切れないはずの速さの一撃を少女は二度も防いだ。

 そして、私はもう一つの箇所にも注目した。


(従者と思われる二人の獣人……一歩も動いていなかった。見切れなかったんだと思ってたけど、動く必要がなかったから?)


 私は焦る。

 ここで、どうにか食い止めなくては……。


 その時だった。


「そうね、入れさせてもらえないなら、しょうがないわ」


「!?」


「他の場所を当たりましょう」


 少女は身を翻す。

 私はその時、それをはっきりと見てしまった。


 生気が抜けた目、この世の全てを憎んでいるかのような瞳だった。

 私は恐怖した。


 人種族はこんなにも恐ろしい存在だったのか、と……。


「……………街道の警備、検問所の警備の強化を急ぎなさい」


「はっ!」


「それと、私は今後、魔物活性化の調査に乗り出します」


「ええ!?」


「早急に原因を調べ上げ、共に、我らがエルフの民を守りましょう」


「「「おお!」」」


 早急に調べ上げる必要がある。

 解決し、早く……。


(人種族を滅ぼす方法も考えなくては……)

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