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一つを三人で

 冒険者たちを引き連れて、森の中へ入っていく。

 いやぁ、賑やかでいいですねえ。


 実を言うと、冒険者たちって、総勢に十数人ほどいるんだよね。

 多すぎやろ!


 って、思っていたんだけど、案外暇にならないからたすかる。

 世間話にも付き合ってくれる人いるし、この長い探索において、必要不可欠なのだ!


 それに優しい人も多いしね。

 冒険者って結構荒れている人が多いイメージだったけど、それは変えた方がいいかもしれない。


 普通に私に対して、『疲れたら、おんぶしてあげようか?』とか、『喉が乾いたら言ってね』とか。


 主に女性の冒険者。


 皆様もうお分かりでしょう?


 優しい……。

 優しすぎるぜ!


 見習いたいものである。

 って言うか、勇者に見習って欲しいまであるぞ?


 トーヤってば、私に突っかかってくるだけだもん。

 話し相手にはなるし、一応常識人だけど、それだけやん。


 ただし、女冒険者さんの恋愛話は辛いよ……。

 そこだけは、トーヤも真似しなくていい。


 何か経験した!?的なことをずっと聞かれると、私は殿下と二人でおねんねした時の記憶が蘇り……。


 死にたくなるのだ。

 あぁぁぁぁ!


 殿下を騙してしまった罪悪感と、アレされたことへの背徳感と、嫌われてないということへの、安堵感が混ざり合った感情が私に訪れる。


 と、それはいいんだよ!


 トーヤ異世界のことを聞いてみるのもいいかもしれない。

 けど、私の知らないことだと、話って弾まなくない?


 やっぱり同じ世界の人の方が話しやすいのだ。


 ちなみに、冒険者さんたち……現在隣にいる女冒険者さんのパーティは、私が現れてすっごいびっくりしたみたい。


 だって、勇者パーティの中に一人だけ子供が混じってるんだもん。

 その肩の上には、キツネが一匹いる。


 不自然すぎるにも程がある。


 そして、子供だったこともあって、なんとか一緒に話ができないか、と考えていたらしいが……。


 だが、勇者たちとの接し方を見ていると、なんだか話しかけづらかったとさ。


 結果的には、私の方から話しかけたわけだ。


 暇すぎて。


 この調査にはかなりの時間がかかる。

 それは、わかっていたつもりだった。


 だけどさ、何も見つからない時には一日中歩き回ることになる気づいたのはついさっきのこと。


 一日目の調査を経験した女冒険者さんが愚痴っていた。


 確かにそれは辛そう……。

 とか、安易に考えていたけど、それは少し予想を超えていた。


 勇者一行、歩くの早すぎ!


 と言うのが結論だ。

 トーヤたちが爆速で探索するもんだから、冒険者たちはそれについていくのが精一杯……。


 仮にも、一流冒険者たち。

 歩くだけでへこたれるなんてことはないが、それでも辛いものは辛いのだ。


 何を隠そうこの私は……。


 ちょっとだけズルをしている。

 いやぁ、歩くのがめんどくさいんで、ちょっとだけ浮遊魔法で浮いているんだよね。


 一センチくらいかな?

 だから誰も気づかないだろう!


 そんなこんなで探索は続き、お昼になった。


 太陽が南中し、寒い冬に少しだけあったかい光をもたらす。


「そろそろ、お昼ご飯にしようか」


 トーヤがそう言葉を漏らし、冒険者たちも各々、食事の準備に取り掛かる。


「あ、そっか」


 完全にやらかしたことが一つ発覚した。

 私は、お弁当を持ってきていないのだ!


 私ってば、話を聞いてなかったし、朝ご飯も食べにいかなかったせいで、昼以降も調査が続くことを知らなかった。


 そのおかげで、私は手ぶらである。


 なんでだろうね。

 食材とかも持ってないが、なぜか、テーブルとか椅子とか……家具は持ってるんだよね。


 元々、私の部屋の中に置いてあった邪魔なテーブルと、椅子。

 部屋の真ん中に置いてあったので、いらないと思い、中にしまっておいたのだ。


「どうしたの?」


「あ、いや……なんでもない」


 女冒険者が話しかけてくる。


 ダメだ。

 今の私は勇者パーティに同行してるベアトリス(男)。


 ここで、お弁当忘れたなんてことが知られたら、女冒険者さんも呆れるだろうし、何よりトーヤに呆れられ、ミレーヌに爆笑されることは目に見えている。


 というわけで……


『転移』


 最近この魔法に頼りっきりだなぁ、と思わなくもないが、ありがたく使わせてもらってます!


 大賢者……なんちゃらさん!

 すんません、名前覚えてないです。


 とにかく、大賢者とかいう、すごい人が発明した魔法なのだ。

 役に立たないはずがなく、今まで何度も危機を救われてきた。


 そのほとんどがしょうもない危機だったのは置いておくとしてだけど……。


 転移が完了し、私は公爵家の自分の部屋まで戻ってきた。

 やはり、ここまで長距離となると、かなりの魔力を必要とする。


 まだ、魔力のストックはあるため問題はないが……。


「ん、おかえり……」


「あ、ただいま。だけど、すぐ行くから」


「ベアトリス、髪どうした?」


「ああ、これ?なんか成り行きでこうなった」


 それはいいとして……。


「ねえねえ!りんご持ってる?」


「ある。これ——」


「サンキュ!」


 フォーマの懐から出てきたりんご。

 フォーマ、どうやらりんごが気に入ったらしく、かなりの頻度で食べているのを私は知っている。


 というわけで、強奪!


「もらうわ」


「え?え?」


「じゃあね!」


 そうして私は転移していった。

 再び、森の中へ。


 木々の影に隠れて転移してきた私は、こっそりりんごを食べる。

 さすがにりんごだけを食べいる姿もそれなりに笑われるかもしれないので、空腹だけは満たしておく。


「って……これさぁ……なんでこんなの渡すかなぁ?」


 りんごにかぶりつこうとした時、思いっきり私の視界にかじり跡が見えた。


「食べかけかよ……」


 なんで食べかけを保存するかな……馬鹿なのかな?

 早く食べればいいのに……。


 そう心の中で文句を垂れている時、


「キュン!」


 肩に乗っているユーリがりんごにかじりつく。

 あ、そういう感じですか?


 まだ怒ってらっしゃる?

 ひとりぼっちにしたのをまだ怒っているから、嫌がらせでかじったのか?


 それとも、単にお腹が空いていたってこと?

 今思えば、朝から何も食べさせてない……。


 ユーリは基本的になんでも食べれちゃうため、適当にご飯をあげていたのだが、今日の朝はあげてなかった。


 ユーリが何口かりんごをかじった後、


「キュン!」


 りんごを掴んで、私の顔に近づける。


(あれ?もう怒ってないのかな?)


 怒りっぽい性格をしていないのが、功を奏した?

 まあいいや。


「いっただきまーす」


 私もそのりんごをかじる。

 っていうか、なんで一個のりんごで三人(二人と一匹)で食べなくちゃいけないんだろう……。


 それだけが心にひっかりつつも、私はりんごを全て食べ切るのだった。

時々自分で思います。

サブタイトル、若干詐欺ってるんじゃね?

って……。


申し訳ないです……。

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