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おじさんっぽいところあるよね

 イレーネとオケアノは2人でどこかに行ってきた後らしく、何枚かの書類にサインしている所だった。


「おや、珍しい組み合わせで」

「あ、カオル! 今日はオケアノさんと大触手(アル・ティント)の討伐に行ってきたの」

「ギルドの魔方陣が使えなくて魔法を教えるついでにね」

「それならさっき注いでおきましたよ」

 そう言ってお金がもらえる紙をオケアノに見せた。

「最大まで?! 多いと思ったけどほんとに多いのね……」

「がんばって増やしましたからね。だからイレーネも多いですよ」

「そうね、今日すごかったわ。わたしも黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)に入ったから教えてもらえるようになるのかしら」

「たぶん、大丈夫ですよ」

「楽しみにしておくわ」


「で、大触手(アル・ティント)って何です?」

 またこの辺に住む害獣の様なものなのだろうが触手だけを切ってきて終わりというものなのか。

「土の中を移動する肉食のなんていうの? 大きな芋虫? 蛇? 砂鮫(アル・ベレオ)よりは弱いんだけど」

 オケアノに聞いたつもりだったがイレーネが教えてくれた。が結局なんとなくのイメージしかつかめない。

「それがなんで触手なんて言われちゃうの?」

「え~? それはこう、こうなるのよ」

 手をくねくねさせて説明してくれたが新しい説明にはならなかった。

 その様子をみたオケアノがクスリと笑う。

「捕食するときに地中から姿を見せて品定めする動きが触手みたいに見えるからそう言われるの」

 イレーネがそうそう! と手をくねくねさせながら相づちをいれ、なるほど、それがそのくねくねか、と納得した。

「で、今日は2人で倒してきたってことですか」

「そうなの。砂鮫(アル・ベレオ)みたいにいきなり下から襲いかかってくるわけじゃ無いし早さもたいしたことないんだけど、ハンターじゃないと対応できないからよく討伐依頼がでるのよ」

 少し砂がついてるくらいで怪我や汚れのほとんどない2人をみるとたいしたことないというのも本当なのだろう。


「今度手紙でも出そうと思ったんだけど、イレーネちゃんの魔法も10段階目まで来たから一緒に魔法の使い方を教えたいから、一緒に来てね」

 災害を起こす魔法の続きか。

 そんな大げさな魔法、いらないんだよね。

「カオルは次の魔法知ってるの?」

「11段階目の魔法はまだしらないね。10段階の魔法は1個覚えてるよ、大雨降らせるやつ」

「あたしもそれ」

「大雨以外選んでも使い道がないんだよね」

 竜巻に、炎の竜巻に、地割れ、大嵐、辺り一帯凍らせる。と、1つずつリストアップしていく。

「確かに、街に使ったら大変なことになるから大雨しかないねえ」

「昔は都市を滅ぼすのに使ったらしいから間違ってないのよ、もうそういう相手がいないというのはいいことだと思うけど」

 『もうそういう相手がいない』そう聞いてファラスを思い出したが、市民を巻き添えにしてしてしまうのでありえないし、使えと言われても流石に無理だ。

 しかし、彼らはどうするだろうか。今ここにいない元ファラスの貴族達に軽く思いを馳せる。

 取り返してもその後そこで暮らしていくんだから焦土にするなんて結論には、簡単にいたるわけがないと思いたい。


「色々と危ないからね、大豪雨(ファラードレイン)以外はもうあんまり教えてないのよ。次覚えるのは11段階目、魔法生物の召喚よ。これわたしもあんまり使えないんだけど、使えると手札が1枚増えるから是非覚えてね」

 手札、と聞いてイレーネにポーカーやりたいと言われるかと一瞬思ったがそんなことは無かった。

 成長しているようで安心した。

 確かに覚えられるからと言って全員に火炎旋風(ファイアトーネード)を魔法を教えてしまうと失恋の度に都市を滅ぼそうとするやつもでないとも限らない。

 それからしばらく次の仕事と魔法の話をして帰る。

 イレーネとオケアノはまだ仕事の途中だった様でもう少しかかるようだ。


 2人共あまり人見知りをしないタイプなので、あっというまに打ち解けているのが自分にはないスキルなので羨ましいと思う。

 またねーというイレーネの声に後ろ向きに手をひらひらさせてギルドのドアをくぐった。


「なんかカオルのあーいうところっておじさんっぽいところあるよね」

 中身は本当におじさんだから当たり前なんだけど、と心の中で付け加え、視力を失ってるときに見た姿を思い出した。

「落ち着いてるっていうか、枯れてるっていうか」

「そうそう、普段落ち着いてるのに慌てるとやたら悲鳴あげるよね」

「わかる、この間大怪鳥(コカトリス)と遭遇した時に前衛やってくれたんだけどね──」

 受付のダニエルは書くもの書いた後にやってくれないものか、と思いながらそう盛り上がる2人の話に口をはさむこともできず、2人はしばらく話し込んだ後、困り顔のダニエルに気づいて慌てて済ませた。


 そんな話のネタになっているとは思わず上機嫌で家に帰り、ニコレッタと夕食を食べてベッドにもぐりこんだ。

 今日は出鼻をくじかれてしまったおかげでなんにもできなかった。

 明日はどうしようか、と思ったところでオケアノに会ったときに用事を済ませることができたじゃないか、と思いついて目的を達成した気分で眠りに落ちた。


 昨日の感じだとオケアノは黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)の方にいるかな、と思いながらニコレッタの用意してくれた朝食を食べていると黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)の使いが来た。

 ドアノッカーのせいか、使いの力が強いせいか、意外と大きな音で部屋に響き渡り驚いてしまって思わず肩がびくっと動いてしまった。

「ギルドの方が手紙をもってらっしゃいました」

 丸めた紙を紐でくくった簡単な手紙を渡された。

 紐を解いてみてみると急ぎの仕事があるのでギルドに顔を出すようにというようなことが慇懃に書いてあった。

「きっと何日か泊まりになると思います」

「かしこまりました」

「それと……」

 昼ごはん用に何か作ってもらおうと思ったが水分の多いものを持っていくにはリュックが汚れないようにバスケットなんか用意しないといけないということを思いついてやめる。

「いや、なんでもないです」

 きょとんとした表情でわかりました、と返事をするニコレッタに調味料を小瓶に分けてほしいとを残して自室に戻り準備をする。


 ギルドに向かうために荷物をリュックに詰め込んで手甲をつけて付け心地を確かめる。

 使っていなかったせいか革が堅くなって締め付けがきつい気がするがそれが逆につけている感触が感じられてしっくりきた。

 食料は手配済みなので持って行く必要はないのだが、念のため何食か持って行きたい。

 うちのキッチンに乾燥肉なんかあれば持って行きたいのだけど、ニコレッタは保存の利く乾燥肉を買う必要がないようにしてあるので、どんなに探してもないものはない。

 行く途中でどこかで買っていけばいいだろう。

 パスタはあるのでニコレッタに言って適当な綺麗な袋に適当に何食分か、あとは調味料も分けて入れてもらう。

 できたら着替えとかあれば万が一にも備えられそうなんだが、雨も少ないし湿度も高くないので2、3日なら大丈夫だろう。

「じゃあ、行ってきます」

 荷物の入ったリュックを背負い、元気に家を出ようとすると引き留められた。

「お待ちください! 好きでないのはわかりますがきちんとターバンを巻いてから出てください!」

 知らないふりをしてしれっと出ようとしたが失敗した。


 鏡の前で頭をぐるぐる巻きにされてカチカチに締められる。

 頭をきゅっとまとめるとなんか、顔が大きくなった感じがしてちょっと嫌だ。

 小さめの男物の作業着、厚手で丈夫な生地で作られているのが一番の気に入っているポイントなのだけど、色々言いたげニコレッタに見送られて今度こそ家を出る。


 身体強化して岩山を駆け足で登り黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)に着く。

 今朝呼ばれた私以外の人はすでにそろっているようで、テーブルの上に足を乗せたり、椅子を2個使って寝たり自由にしている私の部下達が見える。

 ドアをくぐった私に気づいたヨンとヘススに遅い遅いと文句を言われた。

 少し離れた所でオケアノが困り顔で椅子に座っているのが見えた。彼女も今日は同行するのだろうか。

「遅いって、今朝使いの人が来てから急いで来ましたんですよ」

「おれらは昨日言われて朝早く来たんだ」

 私をやり込めたのが楽しいのかうれしそうに笑った。

 その声を聞いてか、ルイスさんが来た。

 そんなに前な訳がないのだけど、なんだか久々に見た気がする。

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