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その数、6

 森に入る手前を森に沿ってぐるりと回り途中でペドロ達と分かれて森に入る。

 砂地の森のせいか、低木も雑草も生えておらず砂漠に生える木は森の外の夏のような日差しと気温から守ってくれる。

 低木がないので見通しがいいかといえば、伸びた枝が視界を塞ぎしゃがまないと遠くまで見通せない。

 これは4本足の魔物の方が有利なんじゃないかと辺りを見回しながら心配になった。

 エッジオに小声で聞く。

「音が聞こえてからじゃ遅いよね?」

「そうだよ、だから少ししゃがんで歩くのさ」

 まったくもってしゃがんでないエッジオがいう。

 不思議に思っていると僕は荷運び屋(ポーター)だからね、そう言ってウインクした。

 そして景色ではなくハビエル達を見回してみるとそれぞれ腰を落として歩いているが真ん中を歩いている私やフアンは屈むことなく邪魔な枝を手で避けながら歩を進めた。


 枝払えばいいのにと思ったが、先頭を歩くハビエルは咄嗟に盾を構えなくてはいけないので余計な仕事はできないし、ヨンが扱う武器は戦斧なので細かい取り回しが良くないしヘススは小柄なのと丈夫で折れづらいショートソードなので切り落とせる範囲はそんなに広くない。

 せいぜい私が歩きやすくなる程度。


 足を取られたり根に躓いたりしながらゆっくり歩いて1時間ほど。

 不意に風上から濃密な獣の匂いが漂ってきて、心の準備の整ってない私は思わずえづいた。

 ハビエルが止まり盾を構えてしゃがんだ。

 ヨンやヘススもそれに続いてしゃがみ、フアンとエッジオがしゃがんだので私もそれに続いた。

 盾の影でハビエルが手を上げ「あっちにいる」とハンドサインを出して「数は6」とハンドサインが続いた。

 6頭! 多いな……と思い、顔を動かして砂狼(アル・ロッブ)を覗いて見る。

 大型犬くらいだと思っていたのだが、実際みてみると小さめの牛くらいありそうだ。

 獰猛で連携の取れた動きをする牛くらいの猛獣。


 あんなの狩るってできることなのか、と逃げたい気持ちでいっぱいになりながらハビエルの動向を見守る。

 ハビエルの上げた手は撤退を告げ、音を立てないようゆっくりと後退する。

 胸が悪くなる獣臭さがあるうちは安全、と思いながら慎重に歩く。

 風下であればちょっと音がした所で向こうまで音は届きづらいはずだ。

 そう思いながら撤退しているとびゅうと突風が吹いてマントが体にまとわりつく。

 はっとして顔を砂狼(アル・ロッブ)の方に向けるとハビエルの表情がが苦々しいものになっているのを見た。

「見つかった、いつも通りにおれが前にでる。ヘススとホルヘはおれと、ヨンはフアンと嬢ちゃんと荷運び屋(ポーター)を」

 口々に返事をしてフォーメーションが変わっていく。

 ギリ、と弓を引く音をさせたかと思うと瞬時に矢を放つ。

 フアンが牽制をすると砂狼(アル・ロッブ)は矢を避けつつ2組に別れた。

「最初に来るやつはおれが抑える、フアンはそのまま牽制をしてくれ、荷運び屋(ポーター)、危なくなったら荷物は捨てていいから木に登るなりしてくれ、嬢ちゃんは邪魔にならないようにしててくれればいい」

 ヨンは1対1で砂狼(アル・ロッブ)を倒すつもりだろうか。

 そう思った時、フアンが腰のポーチに手を入れ、赤い小さな魔石を取り出した。

 爪でぎっと傷をつけるとほのかに赤く光り始めた赤い魔石を砂狼(アル・ロッブ)の方に放り投げる。


 石でも投げられたと思ったか投げられた魔石を無視して走り抜けようとした瞬間、赤い魔石が一瞬ピカッと光り爆発を起こした。

 炎と爆風をまともに浴びた先頭の3匹の砂狼(アル・ロッブ)は悲鳴を上げながら転げ、後続の3頭が躍り出る。

 爆発を目隠しにして放たれたフアンの矢は先頭に躍り出た1頭に突き刺さり一瞬怯んだがそのまま走り寄ってくる。


 ハビエルとヨンのグループで少し離れたことにより砂狼(アル・ロッブ)も爆発を食らった組と食らってない組に分かれて対峙する。

 別れずにいると牽制ときっかけを作る2頭といつ来るかわからない4頭の全てに気を配らないといけなく、それなら牽制の1頭と監視しやすい2頭にしておいた方がいいらしい。

 ヨンは最初の1頭が近づいてくるタイミングに合わせて戦斧の先端で受け後ろの2頭にフアンが弓を放ちこちらも牽制する。


 後ろでガン! と音がして驚いて振り向くとハビエルが盾を地面に突き立てた音だった。

 急に何だと思っていると盾の向こう側で爆発がした。

 フアンが盾越しに魔石を投げたようでハビエルの方の1頭が倒れるのが見えた。

 2度の爆発を食らってもまだ生きているようで生命力というか防御力に驚いた。


「あんたもやるか? 傷をつけて7秒で爆発するからその間に投げるんだ。あとハビエルが盾を鳴らしたらヘススとホルヘが盾の影に入るから魔石を投げるといい」

 ギリ、と爪で傷を付けて魔石の内側から光り始めるのを見て様子をみている2頭の砂狼(アル・ロッブ)に向かって放り投げた。

 コロコロと転がって爆発する。

 その頃には2頭の砂狼(アル・ロッブ)は魔石を避けてしまっていた。

「おれが左の方に投げるからあんたは右のに投げろ」

 ピンポン玉ほどの大きさの魔石の表面に爪で傷をつけると少しずつ光り、暖かくなってくる。

 3つ数えた所で砂狼(アル・ロッブ)の頭を目掛けて思い切り投げつけた。

 身体強化を書けて全力で投げつけられた魔石は砂狼(アル・ロッブ)の眉間に当たり爆発し、思わず呟いた。

「まだ7つじゃない」

「割れるほどの力でぶつければ傷つけなくても爆発するのか、そんな力で投げるやつぁ初めて見たぜ。普通に爆発させるより威力もでかそうだ」

 フアンの方の砂狼(アル・ロッブ)は爆発を避けて唸りを上げている。

「こっちで気を引くからもう1回頼む」

 私の手にもう1つ握らせ傷をつけて3つ数えてからふんわりと放り投げた。

 放り投げられた魔石は砂狼(アル・ロッブ)の横に落ち難なくその場から離れフアンを睨む。

 そのタイミングに合わせてさっきより多めに身体強化した私の豪速球は力みすぎて砂狼(アル・ロッブ)の足元に着弾して爆発した。

 はずした! と思った瞬間ギャン! と悲鳴が聞こえる。

 爆発の砂煙が収まると前足が焦げて立てなくなった砂狼(アル・ロッブ)がいた。

 ヨンと対峙する砂狼(アル・ロッブ)は一瞬のうちにバックアップの仲間がやられ、狼狽しているのがわかる。

 後ろから聞こえる何度目かの爆発で悲鳴を上げた仲間の方に気を取られた瞬間、ヨンが手にした戦斧を振り下ろしながら襲いかかった。

 

 気配を感じて意識をこちらに戻し、脳天をめがけて振り下ろされた戦斧から逃れるために後ろに飛ぶ。

 振り下ろされた斧と回避する砂狼(アル・ロッブ)、一瞬斧の刃が早かったか砂狼(アル・ロッブ)の首から出血が見て取れた。

「ちっ浅いか。だが嬢ちゃんの祝福ってやつはすげえな! いつもなら届かない所だ」

 戦斧を握り直して構える。


「こっちの支援はおれがやるから嬢ちゃんはハビエルの方にいってくれ」

 魔石の入った袋を私に放り投げると、フアン弓を構えた。

 バカ! 魔石同士がぶつかって爆発したらどうするんだ! と口に出る前にヒュッと息を飲んだ。

 青くなりながら邪魔にならないように気配を消して棒立ちになっているエッジオの無事を確認してハビエルのバックアップにつく。


「リーダーの祝福がなければ押しつぶされる所だった、礼を言う」

 ハビエルが盾を斜めに構えて、爪を防ぎながら言った。

 砂狼(アル・ロッブ)が大型とはいえ、身体強化がかかった両手持ちの盾を破るには難しいらしい。

 そして一緒にいるヘススとホルヘは片手剣と盾をもったスタンダードなスタイルだが、今回は相手が悪い。

 盾で防ぎきれなかった攻撃を受けてホルヘが怪我をしているがヘススと力を合わせて防御に徹する分には影響はなさそうだ。

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