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ペドロの家に遊びに行こう

「後はファラスの金はこっちの金に両替してやる」

「使うのも鋳潰して売りに行くのも目立つだろうなって思ってたんで助かります」


 そのあと砂漠を通るのはしんどかった話を延々と愚痴りながらルイスさんの案内で第7層にあるという1件の建物の前に着いた。

「1階は基本的に開いてるが2階に上るには鍵が必要だ」

 ロペスを先頭に私とイレーネが建物に入ると目隠しの衝立があり、その奥にいくと事務机のような四角いテーブルが4台置かれ、その奥に2階へ上がるための階段があるのが見えた。

 それ以外は椅子と小さなテーブルがいくつか置かれ殺風景というかどこかの事務所に来てしまったかのような気すらする。

 その癖天井からは煌びやかなシャンデリアがつるされ、ギラギラと光を放つ。


 なんだこりゃ、と思いながら呆けたように天井を見上げると「まあ、なんだ付き合いとかいろいろ、な」と、言葉を濁した。

「ガラスですか」

「いや、魔石製だ。仕組みはなんとなくしかわからんが」

 少し目が眩みながら見上げると、枝を伸ばした逆さの木に魔石の実がなっているようなデザインのシャンデリアはギラギラと無駄に明るく光を放っている。

「魔力の供給は下ろしてからでしょうか」

「そうだ、あそこの鎖を引くと上げ下げできるようになっている」

 たまに補充するだけでいいので、ろうそくを使ったシャンデリアよりは管理が楽な様だ。


「イレーネとロペスの家にもこんなのあったりするの?」

「うちに人を招くことはないからなかったな、中級や上級貴族だったらそういうこともしてたのかもしれんが、やっぱり呼ばれないからわからん」

「あたしも」

「フェルミン達ならわかるんじゃないか?」

団長(フェルミン)には殺風景な部屋にこのシャンデリアはどうなんだ? と言われたよ」

 ルイスさんが苦笑いした。


「あ、こいつらとあと入院中の1人で最後だ」

 事務のおじさんにそう告げると奥の階段に向かって歩いていく。

 ルイスさんの後ろについて事務のおじさんにどうもどうもと頭を下げながらついて階段を登ると突き当りにドアがあった。

「ここから先は幹部だけが入室できるようにしてる。色々内密にしないといけない話もあるからな。鍵は後で渡す」

「ペドロ達はどこに行ったんです?」

「一昨日ついてここの鍵と家の鍵渡したから今は家にいるんじゃないか? お前らの家も18層にあるから後でいくといい」

「みんなその辺りですか」

団長(フェルミン)達とおれらは15層と16層だ。上に行くほど買うのも借りるのも高くなるから本当はおれらも下の方がいいんだが空きがなくてな」


 建て増しして作られたと思われる2階の部屋は奥に幅2メートルほどの大きな机が1基置かれ、昔のドラマで見たようなワンマン社長がいるオフィスの机の配置はこんなんだったと思い出させる配置で幅1メートル位の机が4基を1つのかたまりにして2つ並んでいた。

 入り口に一番近いところで初老の男性が事務仕事をしているようだった。

「奥が団長席で手前がルイスさんの席ですか」

「そんなところだ」

「カルロスさん、ちょっといいですか。後でもう1人来ますが、パーティリーダーになるのが着いたんで紹介します」

「はい、はじめましてお坊ちゃん方(わたくし)カルロスと申します。ファラスでヴィク様の身の回りのお世話をさせていただいておりました」

 身なりが良く落ち着いた雰囲気の……執事という雰囲気はこういうものだと感じさせる。

 私たちはパラパラと名乗りよろしくお願いしますと挨拶をした。

 

 カルロスさんは嬉しそうに微笑みながら「若い人が増えてファラスに戻れる日も近くなりそうですね」と握手を求めてきたので「がんばります」と苦笑いで握手に答えた。


「そうだ、どうせ後でまた来てやることになるなら、両替と魔石の買取もやっておこうか」

 挨拶をしている間に鍵の束とお金が入っているだろう袋を持ってきて机にドスン、と置いた。

 いくらもってたっけ、と思いながらじゃらじゃらとファラス貨幣を積み重ねて同じだけのお金を受け取る。

「手数料とかとらないんですね」

「両替商じゃないからな」

「あと魔石はこんなところですね」

 魔石を入れた袋を逆さにしてざらーっと出してみると、あっちこっち振り回したりしてたおかげで砕けたものが多くほとんどお金にはならなそうとがっかりした。

 イレーネとロペスも慌てて自分の魔石を入れた巾着をのぞき込み砕けているのを確認してちょっとショックを受けているようで言葉がないようだった。

 それでもイレーネはまだ暴れることが少なかったので生き残った魔石は私とロペスよりも多かったが、今度はこっちでのこの程度の魔石は貴重なものでもないらしく買い叩かれてへこんでいた。

 価値としてはだいたい3分の1。

 一般人にはなかなかのボーナスになるくらいの金額だけれども、イレーネには元々の家柄とここ2年で稼いできた実績から考えると二束三文に感じてしまうのだろう。


「どうする? 持って帰るか?」

 ルイスさんがにやにやと腹の立つ笑顔で砂の様になった魔石や欠片を指して言う。

「持って帰ります! 魔道具作るためのインクだって必要ですからね」

「作成済みのインクがこれだ、在庫はまだあるぞ」

 ポケットから小瓶4本を取り出して置いた。

 顔を見るとやっぱり腹が立つ笑顔だったが、どうせ作ることになるならと苦々しい思いで砕かれて欠片になったり粉になった魔石と交換した。

「本来なら売り物なんだがおれとお前らのよしみだ。こうやってギルド員に雇用を作るのも仕事のうちだから後でメイドと小間使い送るからその辺よろしく」

「はあ、社会貢献ってことですか」

「話しが早くて助かる。あとはメイドを雇う財力があるってことをアピールしないとな。イレーネ達は詳しく知りたいなら後でカオルにでも聞いてくれ。次は3日後にロペスの家にいくから朝来てくれ」

 じゃあ、また。と挨拶をして表に出る。


 新しい家まで3人で向かいながらさっきの社会貢献について、豪農や大商人が売るものを買う顧客を増やすことでバドーリャの経済が回るのだとギルドの事務所からの道すがら説明した。

 18層まで降りてみると私達の家は泊まった宿がある通りの3軒隣にあり、そのせいか割りと人通りが多いようだった。

「なあ、ペドロに挨拶していこうか」

 ロペスがペドロの家の前を通った時に思い出したようにつぶやいた。

 イレーネが同意して私が続いた。


 先頭に立ったロペスがドアノッカーをダムダムと叩くと奥からパタパタと足音が聞こえ、扉の小窓が開いて女性の目が見えた。

「どちらさまですか?」

「すまない、ここがペドロの家だと聞いたのだが間違えただろうか」

「どちらさまですか?」

「……ここがペドロ・バレステロスの家ならロペス・ガルシアが来たと伝えてもらえるか」

「少々お待ちを」

 小窓がパタンと閉まり女性は奥に向かったようで、ここがペドロの家で間違いないようだ。

 しばらく待つとドアが開き、ラフな貫頭衣を着たペドロが現れ「お前たちも無事についたか」と迎えてくれた。

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