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金が絡むと彼女は怖い

「あら、カオルちゃんとイレーネちゃん。どうしたの?」

「砂漠越えていくから早いうちに食料とか買ってこようと思って今買いだしに行ってきた所です」

「あー、そこのちょっと馴れ馴れしいおじさんのいる所?」

「そうですそうです」

 イレーネが嬉しそうに頷いた。

「これだけあれば砂漠越えるくらいの食料になるってやってもらっちゃいました」

「あそこね、物はちゃんとしてるんだけど、足元みて値段吊り上げてからちょっと下げてくるんだよね」

 あちゃー、やられたねーと言おうとイレーネを見ると魔力をまとった手足から魔力が濃く吹き出し始めたところだった。

「燃やす……」

「ちょっとまって! 落ち着いて! 落ち着こう? 色々出ちゃってるから!

 こういうのは騙される方が悪いんだし中身はちゃんとしてるから! ね! ね!」

 冷たい目で私を睨むイレーネ、お金が絡むと意外とおっかないやつだ。


「次はわかる人を連れて行こう、反省、な? 過去は振り返らない! 次に活かそう! ね?!」

「そうだよ、次はマリアついていかせるから今回は勉強したと思って!」

 異様な雰囲気を感じたか女将さんもイレーネを宥めると、大きなため息をついて肩をがっくりと落として

「悪いのはロペスとルディだってことにするよ」

 それでなにが変わるかわからないけれど、イレーネの気が済むならそれでいいだろう、と納得することにした。


 しばらくしてルディが降りてきて一緒に昼に近い朝ごはんを食べ、昼ごはんの時間が終わった頃にロペスが頭を抱えてふらふらと降りてきて、水入れの水を勝手に飲み酒臭いため息をついて椅子に座った。


「水、大銅貨1枚だから払っといてね」

「うぅ、まじか……、飯より高い……」


「全員揃った所で相談があるんだけど、銀貨1枚でどう?」

 女将さんが営業スマイルを崩さずに小声で相談を持ちかけてきた。

「何を考えているんですか、女将さん」

 涼しい顔を崩さないように注意深く、女将さんが持ってきてくれた芋と小麦を捏ねて乾燥したブレンボとミルクで煮たニョッキの様な不思議な物をつまみながら、女将さんに聞く。


 イレーネとルディにはまだポーカーフェイスは難しいのか、不慣れながらも水を飲んだり食事を口にして表情に出さないように頑張っていたが、ロペスは具合悪そうにしながら注意深く周りを気にしていた。


 店の中には客が10人近くおり、フロアを歩く給仕が2人、奥には昨日はいなかったコックの姿も見える。

「なんで昨日言わなかったんです?」

「昨日はまだ半信半疑だったんだよ。今朝ぼったくられただろう? あそこは貧乏人からは取らないし、あたしも商売だからね。売れる相手には恩を売って儲けたいって思うのは自然なことだろ?」

 少しイラっとするが、まだ本題には入ってないし、騒ぎを起こせる立場じゃない。

 イレーネとルディをみるとちょっとムッとしているが目でちょっと待ってもらう。


「あっちと違って話せてよかったよ。あんたらの訳ありってアールクドットのあいつだろ?」

 イレーネの息を飲む音が聞こえ、ロペスが流石に鋭いな、と呟いた。


「差し出さない代わりに金を出せってことですかね?」

 そう言われても抵抗できるわけじゃないので従うしかないのだが。


「違う違う、言い方が悪かったね。あんたら夕方に出るんだろう?

 今あいつは町の外で見張りをしてるから帰ってくる時間とラクダを借りてきて安全に町から出る手伝いをするよ。どうだい?」

 ロペスをみると少し頷いたので頷き返し

「いいでしょう、最初に銀貨1枚。夕方ラクダと一緒に成功報酬として銀貨をもう1枚。その他必要な経費もその時で構いませんか?」


「ああ、ああ。助かるよ」

 女将さんは親指を立てた拳を寄せてたが意味がわからずにいると、ここでは商談成立の時はお互いに拳を合わせて約束をするのさ。と教えてくれた。

「もし裏切ったらこの手を差し出しますって意味だよ」

「なるほど、私のところで言う針千本飲ませるってのと一緒ですね」

 思わず口走ってしまった一言に女将さんはちょっと青ざめて、もちろんさ。と言って奥に引っ込んでいった。

 これは余計なことを言ったか、と思ったが出てしまったものはしょうがない。


「カオルの所って平和そうなのに妙な所で野蛮だよね」

 イレーネが機嫌を直して感心する。

 機嫌がよくなるポイントがよくわからないが直ったのならなにより。


 女将さんのススメで夕方まで部屋で暇つぶしをし、出発前の夕食も部屋まで持ってきてくれるというので厚意に甘えておいた。


「せっかく色々みて回れると思ったのに」

 そうなんだよね、またアールクドットのせいで引きこもることになってしまったんだよね。

 とはいえ、あと数時間。

 私は女将さんが地下に入る時に(イ・ヘロ)の魔道具があれば便利だよね、と思い、暇つぶしがてら魔石に紋様を直接刻むことにする。


 カバンの底に眠っていたクズ魔石に(イ・ヘロ)の紋様を直接刻みこむ。

 本来なら金属板と紋様を流し込むインクも必要なのだけど、今持っていないので直接刻み込むことになった。

 魔石に刻んだ(イ・ヘロ)の紋様は、私が刻み終わった瞬間から内在する魔力をぼやーっとした光に変えてあるだけ垂れ流してしまうという本来なら使えない代物なのだけど、魔力を持っているという女将さんに魔力を込めて使ってもらうことにする。

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