ドリンクホルダー
円型の商業ビルの一角に構えた真っ白な店の番をしている。
町のたばこ屋とほぼ同じ形をして、背後にいくつもの品物を規則正しく置いている。
しかし、店番をしている私には何がなんであるのかわからない。
ほとんどたばこの箱のようだけど、単色で文字はない。
それがずらっとならんで、背中に不規則な模様を構築する。
男は言う。ドリンクホルダーをくれと。
どれがドリンクホルダーでしょう?
私からみて右側の、青っぽい緑の箱です。
それを取って男に渡す。男は去る。
どうやらここは代金と縁がない。
別の男が言う。ドリンクホルダーをくれと。
いや、それではなく、私からみて左側の、白っぽい、いや灰色の、、
とって男に渡す。男は去る。
彼らはどこにゆくのだろう。
私は気になって、2つの箱を取り出し開けた。
そこには延々と描かれた迷路があった。
瞳は線と線の間を直角に滑る。どこまでも滑った先にはまた角があり、そこに出口はない。
それが2つ。恐らく、異なる2種の迷路があった。
堪らず箱を閉め、再び開けると、雪の降る我が故郷。
すらっと雪はなびいて白く家屋に触れ、落ちる。
今日限りのみである私は、背中にある箱を2.3持ち、帰路についた。