ハプニング
藤恋と次に向かった場所は、地下にあるクラブだった。
もう最悪だ。帰りたい。
ただそれだけが頭の中でぐるぐるしている。
「お兄ちゃん。アタック!」
「…やだ。」
「リハビリだよ。ここにいる人そんなに気使わなくていいから話やすいと思うよ?」
リハビリと言うけど…、
なんでこんな馬鹿騒ぎしてる人たちに自ら話しかけないといけないんだろう。
私はただの結婚相手を見つけるために外に出てきたのになぜそんなことをしないといけないんだ?
「お兄ちゃん。また人の悪口考えてるでしょ?そう言う所直さないと女の子寄ってこないよ?」
藤恋と話さなくても、藤恋は手に取るように考えがわかるようだった。
すると藤恋は近くにいた男性にナンパされる。
「出る。」
私は飲みかけのドリンクを置いて、颯爽と外に出ようと階段を登ろうとすると上から人が降りてきた。
酔っ払いの女性3人。
いつも来ているのか、今日はどんな人を捕まえようか話している。
私もそんな強い心が欲しかった。
どんな事があっても動じないような心。
でも私自身、その人の表情で心情を読み取る事ができるからすぐ嫌なことを考えられていることが分かってしまう。
人と話すのが苦手で、言葉がうまく出ない時は特に相手がすごく嫌な表情をする。
その表情をみるのが嫌で外の世界の人たちとは一線を置いていた。
ああやって、私も友達とゲラゲラ笑い合いたい人生だったけど、もう無理だ。
と一人考えていると、すれ違いざま一人の女性が私と目が合う。
その子は足を止めたが前にいた二人は気付かずに階段を降りていく。
「お兄さん。」
女の人が私に話しかけてくる。
なんだ?私の顔になにかついているのかじっと顔を見てくる。
すると女性が私に急接近して、壁に腕をつけて私の顔面目の前に、女性の顔が近づく。
何が何だか分からず体が固まる。
そして女性は自分の体をムニっと私につけ、さらに距離が近くなる。
この人は何をしたいんだ?
あの漫画にはこんな展開なかったぞ。
女性はそのまま私の脚の間に自分の脚を入れて、私を簡単には動けなくしキスをしてきた。
「!」
私はびっくりして、女性を反対側の壁に押し返す。
すると女性が私しか触ったことがない部分を触り始める。
「やめろ!」
私は初めて他人に怒った。
「なんで?そういうことしにきたんじゃないの?」
「ち、違う…。」
我に帰った私はまたどもってしまう。
「もっと正直に生きた方がラクよ。」
また女性がキスしてきそうになったので、私は階段を降りてまだナンパされている藤恋の腕を引き外に出た。