参考書
漫画だからなのか?
これが本当の男なのか?
自分がこんな風に出来るとは思えない。
体に寄り添って、足なんか触る余裕なんてあるやつなんているのか?
主人公は私と同じアラサーだけど、
人生を動かしていくキャラクターがとても多い。
けれど自分が主人公だとして、今のこの暮らしを見ると父と妹しかキャラクターはいない…。
友人も私が人見知りのせいでまともに出来ることはなかった。
「はぁ…」
なんだか八方塞がりでため息が出る。
[トントン]
「お兄ちゃーん。」
妹の藤恋が呼んでる。
「なんだ?」
「入っていい?」
「いいよ。」
ゆっくり扉が開くと、藤恋は大きい紙袋を3袋分手に持って部屋にやってきた。
「オススメの漫画持って来たよー。」
「ありがとう。」
「え!お兄ちゃんそれ買ったの!?私も読みたい!」
「いいよ今9巻まで読んだから。」
「早!漫画だとちゃんと読めるんだね。」
「読みたいが勝つか、眠たいが勝つか、どっちかだからな。」
「その調子で本も読めるようになったらいいねー。」
「ま、ベツモンだから微妙なところだけど読むよ。」
「頑張れー。」
と藤恋は適当に応援しながら、私のベットに寝っ転がって漫画を読み始めた。
「あったかーい。」
「おい、自分の部屋で読めよ。」
「おっもい漫画持って来たんだから、休憩させてよ。」
全く着の身着のままな性格で困るな。
よく男を手玉に取れるな。
「お兄ちゃんさ、もっとまともな格好してピシっとした格好すればいい遺伝子もらってるんだからある程度女の子寄ってくると思うよ?」
「寄って来ても話すことがないからな。」
「もー!そういうところずっと変わらないよね。だから友達出来ないんだよ!晩年万年童貞でいいの?」
グサっと刺さる言葉のナイフ。
「しょうがないだろ。好きな人が出来なくて何が悪い。やらなくて何が悪い。」
「そういうことじゃなくてー、話すことがない、好きな人が出来ないの次元の話を言いたいんじゃないの。出会った人を知りたいって気持ちがお兄ちゃんには足りないから今まで友達も恋人も出来ないんじゃないの?」
「だって、顔見たら相手の感情がわかるし。」
「でも、なんでその感情になったかはわからないんでしょ?そういうことを話さないと誰とも仲良くなれないよ。」
「…話しても答えてくれなかったし。」
「昔の話でしょ?みんなガキなんだから周りの意見に流されるの。
大人がたくさんいるところ今度私とデートしようよ。」
「デート?」
「デート=遊びね。とりあえずパーカーとジャージ以外の服きてね。」
「ああ、それだったら2、3日で通販で頼んだ服来るよ。」
「そうなの!?じゃあ土日はデート三昧だね!よーし、部屋に戻ってプラン考えとくね!バイバイ!」
がさっと私が読み終わった漫画を持っていて藤恋は部屋を出て行った。
また外に出ないといけないのか。
気分が重くなる。
多分人混みが多いところだろうなぁ。
「はぁ…」
またため息をつく。
もう結婚しなくてもいいかなと思ったが、
長男であるがゆえにそれもいかない。
全く昔の風習は厄介だ。