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オレらはオレンジ  作者: じぇい
第1章  "エロ"は男の真髄なり
3/5

03 『スウィートジェムはナイスガイ!!』

閲覧ありがとうございます!

誤字に見える部分はワザとです。

そのキャラクターはそういう喋り方なんです。イメージするなら青森訛りです。 

本当の誤字なら後日直ります。




「少しおちょくっただけでそうやって罵るのね」

「あい、その節は悪うございましたよ!頼むから仲良くしようぜ?」



 かなりムカついたにしろ、◯ッチ呼ばわりは良くなかった。と、思ってるよ少し。



「イヤ。アンタ謝ったあと「これでいいだろ」とか言うタイプじゃない。格好も汚いし、汗臭いし汚いし」



 傷つく言葉を二度までも。

 この女ムカつくから後々仕返しの一つでもしてくれようか?

 ともあれ、この女には物騒な超人手術の事は知らされているのだろうか?



「と、とにかく、君さ、俺達がこれから受ける超人手術の事は聞いてる?」

「うん、あの中年ウサギがご丁寧に教えてくれたわ。ここの組織と敵対してる奴らがいて、それと対峙するためには不可欠な物だって」



 敵対組織ってまさか戦わされたりするわけじゃないだろうな?

 くだらない(いさか)いの為、組織の為に戦ってこい!だなんてまっぴら御免だ。それは俺の求める人生像じゃない。

 にしてもこの子はなぜ超人手術と聞いてこんなにも落ち着いていられるのか。



「アンタは何でここに来たの?シェルターに居れば、少なくとも寿命で死ねたでしょうに」

「シェルターにあるのはそれだけだ。地上で自由に生きて、いつかその人生に飽きた頃にサッパリと死にたいんだよ」

「ふーん。その考え、嫌いじゃないわ」



「───まったくだ!ワみたいな人間はキミ達の様な人物を求めてだ!」

「「ワ?」」



 彼女と息ぴったりに後ろを振り向くと、白衣を纏い、黒く健康的な肌をした丸刈り頭の男が、パチパチと称賛の拍手をこちらへ送っていた。



「素晴らしい!ワは深く感動した!その人生観に感銘すた!歓迎するぞ、プロフェッサースウィートジェムのクルーへ!」



 なんだこの人物のおかしな言葉のアクセントは。「ワ」ってなんだ、一人称か?

 彫りが深く、濃い顔つきからして、日本人には見えない。

 しかし身長は割と控えめで、百七十センチ程か。



「どちら様で?」

「ウサギから聞いてなかったが?スウィートジェム、名前通りのナイスガイだろう?」



 出たかスウィートジェム。どんな人物かと思ったら、めっちゃハンサムな黒人男じゃないか。

 にしても綺麗な吹き出物一つない肌をしている。とにかくピチピチで肌年齢も恐らく二十代だろう。

 どうりでウサギさんがああ言うわけだ。そんな名前なのも頷ける。



「あ。あなたでしたか、よろしくお願いします」

「そんなにペコペコしなくてもいい。これから仲間なんだがらタメ口で結構結構」

「ちょっとアンタ!女の子をいきなり誘拐するなんてどういうつもり?優しくエスコートとか出来ないわけ?」



 彼女がスウィートジェムの顔を鋭く睨み、食ってかかった。

 彼は両手を上へ掲げて降参のポーズを取り、



「いやぁ、申す訳ないよ。何しろ人手が必要だったもんでね。プッチとペッチが何か失礼な事しちゃったかい?」

「そうよ!あのアホ二人、女性の扱いが荒いのよ、トラックの荷台で何回頭をぶつけたと」

「さぁ、居ても立ってもいられない!キミ達には超人手術を受けでもらう!」



 訴えを途中でシカトされた彼女が呆然と固まっているのを尻目に、スウィートジェムは続けた。



「その前に。キミ達はシャワーでも浴びてくるといい。特にヨシ、外は暑かったろう?灼熱の砂漠を何時間も歩いたんだ、清潔にすないとせっかくの色男が台無しだ」



 この人ひょっとしていい人?しかも俺を色男なんて、ほほっ。

 ん?なんで俺の名前知ってんの?



「あ、ありがとうござ...ありがとう!」



 シャワーなんて何日振りだ。

 シェルターでは水の節約のため、五日に一度の短い時間しか浴びれなかったのだ。遠慮せずに頂こう。



「キミもだ。スミレちゃん?それと水は貴重だから二人で入って」



「「───ッな!!」」



 なっ、なんだってぇぇ!!??サイコーじゃないか!!!!



「サイアク!!絶対イヤ!あの男の目を見てよ、何か(みだ)らな事を企んでるわ!」

「なんて失敬な!俺は人畜無害なヨシ君だぞ?さぁ、スミレちゃん、一緒にシャワーを浴びようか?」

「キモい!言動が超オッサン臭くて無理!汗臭いし無理!」



 コイツ...!ここまで可愛い見た目じゃなかったら、この女にスープレックスをかけていたかもしれない。



「スミレちゃん、頼むよ、シャワーが一ヶ月浴びれない。とかよりはマすぃだろ?隣のヨシは素朴だけどイケメン"め"じゃないか。共に入浴するに不足はない」



 今、なんだって?



「そもそもなんでアタシの名前知ってるのよ?!もう...わかったわよ。浴びれないよりはマシだわ」

「素晴らすぃい!じゃあ三十分後、またここに居るように。シャワールームは部屋の右奥だよ」

「な、なんてことだッ...」

「はぁ...帰りたくなってきたわ」



 なんてことだスウェートジェム!君はなんてナイスな男なんだ。

 俺は早くも君について行きたいと思ってしまっているよ。

 そこでこの部屋を出ようと出口に向かった彼が、振り向きざまに満面の笑みを俺に向け、渾身のグッジョブポーズをお披露目した。

 スウィートジェムぅぅ!!!



「ヨシ?だっけ、裸見たらアゴ砕くわよ」

「安心してくれ、俺は謙虚なんだ」



 そう言い、手術台よりも先、手術部屋の右奥にあるシャワールームへと、スミレの後ろをついて行く。

 信じられない。退屈なシェルターを抜け出して間もなく、自分の人生史上初めて、こんな可愛い子とのサイコーなイベントに巡り合えるなんて。

 緊張で挙動不審になりながら、彼女と一緒にシャワールームの脱衣所へ入った。



「ねぇ...ここの住人ってどんな趣味してんの?」



 シャワールームの脱衣所には、先程の手術部屋とは一線を画する、子供向け遊園地のメリーゴーランドのような、くまさん、ウサギさん、さらにはユニコーン等の、ピンクピンクしたファンシーで極めて幼稚なデザインの壁紙が四畳程の脱衣所全体に貼られていた。



「これってあのウサギさんだよな、外側だけならこんなにキュートなのに」

「そうね。見た目は可愛いのに中身は中年男のそれだもの、それにこの壁のウサギから下劣な視線を感じるわ」

「確かにキャラを知ってると格段に可愛くないな」



 その後しばらく沈黙し、二人の間に、これからどうすんの?と言わんばかりの空気が流れ始める。

 そのとんでもなく心地悪く重たい空気は、学校の席替えで、意識していた子と隣同士になってしまった時に似ている。

 


「ねぇ、ヨシ、だっけ?あっち向いてて」

「あ...あぁ、失敬失敬」

「マジで見ないでよ!?」

「わぁーってるって!」



 浴室前に立つ彼女とは逆側に向き、心臓をバクつかせながら、目の前の壁鏡に写る自分の顔面を覗き込んだ。

 あー、にしても汚いわ確かに。

 まぁ砂が舞ってる外を何時間も歩いたし、坂から転げ落ちたし、必然か。

 俯けば目元まで隠れてしまう程に伸びた黒髪は砂をかぶってパサついていて、唇は水分不足によって今にも裂けてしまいそうだ。

 綺麗な二重だねと褒められていた目の下には、浅黒くクマが張っている。

 俺こんなに(やつ)れてたっけ...?



 ───ハッ...。



 そこである物にガッツリ気を取られてしまった。

 鏡にデカデカと写る自身の顔面の横に、服を脱ぎ始めたスミレの姿が写っているのだ。

 

 

 


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