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翌日、雪美は職場で昨日の事を思い返してはため息をついた。


親友の結婚式に、自分たちが挙げるはずだった式を重ねた。

まぁ、親友の恋愛結婚と自分の政略結婚とでは全然違うのだろうけど。


それに、昨日久しぶりに見た彼の姿。

5年前より背が少し伸び、元からあった色気が更に増していて

高校生だった5年前とは違い、すっかり大人の男性になっていた。


「日向瀬さん!!ぼーっとしてないで!」

声をかけてきたのは先輩の塩谷川だ。

雪美が社長の娘という事を知らない塩谷川は事あるごとに強く当たり、雪美はこの先輩が苦手だ。


「大体、いつになったら仕事できるようになるのよ」

嫌味もいつもの事。


塩谷川がもう一言言おうとした時、甲高い声が聞こえてきた。


「ちょっと、あれ一条グループの御曹司じゃない?何でこんなとこにいるの?」


声がする方を向くと、こちらをじっと見つめる景人の姿がある。


なぜここに。父とも5年間交流がなかったはず。

世間に婚約も隠していたから、敵対していると噂されている企業に次期社長の景人がここにいるのが一条の会社や世間に知られたらまずいのでは。


色々な疑問が頭をよぎる中、景人は雪美の目の前まで颯爽と歩いてきた。

塩谷川に目を向けると、「日向瀬さんを借りてもいいでしょうか?上司には話をしてあります」と声をかけている。


気づいた時には会社の外、黒塗りの車に乗せられていた。


彼はこんなに強引な方だっただろうか。

そう考えていると、隣から「悪い」と聞こえてきた。

そちらを見ると 強く、でも優しい視線。


「…久しぶりだな、ゆき」

「お久しぶりです、けいさん」


5年ぶりの自分への言葉に胸を高まらせつつ、5年ぶりとは思えない程の安心感。


「あんな場面、連れ去りたくなる」

顔をしかめる景人に、先輩とのやりとりを見られていた事を悟る。

元婚約者とはいえ、配偶者になるはずだった人間が冷遇される姿は嫌だっただろうか。

責任感が強く、プライドも高い彼。


「情けない姿を見せてしまいましたね」

呆れられたと思いつつ、なるべく冷静を装って言う。


すると、彼は瞳をまっすぐ見て言った。


「お前は、誰ものにも蔑視されていい人間じゃない。お前自身にもな。」



強く、温かい、自分を心配する言葉。



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