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勇者の贈り物  作者: なお
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ギフトとカウンター

タイミング的には直撃だった。避けることはできなかった。

だから使わざるを得なかった。


足に意識を集中させるとギルの足が白く輝き始める。


黒雷か直撃する寸前、目にも止まらぬ速さでそれを避ける。


ギルはついでにといった感じでデルポポの襟をもって引きずり、一緒に助け出す。

少し雑な扱いだが命が助かるだけいいだろう。


黒雷が詰所に直撃し、凄まじい爆音と共に炎上した。


避けることはできたが、ギルはやってしまったと思った。


見られてるよな・・・。


チラリと覗いていみると勇騎士達はこちらの方を振り返り、驚きの表情をしていた。


完全にバレている。

あーあ。まずった。


厄介なことになりそうだとギルが考えていると、デルポポが尋ねてきた。


「やはり、ギフテッドだったのですね」


「やはりってことは気づいてたの?見られるようなへまはしてないつもりだったんだけど」


「見えてはいないですが・・。ただの勘です」


「そんなことよりいいのー?つ・み・に」


へっとマヌケ面をしたデルポポは積荷を下した場所を見る。

積荷は黒い雷の直撃こそは免れたものの、爆風で吹き飛び、いくつかは燃えていた。


「あああああああ!!」


とデルポポは叫び、積荷のほうへ走っていった。


ギルは終わってしまったことは仕方がないと割り切り、契約を果たそうと気持ちを切り替える。

嫌々だが。


砂埃はほとんど晴れて、黒いローブを来た男の姿が確認できるようになってきていた。


状況を確認しようとするギルを知らずしてか、黒衣の男目掛けて突っ込んでく人影があった。


ジークだった。


ギルは相棒の行動にほとほとあきれ返る。


あのバカ。

俺はカウンターでまだろくに動けないっていうのに。




———ギルの勇者の贈り物(ギフト)は『速度強化』だった。


意識を集中させた部位が輝き、その部位の速度が強化される。


また、勇者の贈り物(ギフト)を発動した際にはカウンターと呼ばれる現象が起こる。


カウンターとは勇者の贈り物(ギフト)を発動後、または発動中に起きる何らかの制約や反動のことだ。


勇者の贈り物(ギフト)は元々勇者の力であり、その強大すぎる力は人間にはタダでは使えないというこ

とらしい。


ギルのカウンターは反動型と呼ばれるもので、

『発動後に発動時間の十倍程度の時間だけ全身の動きが遅くなる』というものだった。


今回発動した時間は精々一秒といったところだが、その十倍。

十秒程の時間は戦闘においては致命的と言えるほどの長い長い時間だった。




ギルはゆっくりとした歩調で、援護するべく歩き始める。


黒衣の男がジークに向かって黒雷を放つ。


ジークはそれが放たれる寸前に横っ飛びに避け自分の射程距離に入り、それと同時に大剣を横に薙ぐ。


黒衣の男はそれを後方に飛び避け、再度手の平を向けるが、黒雷を放つより先にジークが更に踏み込み間合いを詰める。


踏み込んだ左足を前にし、下段に剣を構え、切っ先を地面スレスレに右から逆袈裟に斬り上げる。


その剣が当たる寸前、黒衣の男は剣の振られる方向に体ごと倒れこんだ。


避けようの無い間合いから放たれた逆袈裟斬りは、僅か頭上をすり抜けその勢いのまま後方まで振りぬかれた。


当たるはずだった一撃をかわされたジークは体勢を崩していたが、それでもギルはジークの勝ちを確信した。


黒衣の男は先の一撃を躱すために、体を倒しすぎて地面に倒れるほかない体勢だった。


そこらへんの傭兵相手なら体が倒れても追撃が来る前に距離をとることができるだろうが、ジークは別格だ。

起き上がるより先に追撃を見舞える。



今度こそ避けようがない。



しかし、黒衣の男は倒れながらも右腕だけを地面につけ、それを支えに体を捻りながら左足で蹴りを放った。


蹴りがジークの右脇腹にクリーンヒットする。


そして蹴りの反動と腕の力を使い距離をとるように転がり、その勢いのまま立ち上がる。


ジークは蹴りなどものともせず、間髪入れずに右足を大きく踏み込み、再び射程内に入り、剣を振り下ろす。


黒衣の男はいつの間にか両腕で握った長剣を頭上に構え、渾身の一撃を自身の右側にいなした。


その剣は狙いをそれて地面に叩きつけられ、それと同時に、再び黒衣の男の蹴りが右脇腹をとらえる。


先程の蹴りとは違い万全の体勢から放たれるその一撃は完全に体制を崩し、動きを止めるには十分な威力だった。


黒衣の男は大きく後方へ飛び、距離を十分にとると右の手の平をジークに向けた。



ジークは額に汗かきながらも楽しそうに笑っていた。

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