ギフト
ギルは逃げるために、この二人の勇者の贈り物についても考えることにする。
アストリアの勇者の贈り物は大体、想像がついた。
俺の短剣を弾いたのは間違いなく勇者の贈り物だ。
あの時ヤツは右の掌をかざしていた。
右手もしくは両方の掌から衝撃波か障壁のようなものを発生させる能力で間違いないだろう。
あとはカウンターさえわかれば。
勇者の贈り物を使った以上必ず何らかのカウンターがあるはずだが、使用後もなんの問題もなく動いていたように見えた。
使用後に反動が来るタイプではなく、使用中に何らかの制約があるタイプなのかもしれない。
また探りを入れてみるか?
いや、どんなに間違っても受け継ぐ者の最大の弱点であるカウンターを明かすことはないか。
アストリアについてはこんなものだろう。
男の騎士も勇騎士である以上、受け継ぐ者なのは間違いないだろう。
やつの勇者の贈り物は直接見てはいないが、ヒントはある。
まず、やつらの襲撃の速さだ。
あの縛られた状態から突き立てた剣まで移動して、縄を切ったにしては早すぎる。
なによりあの後、馬車に戻った際に落ちていたロープの位置だ。
ヤツらを縛った場所に落ちていた。
つまり、剣の場所まで移動していない。
それにロープの切り口がほつれていた。
あれは鋭利な刃物で切ったようなあとではなく、引きちぎったか切れ味の悪い刃物で少しずつ切断したかのように見えた。
解こうとする動きがないか注意していたが、バレずに隠し持っていた何かで徐々に削っていたのかもしれないな。
そうでなければ、無理やり引きちぎった?
身体能力向上系の勇者の贈り物の可能性があるな。
そんな風に考察していると「カージャスにつきましたよぉ」のんきなデルポポの声が聞こえる。
ギルはやはり逃げられそうにないかもと少し肩を落とした。