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33話 3人での共同作業

すっかり仲を深められたパーティーがいる一方、通報されかかる男が出るようなパーティーもいる。


夢野さんと宇佐さんが弁明してくれたから良かったものの、危うく教室内で覗き魔になるところであった。

それでもクリスティン先生にはきっちりと怒られた。


「クラス委員長がそんなことではいけませんよー」

俺を怒る時はいつもこの決まり文句である。

そろそろ本気でクラス委員長をやめようかと考え中だ。


昨日パーティーメンバーで軽くコミュニケーションをとり、本日から実戦形式の授業が本格的に始まった。

実戦形式の授業は、ダークと戦うのだが、ダークなんて早々ポンポンと出てくるようなものじゃない。


俺たち1組が集められたドーム型の施設には、そのダークを疑似的に再現できる最新のダーク幻影装置がある。

ダークに取りつかれた人間がリアルに現れるのだが、その姿は幻影であり、中身は人間型の機械である。

清掃ロボットたちの先輩方と違って、ここのは完全に戦闘に特化している。


魔力を練ることも、物理攻撃も可能。

学年の授業レベルによって強さの調整も可能という高性能である。

ちなみにこれも、水事家の経営する会社の商品だ。

国から受注されて開発したものなので、当然市販されていない。


もしも春鷹が訓練の鬼と化していたら、会社に出向いてこの訓練ロボットで独自に訓練もできていたのか。

とことん高性能な能力値と実家のお金パワーを活用できてない男である。


まあそういう俺も実家のお金をあまり活用出来てはいないけど。

バイトしてるくらいだしね。


「はーい、今日の授業はパーティーメンバーでダークロボを一台倒してもらうことですー。各パーティに一人は攻撃タイプの生徒がいるはずですので、パーティーでその人をサポートしながら戦いましょうー。ロボットの強度は最低レベルの1になってますー。倒した順に高ポイントをあげますのでがんばってねー」

クリスティン先生から本日の授業内容が告げられる。


実戦経験のない生徒からしたら、いきなりの本番で大変だろう。

その点、俺はダークと何度か戦っているのであまり緊張はしていない。


二人もサポートしてくれる人がいるとなると、なおのこと恐れることはない。


広いドーム内に、等間隔でパーティーごとに分かれていく。

目の前にそれぞれ一台のダークロボが配置され、起動させらた。


ダークロボの周りに映像が映し出される。

3,4秒もすれば映像が安定し、口や耳から黒い煙を漏らすダークが出来上がる。


街中で出会えば本物と勘違いしてしまうほどのクオリティである。

ダークに慣れていない生徒はその姿にぞっとしているようだった。


「今日は三人での共同作業が重要です。全員が魔法を行使して倒してくださいねー。一番先に倒したパーティーが最高点になりますけど、バランス良く魔法を組み合わせたパーティーにもいい採点をしますから覚えておいてねー」


目の前のダークロボットをいち早く制圧することが重要ではあるが、力を合わせて倒すことも大事という訳か。

一人でこのダークロボットに勝てたとても、それはあまり実戦向きではない。

実際のダークとの戦闘においてはパーティーで短所を補いながら戦うのことで、最大の力を発揮できるからである。


物理面がカスなのに一人で主人公パーティーに挑んだ春鷹は、授業で一体何を聞いていたのだろうか……。


この授業では、パーティーメンバー内のステータスを把握しておくことは非常に重要であるのだが、覗き犯になりかけた俺は二人のステータスを見られていない。

けれど俺のスタータスは二人に知られているはずだ。


物理面がカス。

攻撃魔法値がとても高い。

妨害魔法も高い。

素早さも高い。


以上、俺を表わすとこうなるわけだ。

二人はきちんと知ってくれているはず。


「じゃあ行きますよー。スタートですー」

クリスティン先生の声に合わせてダークロボが動き出した。


俺たちにあてがわれたのは、攻撃魔法タイプのダークロボであった。

流石に物理強化タイプがいないパーティーメンバーに、初回で物理型ダークロボを当ててくるような意地悪はしてこないらしい。


この場でダークフレイムを放てば、そこで試合終了、最高得点を貰えるわけだが当然そんなことはしない。

長い目で見れば、それはパーティー強化への損失である。


「宇佐ミミさん、相手の攻撃に合わせて防御魔法をお願い」

「う、うん! 」

やはり戦い慣れてはいない宇佐ミミさんに指示を出した。


ダークロボが動き出したというのに、宇佐ミミさんも夢野さんもその場で二の足を踏んでいたから、実戦経験がないのはすぐに分かった。

ここでは俺が指揮をとるべきだろう。

体を動かしながらだと、少しだけ話やすい。


「夢野さんは支援魔法をお願い。ただし、相手の攻撃を宇佐ミミさんが防いでからでいい。レベルが低く設定されているから、攻撃には長い間隔が開くはずだ。その間にじっくりやればいい」

「はい……! 」


ダークロボはやはり訓練用に作られたものであるので、いちいち動きがわざとらしい。

低レベル設定なので、相手に何をするのか分かりやすく判断させたいのだろう。

相手をしっかり見るのも戦闘の重要ポイントだと教えてくれているかのようだった。


ダークが大きく口を開けて、その口元に黒い球がうみだされた。

始めは小さく、少しずつ大きくなっていく。


ダークはこれほどゆっくりダークボールを打ってはくれないが、まあ練習である。

宇佐ミミさんが防御魔法を張っていく。

「麗しの壁よ、我らを守り給え」

俺たち3人の前に薄いベールが出来上がる。

【水使い】の初期魔法、ウォーターベールである。消費MP30で、あらゆる魔法攻撃を防ぐ壁を生み出す魔法である。壁の強さは、本人の魔法耐久値に依存する。

宇佐ミミさんのステータスを見られていないが、初級の訓練ダークロボの攻撃くらいなら楽勝だろう。


俺が呪文を唱えるとすごく痛いやつになるのに、宇佐ミミさんが唱えるとなんだか神聖なのはどうしてだろう? という疑問が湧いた。なんか不公平だ。


その後に放たれたダークボールがベールとぶつかり合い、無事ウォーターベールは俺たち3人を守ってくれた。

「よし、宇佐ミミさんナイス防御」

「ふぅ。うまくいってよかったぁ」

「じゃあ次は夢野さんお願い。攻撃魔法値を伸ばすような支援魔法は持っている? 」

「はい、持っています」


ゆっくりでいいと伝えているので、夢野さんはその通り丁寧に詠唱をしていく。

「神秘の声をお届けください」

3人の頭上に白い光が舞い降りる。

またまた不思議。彼女の呪文もまったく気にならない。

むしろいい!

【回復使い】の初期魔法、エールである。消費MP30で、3分間味方の攻撃魔法値を1,1倍にする魔法。

実戦で能力が次々判明していくこの悲しさである。

コミュニケーション能力の大切さを改めて思い知るばかりだ。


ダークロボが次の行動をとるまでにはまだ時間がある。

辺りを見ると、上手くやったパーティーが既にダークロボを倒しているところもあった。


俺たちもパーティーメンバーがそれぞれに力を発揮させられたので、ここらで終わりとしよう。

残念ながら、俺が呪文を唱えると痛い感じになるので、いつもの通り静かに魔法を行使しよう。


右手の痣に触れながら魔力を高める。

くらえ、ダークフレイム!


俺の両手から発射される黒い炎。

本気を出した時は狼が2頭見えるそれは、エールを受けて更に調子が良かったのか、黒い狼の毛並みまで綺麗に再現されてダークロボに嚙みついた。


両肩からそれぞれ嚙みつき、黒い炎で焼いていく。

ダークロボは想定外の火力だったのか、魔法を受けて後ろ向きに激しく転倒した。


それでも炎は消えない。


じりじりと焼いていく中で、だんだんと焦げ臭い匂いが辺りに広がった。

ビビビ、ガコン! と謎の破損音をあげて、ロボの胴体部分が爆発した。

「え? 」


そして、直後の機能停止。

幻影も映し出さなくなったし、ロボも完全に動かない。


見守っていた数名の教師が急いで駆け寄り、ロボの故障を確認していく。

俺の後ろになにやら人がいる気がして、振り向くと顔に怒りマークを付けたクリスティン先生がいた。

「また水琴君ですかー? 」

またって何!?

なんか問題児扱いされているんだけど!?


こうして初の実戦授業は、俺のダークフレイムがロボを焼いてしまい、結構な大事となって幕を閉じた。

各パーティーの配点は、物理攻撃タイプ要する王さん率いるパーティーが最初の討伐で最高得点。

次点で、バランスよく二番目に討伐した俺たちも優秀な点数を貰えた。


けれど、クリスティン先生に呼び出された俺はなぜか説教を食らい、反省文を書かされる羽目に。

「もうー。調査結果が出ましたよー。魔法の威力が強すぎるんですー。反省してくださいー」

そんな理不尽な!?

褒められるところじゃないのか?

水琴春鷹は褒められて伸びる子です!


「次は先生がダークロボに強化魔法を付与しますからねー。覚悟しておいてくださいー」

「でもそれじゃあ不公平ですよ」

宇佐ミミさんと夢野さんだって納得しないはずだ。

「不公平はあなたの攻撃魔法値ですー。絶対に強化しますからねー。ぜーったいーぜったいー」

なんか駄々をこねる少女のように見えてきた。

反省文の件もごねてみると、クリスティン先生はじゃあ一緒に書いてあげると付き添ってくれた。


「ここー、もっと気持ちを込めて書いて下さいー」

ゲーム内で主人公たちがクリスティン先生を褒めるシーンが何度かあるのだが、うん、なんか分かって来たかも。

結構理不尽な先生だが、面倒見は悪くないらしい。







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