32話 パーティー構成
魔法理論をある程度叩き込まれた一年生たちには、そろそろ実戦訓練が開始されようとしていた。
俺たち1組にも事前通知はあり、実際にくるその日を待っていたわけだ。
裏でひっそりと特訓していた者。
俺の様にダークと戦っていた者。
俺の様にクラブ活動をしていた者
俺の様にバイトをしていた者。
俺の様に清掃したいた者。
何個やってんだ俺。
もしくは何もせずただ学園生活を満喫していた者。
過ごし方は皆の自由であるが、トーワ魔法学園の魔法実戦に対する成績配分の比重は非常に大きい。
いい成績を残しておきたい生徒にとっては、実戦形式の授業で躓くことは許されない。
生徒の目の色が違うのは、そういう意気込みの差である。
俺は真面目に過ごすと決めているので、当然実戦授業超本気組である。
今日から始まるという噂を聞きつけていたので、一番に登校して教室の清掃を行っておいた。
皆のやる気につながればいいと思ってのことだ。
そして今日、とうとう実践訓練の通達があった。
いつものクリスティン先生の緩いテンションで発表されたものだから、実践訓練の話をされているのだと気が付くのに数秒遅れてしまった。
「はーい、みんな大好き実戦授業ですよー」
俺と同じように数秒遅れて教室にざわめきが起こる。
先生のこのブレない性格には逞しさも感じるが、今日くらいは声を張り上げて言って欲しかった。
それくらい好成績を取りたい生徒にとっては大事な実戦授業なのだ。
「では、1組30人のパーティー分けをしていきますねー。パーティーは3人一組ですー」
そうだった。
実践授業は基本パーティーを組んで行う。
支援魔法や魔法耐久タイプは自分一人で戦闘を行えないような人も多いからだ。
ガッツリ魔法耐久タイプでありながら、一人で主人公たちに戦いを挑んだ春鷹の話はもう必要ないだろう。
どこまでも残念な男である。
パーティーか。
できれば知り合いと組みたいものだ。
知り合いといえば宇佐ミミさんくらいしかこのクラスにはいない。
もう一人は知らない人が必然!
しかも宇佐ミミさんと一緒になれる保証もない。
辛い結果になること必須だな。
それはそうと、もしかしてパーティーは自主的に組むのだろうか?
はーい、好きな人と組んで下さい。とか言われちゃうの?
それだけはやめて欲しい。
余りものになる自信がかなりあります。
「ではパーティーメンバーですけどー」
お願いします。お願いします。お願いしまう。あ、噛んだ。
「パーティーはこちらで決めておきましたー」
あ、天使がいた!
クリスティン先生という名の天使が!
無事一つ目の関門をクリアである。
「では発表していきますねー」
順順に名前が呼ばれていく。
友達同士でパーティーを組めた人たちは嬉しそうだ。
「では次のパーティーは、水琴君、宇佐さん、夢野さん。仲良くうちとけてねー」
天使再び!
唯一の友達である宇佐ミミさんと一緒になれたことにこころから感謝である。
もう一人の女性は誰だろう。
仲良くできたらいいけど。
パーティーメンバーが発表された後、いきなり実戦という訳にもいかにので、それぞれのパーティーごとに集まって話し合いが行われた。
お互いのことをもっと知って、仲を深めると同時に、実戦での連携を図る目的である。
集まった俺と、宇佐ミミさん、それに夢野さん。
宇佐ミミさんと目があうと、お互いにホッとしたように少し笑った。
もう一人の夢野さんは、メガネをかけた如何にも内気そうな女の子である。
他のパーティーたちがどんどん話を進めていく中、俺たちのパーティーはまだしばらく打ち解けるのに時間が必要そうだった。
一人全く違うヒャッハーな人種がいると、それはそれで困るのだが、こうも似たり寄ったりの3人が集まるとそれはそれで困る。
誰となく話始めようといないからだ。
顔をあげて視線があって、またどうしようかと視線を伏せる繰り返しだ。
ここは男である俺がなんとか頑張らねば!
「今一度自己紹介しませんか? 自分の魔法クラスとか含めて」
「いいですね! 」
宇佐ミミさんが同意してくれて、夢野さんも頷いてくれた。
「俺の名前は、水琴春鷹っていいます。攻撃魔法タイプで、魔法クラスは【炎使い】になります」
正しくは【黒炎使い】なのだが、あれからマーク達にステータス画面を見せても【炎使い】だと認識された。
以前レベル3のダークを倒した時、生徒会長にステータス画面を見せたときもそうだった。
ダーク関連の魔法クラスなので、下手に真実を知られるよりかはいいと思い、こうして名乗る時は【炎使い】を自称している。
「よろしくー」
宇佐ミミさんが優しい笑顔で答えてくれる。
彼女は彫刻の神が下りてきていない間は本当にウサギのように可愛らしい。神が下りてきたときは……。思い出すのはよそう。
「……よろしくお願いします。水琴君は有名ですから、知っています」
小声で夢野さんも答えてくれた。
有名というのあれか、悪いエピソード関連で知っているのか。
春鷹の業は深いなー。
「そうそう、水琴君って有名だよね」
宇佐ミミさんまで!?
二人はなんかなぞのシンパシーを感じて少し距離を縮めているし!
「……一緒の、パーティーになれて良かったです」
「うん、そうだよねー」
あれ? それは本心ですか?
俺は驚きに満ちた喜びに浸った。
「じゃあ、次は私がいきます。宇佐ミミといいます。魔法耐久タイプで魔法クラスは【水使い】やってます」
「よろしく、宇佐ミミさん」
「……よろしくね」
夢野さんは相変わらず小声だが、頑張って打ち解けようという意気込みが感じられる。
やはり彼女も俺たち同様人見知りなだけで、根は凄く優しい人のようだ。
「……最後になりましたけど、夢野くるみと言います。支援魔法タイプで魔法クラスは【回復使い】になります」
俯きながら必死に言い切ったその姿に、気が付けば俺と宇佐ミミさんは拍手をもって迎え入れていた。
なんだか自己紹介だけで、俺たちの距離は凄く埋まった気がする。
コミュ障が3人も集まれば、これだけの会話でお腹が一杯である。
このパーティーには物理型がなしか……。
攻撃タイプは俺一人。
二人はサポートタイプになるな。
俺の低すぎる物理面を補ってくれる物理耐久が欲しかったところではあるが、まあそれほどバランスの悪いパーティーでもない。
お互いをもっと知るために、ステータス画面も共有して見てみることに。
やはりだが、二人には俺が【炎使い】に見えているらしい。
そして、なにやら二人そろって俺のステータスばかりを見ていた。
「水琴君って一人でダークを倒せるっていう話だったけど、やっぱりすごいステータスしてるね」
「うんうん。レベル3のダークを倒したっていう噂も本当っぽいかもです……」
「攻撃魔法値が1187だって。うわー、こんなの初めて見ちゃったね」
「うんうん。4桁なんて初めてです……」
なんだか二人だけ打ち解け初めてないですか!?
置いていかないで!
レベル3のダークを倒したのは本当のことだけど、噂になっていたのか。
生徒会長は情報を漏らすようなタイプに見えなかったけど、やはりどこに人の目があるかわかったもんじゃないな。
「二人とも、もういいんじゃないか? ダークを一人で倒せる人なら他にもいるだろう。ほら、3組の早瀬あやとか」
実際魔法が使える前に、既にあや一人で魔力を込めたキックでほとんどダークを倒していた。
「早瀬あや!? 」
過敏反応を示す宇佐ミミさんは放っておいた。
夢野さんに視線を向けると、うつむきながらではあるが答えてくれた。
「だってあの人も特別ですよ? ダークをソロ討伐できるのなんて、中等部1年では水琴君と早瀬さんくらいしかいないです」
え? そうなのか?
いや、そうか。
早瀬は主人公パーティーの一人である。
主人公文月大夜のパーティーになる人だ。能力値が一般より高くて当たり前。
あそこを基準に考えてはいけなかった。
「あの……、動画の戦うコックさんってやっぱり水琴君なんですか? ステータスが凄いし、実力的にもできそうなのが水琴君だけです」
コックの話か。
バイトをしているのがバレたくないので、心苦しい気持ちはあるが、顔を横にぶるぶると振った。
嘘は言っていない。痙攣しているだけである!
「うーん、水琴君なら良かったのに……」
なぜそこで残念がる、夢野さん!
よくわからない。
そして宇佐ミミさんはいい加減早瀬あやからの呪縛に解放されろ!
このままだと彫刻を掘り出しかねないテンションだ。
「俺のことは一先ず置いておこう。二人のステータスも見てみたい」
「1187を見せられた後じゃ、なんだか恥ずかしいよ」
「……私もです」
急に恥じらいだした二人である。
可愛らしい女性が恥じらって隠すと、男としてはこじ開けてでも見たくなってしまう。
狩猟本能がそうさせてしまうのか!?
「見せて! 」
「やめて! 」
「見ないで! 」
二人の拒絶する声が教室に響き渡り、生徒たちから白い目を向けられた。
クリスティン先生からは怒りの視線が。
視線が、あとで来いと言っている。
ステータス画面を見たかっただけなんです!
それだけなんです!




