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24話 守くんとプレイヤー能力

守くんという男は、それはそれはスカイフットボーラーたらしな男である。


ゴールキーパーのポジションは、能力値が一番はっきりしないポジションとしてファンキャンでは知られている。

一度スカウトして試合に出してみて初めてその能力がわかるのだ。

いろいろ試した挙句、圧倒的なゴールキーパー能力値を有する男だと判明するのが守くんだ。


追々情報を集めてみると、実は親がプロのゴールキーパーであり、その血を引き継いでいることがわかる。

そんな守くんがファンキャンで有名になったのには、その圧倒的なゴールキーパー能力値だけではない。


この男はそんな生易しい男じゃない。

はっきり言って、ゲーム内じゃ憎たらしいことこの上ない。戦闘キャラじゃないので倒せないのが悔しいほどだ。

実際春鷹の次くらいに嫌われている気がする。


ファンキャンでスカイフットボールのメンバーを集める際、多くの生徒は無条件に参加してくれる。

他のチームに所属していた場合、何か条件をつけられて、それをクリアすると自チームに引き入れられたりする。


守くんはその点、初めはフリー、つまりどのチームにも所属はしていない。

だからそのまま無条件でチームメイトになってくれるのかと思いきや、そうではない。


憎たらしいことに契約金を要求してくるのだ。

学生の分際で。

それも初期らへんでは到底支払えないような金額を……。


その場はあきらめて、金額をためて交渉しに行く頃には他のチームにスカウトされてしまっている。

そこから自分のチームに引き入れようと試みると、更なる大幅値上げの契約金を言い渡される。


普通はここらへんであきらめる。

しかし、あきらめの悪いプレイヤーはさらにお金を貯めて要求金額を準備するのだが、払えたら払えたで、なぜか守くんは土壇場で嫌がり、契約金を釣りあげてくる。


もう、腹が立つ!

相当ストレス耐性のあるプレイヤーでも大体ここらへんで彼のことはあきらめる。

このころには、初期からメンバーとなっているゴールキーパーに愛着も湧いてくるから、そっちを育てていこうとなる人も多いだろう。


しかし、スカイフットボールが大好きな俺や一部のプレイヤーたちは更にこつこつとお金を貯めるのだ。

やはり試合の度に、守くんのいるチームが毎度立ちはだかってくる。

完璧な攻撃から完璧なシュートを打っても、壁として立ちはだかる守くん。


一種の憎たらしさと、やはりあの感動すら覚えるセーブ能力。

一度惹き込まれたが最後、後は彼にお金を吸い取られ続ける未来が待つ。


そうして何度も交渉した挙句、ようやく守くんは自分のチームに入ってくれるのだが、その時に今度は戦闘イベントが始まる。

守くんをめぐってのリアル戦闘だ。


しかも守くんを狙っていたチームは大量にあり、強制10連戦をするは目になる。

それをすべて倒し切り、ボロボロになり、財布を空にし、とうとう守くんは仲間となる。

非常に長い道のりだ。


ゴールキーパーに彼をおいたとき、セーブ能力値の高さを見てプレイヤーたちは感慨深い気持ちになるのだ。

ああ、今までの苦労が報われたと。


しかし、守くんはやはりそんな生易しい男ではない。

敵の時は鉄壁として立ちはだかった男が、自分のチームに入った途端大事なポイントでエラーを繰り返す。

とことんミスをして、チームを敗北に導く。


ゲームあるある、強かった敵キャラが仲間になると途端に弱くなるやつ。

そう、守くんは仲間になったとしてもまだプレイヤー泣かせな行動を取りまくる。

練習もさぼるし、メンバーの秘密を告げ口してきたりする。

結構クズな奴だ。

しかし、苦労して得てしまったプレイヤーたちは彼を使うほかに選択はないのだった……。


バッドエンド!!


これが守くんにまつわるエピソードである。

それを知りながらも、彼の姿を見かけてすぐさま駆け寄っている俺。

それほどまでに、この男はスカイフットボーラーたらしなのである。


欲しい、その高いゴールキーパーの能力が!


「守くん! 」

彼の側まで駆けより、名前を読んだ。

「誰? 」

「同学年の1組、水琴春鷹っていいます。守くんがスカイフットボールのゴールキーパーをしているってきいたから、良かったらうちのチームにどうかなって」

「ああ、やっているよ。けどね、他のチームからも声がかかってんだ。僕が欲しいなら契約金が必要になるけど、いいかな? 」

こいつ、リアルでもこうなのか。


水琴家の力を使えば金なんて幾らでも準備できるが、そもそも学生同士がお金のやり取りをしてもいいものなのか?

普通に考えればダメだろう。

「金は払えない」

「なら話はお終いだ」

「……いいものならあるよ」

立ち去ろうとした守くんにささやいた。


「キンドレッド社が操業100周年を記念して作った、10足限定のスカイフットボールシューズ。欲しくない? 」

ニヤリと笑う守くん。


俺たちはがしりと握手をかわした。

毒には毒を!

クズにはクズ行動で得たものを!


守くんの性格に少しばかりの難は感じるが、それでもやはり欲しいその圧倒的な能力。

こうして俺と守くんは少し遅れて、チームカフェルオンの練習に合流した。


スカイフットボールは基本的にサッカーと同じように、丸い球を相手のゴールに叩き込めば1点が加算される。試合終了時点で得点の多いほうが勝ちとなる。


ただし、サッカーと違って足だけでなく、手の使用も可能だし、相手にタックルをかますのも、体を掴むのもOKだ。


そして、もっとも違うのは、特殊な魔石をはめ込んだフィール上で、魔力を消費しながら空を飛んで競技を行う点にある。


飛べるならどこまで高く飛んでもいい。

しかし、高く飛べば飛ぶほどMPの消費は激しくなる。


魔力の高いものは空高く飛んで、邪魔されない位置からシュートを打ったりする。

フィジカルの強いものは、魔力消費の少ない地面すれすれから競り合いながらシュートしたりする。

それぞれの強みを活かして戦うのがスカイフットボールの面白さだ。


チームキャプテンであるあやの指示に従って、俺たちはフィールで空を飛ぶところから感覚になれていく。

皆で一緒に空を飛んで体を温め、いい感じになってきた頃にボールを取り出してパスを回していく。


パス能力は、ステータスの支援魔法値依存となる。

この時のステータスは、各魔法クラスの能力反映率を受ける前の素のステータス値を読み取る。


能力反映率で尖がった能力値になった人も、スカイフットボールにおいては元のバランスの取れた能力値でプレイすることが可能だ。


支援魔法値の低い俺にとっては、パスはあまり得意な分野ではない。

見てみると、センターを務めるマークと、5回に一回しかパスが行かない影薄君のパスが良く飛ぶし、正確である。

彼らは支援魔法値が高いと見ていいだろう。


次いで、シュート練習に入る。

ここで違いを見せたのが、あやと俺だった。


シュート能力は、攻撃魔法値依存となる。

あやは持ち前の体さばきと、そこそこ高い攻撃魔法値を活かして、鋭いシュートを放つ。

守くんがなんとかはじくが、普通のゴールキーパーなら入っていただろう。


次いで、俺のシュートが炸裂する。

圧倒的な攻撃魔法値を持つ俺だ、シュート能力は本当にぶっ壊れていた。


あの守くんが反応できない威力でゴールに叩き込む。

「すごいっ! 」

「「「「WOW! 」」」

チームから賞賛の声が上がった。


春鷹は攻撃魔法値が作中最高、つまりシュート能力も最高となる。

静かにシュートできる位置で打てば決まりまくるシュート能力を持ちながら、この男はゲーム内で選手に囲まれながら無理やりシュートしていた。

フィジカルがカスなのに、センターで揉まれながらまともなシュートが打てるはずもない。

守備もろくにタックルができない。


役立たずもいいところである。

それがポジション一つ変われば、凄まじい活躍ができるのだ。

春鷹はやればできる子なんです!


その後も練習は続いていく。

フィジカル能力は、物理攻撃、物理耐久依存となる。

当然このジャンルで俺がマーティンたちに勝てるはずもない。

あやと三人の外国人プレイヤーの独壇場だ。


俺と同じサイドプレイヤーの影薄君も苦労していた。

ひょろい俺たちはとりあえず、練習後に牛乳でもチャージしようか……。

でも牛乳飲めないんだよなー。


次いで、パスカット練習。

これは魔力を使った高速パスや高速シュートを、魔力を纏ってブロックする練習だ。

この時の、高速で飛ぶボールの威力を殺すブロック能力値は、魔法耐久値依存となる。


影薄君は支援能力の他にこの能力も優れていた。

他にはマーチス辺りが良かったかな。


最後に、妨害魔法の影響である。

これは、相手選手が側にいると、相手のMPを早く削る効果がある。


MP=空を飛んでいられる時間だ。

俺のような妨害魔法値の高い人間の側にい続ければ、気が付いたときにはMPがなくなって試合から除外されてしまうだろう。

センターポジションならあまり近づかずに、ボールを持った時にだけタックルすればいいので、あまり強みが発揮されない。

そもそもパス能力が低い時点でセンターはないのだ。


つまり、俺のプレースタイルは、サイドで高い素早さで逃げ回りながら、ボールが来たらドリブルか、シュートかの選択となる。近くに仲間がいればパスも選択としてはあり。

相手がタックルできないように、距離を開きながら、絶妙な位置関係で妨害魔法値でMPを削る。


こうすれば、水琴春鷹は圧倒的なシュート能力を発揮し、父冬之介同様、スタープレイヤーにのし上がれることだろう。

練習に少しばかり、先ほどより気合が入った。




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