20話 高すぎる攻撃魔法値
攻撃魔法値がレベル1で1000オーバー。レベル3で1100オーバーがどれほどのものかを説明しよと思う。
その前に、少しばかり文月大夜のお話を。
主人公文月大夜は中学1年時は魔力無しのただの中学生である。
今頃は姉の香の病気を知って無力な自分に嫌気がさしているころだろう。
少し未来は変わってしまったが、ゲーム内で香が不治の病だと判明するとき、大夜は自分に魔力をくれと天に叫ぶ。しかし、突然空から光明がさして魔力を与えるようなことはなく、無力なまま姉香の死を見届けることになるのだ。
何度も語っているように、香が何の処置もされずに死んだのは、俺がエクスヒールを乱用したため医者が何も手を尽くせなかったことに原因がある。
他の病院に行けばよかったのでは? という疑問は野暮である。
エクスヒール自体高額な治療となる。
貧しい家柄の文月家にはどっちみちそんな治療費を払うことは不可能なのだ。
最愛の姉香を失ったことにより、大夜は荒れに荒れる。
毎日繁華街に出向いては喧嘩の日々を過ごすのだ。
そんなある日、大夜は自分の中にある魔力に気が付く。
それ以来喧嘩は負け知らずで、中学生にしながら繁華街の裏ボスとまで上り詰めてしまう。
結構恐ろしいやつだ。
とはいっても、裏ボスとして不良たちをまとめ上げて、本当の悪と戦っている実はいいやつら的なポジションをしている。
見た目は不良、中身は温かい系。その名は文月大夜!
そこに目をつけたのが、トーワ魔法学園の理事長である、灯和秀則。
魔力持ちは大抵が生まれながらにして魔力を得る。
しかし、大夜はある日突然魔力の目覚めに気が付いた。
灯和秀則はその魔力タイプを魔力覚醒型と名付けた。
大夜の様子をしばしば見に行っていた理事長は、大夜の能力の成長率のすさまじさに驚く。
そして大夜を学園にスカウトするのだ。
スカウトされたのは大夜一人なので、仲間思いの彼は当然その申し出を断る。
しかし、理事長はトーワ魔法学園を卒業した後の輝かしい未来をちらつかせて誘惑する。
どうせここにいても未来は開けない。
大夜もそのことは理解していた。
結局仲間の推しもあり、将来皆を再びまとめ上げるためにも、大夜はトーワ魔法学園に通ってこの世界でのし上がることに決めるのだ。
無力に姉を失ってしまったこと、繁華街の路地裏にしか居場所のない仲間たち、繰り返さない。
力を手にして、今度こそ守りたいものを守る!
大夜は強い決心と共にトーワ魔法学園に通うことになるのだ。
こんな感じで、ファンキャンは実は結構重めのスタートとなる。
その割に、大夜は学園でスカイフットボールをやったり、サイドイベントを消化したり、ヒロインたちの裸を見たり、楽しそうなことを一通りやっている。
おい、それどうなんだよ。
自由度の高さがファンキャンのよさなので、やはり俺は深くは突っ込まないでおく。
ゲームスタートと同時に、プレイヤーは自分の好みの大夜をある程度エディットしていくとができる。
身長を高くしたり、筋肉質にしたり、髪の色を変えたりも可能。
ただし、身長をあまりにも高くしてしまうと、大夜が初めて春鷹を見た時に、「あいつ身長たっけーな! 」
と驚く固定セリフがあるのだが、自分の方が実は高いという不自然さが生まれてしまう。
注意して頂きたい。
容姿面でエディットを終えると、次は大夜の能力面のエディットである。
どの魔法タイプを選ぶか、まずはそこからだ。
物理強化タイプ。
攻撃魔法タイプ。
支援魔法タイプ。
魔法耐性タイプ。
妨害魔法タイプ。
それらをいろいろなヒントから、自分の好みに合わせて選んでいく。
何度かやっている人は、パーティーメンバーの構成も考えながらタイプを決める必要がある。
早瀬あやが大好きで絶対にパーティーに入れたいなら、物理強化タイプは避けるべきだろう。役割がかぶってしまうとパーティーは大抵大きく弱くなるからだ。
そこで、攻撃魔法タイプを選んだ場合、文月大夜の初期攻撃魔法値が一番高いステータスでゲームを開始する。
魔法クラスを炎使いにして、ステータスを見れば、その時の大夜の攻撃魔法値がおおよそ120である。
この数値を言いたいために随分と時間がかかってしまったが、1000オーバーの異常がこれでわかるだろう。
同じレベル1で、同じ攻撃魔法タイプにも関わらず10倍近い能力差が出てしまっている。
しかも文月大夜は学園理事長が自らスカウトした天才だ。
天才に大差で勝ってしまう、春鷹の恐ろしさや。
能力値は多少プレイヤーの好みによって調整できる。それでも魔法攻撃値をとがらせたところで180がいいところだ。
文月大夜は水琴春鷹とは立場が違う。
主人公のステータスに大きな穴があってはならないのだ。
どのタイプを選択したところで、春鷹の物理面みたいなカス能力値が生まれることはない。
攻撃魔法タイプを選び、能力をとがらせても物理面は80そこらはしっかりある。
まあ繁華街で日夜殴り合っていた男だからね。
主人公パーティーで攻撃魔法値が一番伸びるヒロインでさえ、初期攻撃魔法値は250だ。
ふん、相手にならんな。
今現在の俺のステータスを見るがよい。
水琴春鷹 12歳 男
身長164cm 体重49kg
【黒炎使い】Lv3
使用可能魔法
ダークフレイム
HP 0455(0350) ■■■
MP 2234(1117) ■■■■■■■■■■■■
物理攻撃 031(021) ■
物理耐久 005(017) ■
攻撃魔法値 1134(0378) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
支援魔法値 002(013) ■
魔法耐久値 011(111) ■
妨害魔法値 369(231) ■■■■■■■■
素早さ 259 ■■■■■■■■■■■■■
器用さ 318 ■■■■■■■■■■■■■■■■
ラック 045 ■■■
見よ、この圧倒的な攻撃魔法値を!!
高い素早さから高威力魔法で相手を殲滅する姿が目に見えてくる。
そして見てみよ、同時に存在する物理面の弱さ。
物理攻撃値は、【黒炎使い】の能力反映率150%を受けながら31という弱さ!
物理耐久に至ってはもう、0にしてくれたらどうなんだというレベル!
小学生のパンチで沈んでしまう可能性が非常に高い。
主人公もといヒロインども!
確かにお前たちのステータスはバランスがいい。
俺のようなカスみたいな物理面は持ち合わせていない。
しかし、俺の攻撃魔法値は実に1000オーバー。
全ての負を覆いつくすことのできる圧倒的なの能力値。
もはや王道路線を歩み出した俺に敵はない!
と言いたいところだが、実は生活面で少しばかり困っている。
やはり物理能力値が低すぎるのは、体が弱いからなのか、俺の体は脂っこい物やしげきぶつをてんで受け付けない。
春鷹はやたらとチーズバーガーを食べてたいのだが、無理無理無理。
あれ食べたら凄く胃がもたれる。
やっぱり和食オンリーだ。この体は。
そんなハンデはおってしまっているが、まあ高すぎる攻撃魔法値の前にはそれほどの悩みでもない。
■は
HP,MPが一つ200です。
魔法攻撃から妨害魔法は一つ50です。
素早さからラックが一つ20となっています。




